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第21章 津軽・ザ・ウェイ at 津軽鉄道津軽鉄道線
津軽・ザ・ウェイ⑦
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金木駅から1駅進んだところで、また私たちは列車を降りた。木々に囲まれたような様相の駅は、その名を芦野公園駅という。
名前の通り、芦野公園の敷地が隣接している場所だ。かつて太宰治も足を運び、小説「津軽」にも登場した芦野公園は、県内有数の桜の名所として知られているらしい。今は時期的に紅葉が見頃だろうか。随分と木々も色づいている。
そんな津軽の名所の1つ、芦野公園であるが、私たちの目的は駅名ともなったこの公園ではない。駅舎を抜けて右手に進むと、ものの数歩で目的地に到着した。木造平屋建ての建物は、白い塗装に朱色の屋根という実に目に映える色合いだった。
「すごい。立派だね」
「なー、結構綺麗だな、思ったよりも」
建物を眺めながら入り口へと向かう。その刹那だった。
「あっ」
思わず声を上げてしまった。というのも、扉の隣の窓ガラスに「手小荷物取扱所」「手荷物一時預所」と書かれていたからだ。
「す、すごい!」
思わず心拍数が上がってしまう。というのも、実はこの建物、芦野公園駅の旧駅舎なのだ。
「みずほさん、どうしたの?」
「これ! 旧駅舎の名残、早速見つけちゃった!」
「そうなの?」
小首を傾げるひばり。
「昔はね、手荷物を別に送ったり、一時的に駅で預かってもらったりってこともあったんだよ。その名残!」
「そうなのね!」
早速面白いもの見つけちゃった。古い建物はこういった楽しみがあるのだ。
「おーい、入って良いか?」
「あっ、うん。良いよ」
いかんいかん。またさくらを待たせちゃった。建物の中へ入っていこう。
芦野公園駅の旧駅舎は、現在喫茶店として使われている。店内はシックな雰囲気のカフェといった様相で、当然のことながらテーブルや椅子があちらこちらに備えられている。
のだが、流石に元駅舎。かつての名残がそこら中に残っている。
例えば、出札窓口。切符の販売を行っていた場所だ。ありのままの姿がそのまま残されている。今にも切符の販売をしてくれそうな雰囲気だ。
更に、連絡用の電話まで。ひょっとこの顔を思い起こさせる、非常に古めかしい電話だ。たぶん交換手とかがまだ現役だった頃のもの。
更に、「驛長」「所扱取物荷小手」という銘板まで下がっている。昭和レトロを思い起こさせるような風景がそこかしこに残されているのだ。非常に鉄分が高い。眺めているだけでお腹いっぱいになりそうだ。
とはいえ、ずっと店内をうろうろしていても邪魔になってしまう。いい加減席に座ろう。そうだなぁ……。やっぱりここだな。出札窓口のところに設けられた席に座ろう。ちょうど駅務室があったスペースに設けられた座席だ。
ああ、なんか土合のカフェを思い出すな。あれもかつての駅務室をリノベーションして作られた場所だったっけ。良いなぁ、こういうの。鉄道オタクとして非常に助かる。
さてさて、折角来店したんだ。何か頼んでいこう。さっきお昼ご飯は食べたから、何か甘いものでもいただこうかな。え? デザートは別腹ですよ? 何も問題ナッシング。
「あっ、日替わりケーキがある」
「良いわね。こういうの大好き」
わかるなぁ。日替わりとか、季節限定とか、そういうのに弱いよね。私もそれにしよっかな。
「あら? 何かしら、この林檎ジャムーン珈琲って」
「どれ?」
リンゴとコーヒー? いかにも津軽らしい組み合わせだな。
何々? リンゴジャムと果肉を入れた珈琲だって……?
「これ合うのかなぁ……?」
「さあ? 美味しいからメニューにあるんじゃないかしら?」
「じゃあ、飲んでみようぜ。美味しいかどうか」
そのチャレンジャー精神はどこから来るんだ。まあ、良いけど。
というわけで、日替わりケーキと林檎ジャムーン珈琲を注文。頼んでから提供まではやや時間がかかった。じっくり淹れたコーヒーということなのだろう。
では、早速いただいてみよう。まずは、やっぱり林檎ジャムーン珈琲からだ。
しっかりかき混ぜてっと……。ああ、確かに底に果肉が沈んでいる。本当にリンゴ入ってるんだ。いやいや、マジか……。
とにかく飲んでみよう。はてさて、お味はいかに……。
ズズッと一口すすって。むむっ! これが意外に合うんです!
リンゴの甘酸っぱさが加わることで、コーヒーの酸味や苦味がマイルドになっているのだ。更に、リンゴの爽やかさがプラスされたことで、後味もさっぱりしている。香りも花開いているかのようだ。
恐るべし、リンゴパワー。コーヒーですら美味しくしてしまうなんて。これなら酸味や苦味が苦手な人でも美味しく味わえることだろう。
続いて、ケーキもいただこうか。オレンジのパウンドケーキ。もう見た目だけで美味しそうなの確定なんだけど、やはりというべきか、実際のお味も素晴らしかった。
しっとりとした生地に、酸味強めのオレンジ。リンゴコーヒーと合わせることで、この酸味が良いアクセントになるんだ。更に、付け合わせの生クリームをお好みでかけることで、マイルドさも加わる。このマイルド加減とリンゴコーヒーがまた好相性。
すごいぞ、津軽。リンゴの活用法が無限大だ。
「すげえ。意外と美味いんだな」
「ね。ケーキともよく合うわ」
昭和の香り残る旧駅舎でのんびりとしたティータイム。なんだか不思議な気分だ。でも、落ち着く。癒やしのひとときだ。
鉄分も津軽成分もたっぷり堪能して。私たちの旅はいよいよクライマックスへと向かっていく。
名前の通り、芦野公園の敷地が隣接している場所だ。かつて太宰治も足を運び、小説「津軽」にも登場した芦野公園は、県内有数の桜の名所として知られているらしい。今は時期的に紅葉が見頃だろうか。随分と木々も色づいている。
そんな津軽の名所の1つ、芦野公園であるが、私たちの目的は駅名ともなったこの公園ではない。駅舎を抜けて右手に進むと、ものの数歩で目的地に到着した。木造平屋建ての建物は、白い塗装に朱色の屋根という実に目に映える色合いだった。
「すごい。立派だね」
「なー、結構綺麗だな、思ったよりも」
建物を眺めながら入り口へと向かう。その刹那だった。
「あっ」
思わず声を上げてしまった。というのも、扉の隣の窓ガラスに「手小荷物取扱所」「手荷物一時預所」と書かれていたからだ。
「す、すごい!」
思わず心拍数が上がってしまう。というのも、実はこの建物、芦野公園駅の旧駅舎なのだ。
「みずほさん、どうしたの?」
「これ! 旧駅舎の名残、早速見つけちゃった!」
「そうなの?」
小首を傾げるひばり。
「昔はね、手荷物を別に送ったり、一時的に駅で預かってもらったりってこともあったんだよ。その名残!」
「そうなのね!」
早速面白いもの見つけちゃった。古い建物はこういった楽しみがあるのだ。
「おーい、入って良いか?」
「あっ、うん。良いよ」
いかんいかん。またさくらを待たせちゃった。建物の中へ入っていこう。
芦野公園駅の旧駅舎は、現在喫茶店として使われている。店内はシックな雰囲気のカフェといった様相で、当然のことながらテーブルや椅子があちらこちらに備えられている。
のだが、流石に元駅舎。かつての名残がそこら中に残っている。
例えば、出札窓口。切符の販売を行っていた場所だ。ありのままの姿がそのまま残されている。今にも切符の販売をしてくれそうな雰囲気だ。
更に、連絡用の電話まで。ひょっとこの顔を思い起こさせる、非常に古めかしい電話だ。たぶん交換手とかがまだ現役だった頃のもの。
更に、「驛長」「所扱取物荷小手」という銘板まで下がっている。昭和レトロを思い起こさせるような風景がそこかしこに残されているのだ。非常に鉄分が高い。眺めているだけでお腹いっぱいになりそうだ。
とはいえ、ずっと店内をうろうろしていても邪魔になってしまう。いい加減席に座ろう。そうだなぁ……。やっぱりここだな。出札窓口のところに設けられた席に座ろう。ちょうど駅務室があったスペースに設けられた座席だ。
ああ、なんか土合のカフェを思い出すな。あれもかつての駅務室をリノベーションして作られた場所だったっけ。良いなぁ、こういうの。鉄道オタクとして非常に助かる。
さてさて、折角来店したんだ。何か頼んでいこう。さっきお昼ご飯は食べたから、何か甘いものでもいただこうかな。え? デザートは別腹ですよ? 何も問題ナッシング。
「あっ、日替わりケーキがある」
「良いわね。こういうの大好き」
わかるなぁ。日替わりとか、季節限定とか、そういうのに弱いよね。私もそれにしよっかな。
「あら? 何かしら、この林檎ジャムーン珈琲って」
「どれ?」
リンゴとコーヒー? いかにも津軽らしい組み合わせだな。
何々? リンゴジャムと果肉を入れた珈琲だって……?
「これ合うのかなぁ……?」
「さあ? 美味しいからメニューにあるんじゃないかしら?」
「じゃあ、飲んでみようぜ。美味しいかどうか」
そのチャレンジャー精神はどこから来るんだ。まあ、良いけど。
というわけで、日替わりケーキと林檎ジャムーン珈琲を注文。頼んでから提供まではやや時間がかかった。じっくり淹れたコーヒーということなのだろう。
では、早速いただいてみよう。まずは、やっぱり林檎ジャムーン珈琲からだ。
しっかりかき混ぜてっと……。ああ、確かに底に果肉が沈んでいる。本当にリンゴ入ってるんだ。いやいや、マジか……。
とにかく飲んでみよう。はてさて、お味はいかに……。
ズズッと一口すすって。むむっ! これが意外に合うんです!
リンゴの甘酸っぱさが加わることで、コーヒーの酸味や苦味がマイルドになっているのだ。更に、リンゴの爽やかさがプラスされたことで、後味もさっぱりしている。香りも花開いているかのようだ。
恐るべし、リンゴパワー。コーヒーですら美味しくしてしまうなんて。これなら酸味や苦味が苦手な人でも美味しく味わえることだろう。
続いて、ケーキもいただこうか。オレンジのパウンドケーキ。もう見た目だけで美味しそうなの確定なんだけど、やはりというべきか、実際のお味も素晴らしかった。
しっとりとした生地に、酸味強めのオレンジ。リンゴコーヒーと合わせることで、この酸味が良いアクセントになるんだ。更に、付け合わせの生クリームをお好みでかけることで、マイルドさも加わる。このマイルド加減とリンゴコーヒーがまた好相性。
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「すげえ。意外と美味いんだな」
「ね。ケーキともよく合うわ」
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