女子2人で鉄道旅をしています

湯郷五月

文字の大きさ
118 / 184
第19章 150年目の鉄道の日 at 鉄道博物館

150年目の鉄道の日⑥

しおりを挟む
 南館を後にした私たちは、館内を北上して車両ステーションへと戻った。2階で鉄道開業150周年の記念展示を行っていたので、それを見学。そして、満を持して本日最後のポイントへとやってきた。

「ちょうど予約の時間だな」

 そう呟いたさくらが先頭に立つ。スマホの画面を係員さんに見せて入り口を通過。そこから階段を上ると、眼下には小さな線路とホームが見えた。

 ここはミニ運転列車の乗車口。E5系新幹線の運転シミュレーターの予約は取れなかったものの、ミニ運転列車の予約は確保することができたのだ。もう随分と日が傾いてしまったけど。

 このミニ運転列車は、シミュレーションとは異なり、実際に自身の手で列車を運転することができる。シミュレーションより年齢制限が厳しくないこともあり、小さな子供連れにも人気な体験施設だ。ここもまた、予約を取るのは抽選式。よく取れたものだ。さくらのくせに。

「あのな、私だってたまには当たることだってあるよ」

 おっと、バレてる。

「大体、今日は平日だろ? 当たりやすいに決まってんだろ。E5は枠が少なすぎるんだよ」

 まあ、確かに。実際、周りを見回しても私たち以外に2組くらいしかいない。

 そうしているうちに、私たちの順番が回ってきた。乗り込む車両はE235系、山手線の車両を模したものだった。

「誰が運転する?」

「ひばりで良いんじゃね?」

「え、私?」

 面食らったようなひばり。

「でも、私さっきシミュレーションで──」

「わかってるわかってる。だから、リベンジだよ」

 うん、私もひばりの運転に賛成だ。彼女だけは鉄博初訪問なのだ。色々体験させてあげたい。

「大丈夫。シミュレーションより運転しやすいから」

 渋るひばりの背中を押して、車内に押し込んだ。半ば強引気味に運転席に座らせる。そして、私とさくらは2人並んで後部座席に陣取った。

 係員さんからの説明を受けて、扉が閉められる。発車ベルが鳴って、さあ出発だ。

「安全装置もちゃんとついてるし、制限速度と信号を守れば大丈夫だよ」

「わ、わかったわ」

 この車両はワンハンドル式だ。レバーを手前に引いて走り始める。

 私たち3人を乗せた列車は時計回りに進み始めた。山手線風に言うなら外回りだ。そもそも、この車両は山手線か。

「本日もJR東日本をご利用くださりありがとうございます」

 唐突にさくらが車掌のまねごとを始めた。ダミ声気味でやけに上手い。

「何? そんなことすんの?」

「良いじゃん、やろうぜ」

 悪ノリしてるなぁ。まあ、良いか。車内には私たちしかいないんだし、好き勝手どうぞ。

「この列車は山手線外回りの万世橋まんせいばし行きです。次は汐留、汐留に止まります」

 暗に次の駅に止まれと言っているな。

 ミニ運転列車には、3つの途中駅が設けられている。乗り降りはできないけど、停車も通過も自由だ。時計回りに進んでいるので、汐留、飯田町いいだまち両国橋りょうごくばしの順になる。ちなみに、万世橋というのが乗降地点の駅名だ。

 カーブを超えて直線にさしかかると、すぐにポイントだ。あっという間に汐留駅へとさしかかる。

「あっ、ホームそっちだわ。停止位置確認、よろしく」

 私もやるの!? てか、車掌2人体制かよ。

「全く仕方ないなぁ」

 減速して停車する。顔は出せないけど、一応停止位置確認の真似事だけはしておこう。

「停止位置よし」

 ちょっと後ろ寄りだけど、お尻がギリギリホームに入ってるから良しとしよう。

「本当ね。意外と運転しやすいわ」

「でしょ? 実物運転した方が感覚掴みやすいんだよ」

 といっても、遙か昔の記憶だけど。

 と、そのとき、車内に発車メロディが響き渡った。これはJRーSHー1だ。中央線東京駅などで使われている発車メロディ。軽快なメロディラインが耳触り良い。私の好きな発車メロディの1つだ。

 って、そうじゃなくて。

「さくらでしょ!」

「雰囲気出て良いじゃん」

 その手にはスマホが。画面は動画投稿サイトのものだった。まったくこいつは。

「はい、発車して良いぜ」

 たっぷり2コーラス鳴らしやがった。念のため後ろを見たけど、後続の車両はいなかった。良かった良かった。

 こうして、同じような要領で飯田町、両国橋と停車していった。残り2駅の発車メロディーは『清流』と『雲を友として』がチョイスされた。なんというマニアックぶりだろうか。

 そして、いよいよ万世橋駅へと戻ってくる。停車時間などもあったから、1周およそ10分弱だったろうか。なんだかんだ楽しかった。自分が運転しなくても結構楽しいもんだ。さくらはふざけすぎだけど。

 万世橋手前では自動運転に切り替わる。他の車両との追突を避けるためだ。自動でギリギリの位置に停車する。これにてミニ運転列車運転体験終了である。

「うっふふ、楽しかったわ!」

 運転を終えたひばりは、まるで子供のようにはしゃいでいた。ぴょんぴょん飛び跳ねて嬉しそう。

「運転できて良かったわ! ありがとう、さくらさん、みずほさん」

「いやいや。こっちこそ楽しんでもらえて良かったよ」

 シミュレーションのリベンジは果たせたようだ。私も満足だよ。

「特にさくらさん! 雰囲気作ってくれてありがとう!」

「ははっ。乗ったからには車掌業務はやるよ。当然だろ?」

 いやいや、やりすぎだっつの。まあ、ひばりが喜んでるなら良いんだけど。

「またやりましょうね! 絶対!」

 また、か。ということは、またこの3人で鉄博に来るってことだ。

 うん、絶対楽しいと思う。次はいつになるかわからないけど、絶対またこの3人で来たい。私たちの友情が続く限り、そんな日はすぐ来ると思う。

「そうだね。絶対やろうね。また」

 私たちは影法師と夕日に照らされた線路の脇を通り抜けていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ツルギの剣

Narrative Works
青春
 室戸岬沖に建設された海上研究都市、深水島。  舞台はそこに立つ女子校、深水女子高等学校から始まる。  ある日、深水女子高等学校の野球部に超野球少女が入部した。  『阿倍野真希』と呼ばれる少女は、ささいなことから本を抱えた少女と野球勝負をすることになった。  勝負は真希が勝つものと思われていたが、勝利したのは本の少女。  名前を『深水剣』と言った。  そして深水剣もまた、超野球少女だった。  少女が血と汗を流して戦う、超能力野球バトル百合小説、開幕。 ※この作品は複数のサイトにて投稿しています。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

処理中です...