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第24章 クリスマスとコミケと試験勉強
クリスマスとコミケと試験勉強①
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それは、その年のクリスマスの出来事だった。
私とさくらはその日、地下鉄に乗って白金台方面へと向かっていた。駅で集合し、地図アプリを眺めながら進んでいく。方向感覚は悪くない私たちなので、迷うことなく目的地へと着くことができた。
「す、すげえ……」
到着した瞬間、思わず感嘆の声を上げたのはさくらだった。私も言葉にこそしなかったが、その佇まいに圧倒されていたのは事実だった。
何しろ、私たちの目の前には、洋風建築の大豪邸がそびえていたからである。
「と、とりあえず連絡するね」
ヤバい、ちょっと手震えてる。まあ、仕方ないか。メッセージアプリを開いて、無料通話のボタンを押す。1コール、2コール。3コール目で出た。
『はぁい』
「ああ、ひばり。着いたよ」
『わかったわ。今から開けてもらうわね』
電話が切れる。すると、それとほぼ同タイミングで金属製の門が開いた。自動で開閉するんだ。すごいな。
門から中庭へと入る。中庭と言っても、ガーデニングができる程度の広さではない。まるで庭園のようだった。草木や花々は手入れが行き届いているし、噴水まで設置されている。その辺の植物園も顔負けだろう。
数分ほど歩いてたどり着いた玄関では、執事さんやメイドさんが列を成していた。本当に使用人を雇っているお家ってあるんだと思った。漫画の中の世界だけじゃなかったんだ。
「みずほ様、さくら様。ようこそお越しくださいました」
居並ぶ使用人たちが頭を下げる。一番老齢の執事さんが扉を開けてくれた。
「ど、どうも」
なんだか落ち着かない。まるでお金持ちのパーティーに来てるみたいだ。とても友達の家に遊びに来てる感覚ではない。
「お嬢様はキッチンにいらっしゃいます。ご案内いたしましょう」
「あ、ありがとうございます」
「お邪魔しまーす……」
老齢の執事さんの後ろについていく。こうでもしないと広すぎて迷子になるのは必至だと思えた。
「なんか緊張するな」
「わかる。こんなの初めてだよ」
本当に漫画の中に迷い込んだようだ。これ現実なんだろうか。
「痛っ。何すんだよ」
「良かった。夢じゃないんだね」
「自分の頬をつねれよ。人にやるな」
「普段のお返しだよ」
「何だ、そりゃ。全く」
ふと、執事さんが立ち止まった。
「ご到着にございます」
どうやらキッチンに着いたようだ。ここまで来るのに何分かかっただろうか。我が家だったら玄関からキッチンまで1分もかからない。
「お嬢様。ご学友のお二方をお連れいたしました」
「あっ、みずほさん、さくらさん! ようこそ!」
キッチンに入ると、エプロン姿のひばりが人一倍際立っていた。バラ柄のエプロンだなんて、可愛らしいさと高潔さが相まっていて、彼女によく似合っている。
「何か作ってたの?」
「ええ。今日のスイーツを」
へえ、ひばりがわざわざ作るなんて。てっきり使用人の人たちに作ってもらってるのかと思ってた。
「折角みずほさんとさくらさんがいらっしゃるんですもの。手作りしてみたくて」
おおー、それは嬉しい。ひばりの手作りスイーツか。これは楽しみだ。
「お嬢様、ご自分で作られると頑として聞かず。お料理なんて初めてですから、我々としても心配で心配で……」
「こら、じい。余計なこと言わないの」
へー、私たちのために初めて料理を……。なんだかすごく嬉しい。私たちが彼女の初めての手料理を食べられるんだ。私たちが……。私の口が……!
「そうだわ。みずほさん、ちょっと良い?」
「何?」
手招きに応じると、彼女はスプーンを私の前に突き出した。
「味見してくださる? はい、あーん」
あ、あーん!? あーんだって!? ひばりが? 私に? あーんしてくれるの!?
あまつさえ、私自身の手で食べることだってできるというのに? わざわざ、あーんを? たかが味見に、あーんを? あーんしてくれるの? 食べさせてくれるの? ひばりが? 私に?
「あ、あーん」
パクリと食いつく。ふわっとしたメレンゲとクリームの甘み、イチゴの甘酸っぱさが口の中で混ざり合っていった。が、正直味がよくわからない。だって、ひばりのあーんだよ? 破壊力抜群なのだ。私の味覚なんぞ、いやそれどころか五感全てが蒸発中である。
「美味しい?」
「う、うん……。幸せの味がする……」
「良かった!」
ひばりが喜んでるから良いや。へへへ、ひばりの初めての手料理。その初めてを食べたのは正真正銘私なんだ。これはもう末代までの誇りとして語り継いでいこう。うん、そうしよう。
「気持ち悪っ」
「うるさい」
さくらがこう言い出すのはもうお決まりだ。私だってわかってるよ。自分が気持ち悪いことしてるくらい。でも、しょうがないじゃん。ひばりの前なんだから。
大体、誰だってひばりにあーんされたら舞い上がっちゃうよ。その感覚がさくらにはわからないのだろうか、全く。
「本当だわ。美味しい。我ながら中々良い出来ね」
ひばり自身も一口味見していた。彼女の舌が満足してるならそれで良いのだろう。
「これなら問題ないわね」
パンパンと手を叩く。すると、どこからか使用人の人たちが現れた。駆けつけたと言った方が適切だろうか。何しろ、現れるのが一瞬だったのだから。
「私の部屋まで運んでちょうだい」
「かしこまりました」
素早い手際で作業が始まる。どこからかカートなんて持ち出して。これで運ぶのだろうか。
「さっ、私の部屋に行きましょう。案内するわ」
外したエプロンを執事に渡し、颯爽とキッチンを後にするひばり。ほどいた金色の髪の毛がなめらかに揺れ、辺りにフレグランスの香りが広がった。
私とさくらはその日、地下鉄に乗って白金台方面へと向かっていた。駅で集合し、地図アプリを眺めながら進んでいく。方向感覚は悪くない私たちなので、迷うことなく目的地へと着くことができた。
「す、すげえ……」
到着した瞬間、思わず感嘆の声を上げたのはさくらだった。私も言葉にこそしなかったが、その佇まいに圧倒されていたのは事実だった。
何しろ、私たちの目の前には、洋風建築の大豪邸がそびえていたからである。
「と、とりあえず連絡するね」
ヤバい、ちょっと手震えてる。まあ、仕方ないか。メッセージアプリを開いて、無料通話のボタンを押す。1コール、2コール。3コール目で出た。
『はぁい』
「ああ、ひばり。着いたよ」
『わかったわ。今から開けてもらうわね』
電話が切れる。すると、それとほぼ同タイミングで金属製の門が開いた。自動で開閉するんだ。すごいな。
門から中庭へと入る。中庭と言っても、ガーデニングができる程度の広さではない。まるで庭園のようだった。草木や花々は手入れが行き届いているし、噴水まで設置されている。その辺の植物園も顔負けだろう。
数分ほど歩いてたどり着いた玄関では、執事さんやメイドさんが列を成していた。本当に使用人を雇っているお家ってあるんだと思った。漫画の中の世界だけじゃなかったんだ。
「みずほ様、さくら様。ようこそお越しくださいました」
居並ぶ使用人たちが頭を下げる。一番老齢の執事さんが扉を開けてくれた。
「ど、どうも」
なんだか落ち着かない。まるでお金持ちのパーティーに来てるみたいだ。とても友達の家に遊びに来てる感覚ではない。
「お嬢様はキッチンにいらっしゃいます。ご案内いたしましょう」
「あ、ありがとうございます」
「お邪魔しまーす……」
老齢の執事さんの後ろについていく。こうでもしないと広すぎて迷子になるのは必至だと思えた。
「なんか緊張するな」
「わかる。こんなの初めてだよ」
本当に漫画の中に迷い込んだようだ。これ現実なんだろうか。
「痛っ。何すんだよ」
「良かった。夢じゃないんだね」
「自分の頬をつねれよ。人にやるな」
「普段のお返しだよ」
「何だ、そりゃ。全く」
ふと、執事さんが立ち止まった。
「ご到着にございます」
どうやらキッチンに着いたようだ。ここまで来るのに何分かかっただろうか。我が家だったら玄関からキッチンまで1分もかからない。
「お嬢様。ご学友のお二方をお連れいたしました」
「あっ、みずほさん、さくらさん! ようこそ!」
キッチンに入ると、エプロン姿のひばりが人一倍際立っていた。バラ柄のエプロンだなんて、可愛らしいさと高潔さが相まっていて、彼女によく似合っている。
「何か作ってたの?」
「ええ。今日のスイーツを」
へえ、ひばりがわざわざ作るなんて。てっきり使用人の人たちに作ってもらってるのかと思ってた。
「折角みずほさんとさくらさんがいらっしゃるんですもの。手作りしてみたくて」
おおー、それは嬉しい。ひばりの手作りスイーツか。これは楽しみだ。
「お嬢様、ご自分で作られると頑として聞かず。お料理なんて初めてですから、我々としても心配で心配で……」
「こら、じい。余計なこと言わないの」
へー、私たちのために初めて料理を……。なんだかすごく嬉しい。私たちが彼女の初めての手料理を食べられるんだ。私たちが……。私の口が……!
「そうだわ。みずほさん、ちょっと良い?」
「何?」
手招きに応じると、彼女はスプーンを私の前に突き出した。
「味見してくださる? はい、あーん」
あ、あーん!? あーんだって!? ひばりが? 私に? あーんしてくれるの!?
あまつさえ、私自身の手で食べることだってできるというのに? わざわざ、あーんを? たかが味見に、あーんを? あーんしてくれるの? 食べさせてくれるの? ひばりが? 私に?
「あ、あーん」
パクリと食いつく。ふわっとしたメレンゲとクリームの甘み、イチゴの甘酸っぱさが口の中で混ざり合っていった。が、正直味がよくわからない。だって、ひばりのあーんだよ? 破壊力抜群なのだ。私の味覚なんぞ、いやそれどころか五感全てが蒸発中である。
「美味しい?」
「う、うん……。幸せの味がする……」
「良かった!」
ひばりが喜んでるから良いや。へへへ、ひばりの初めての手料理。その初めてを食べたのは正真正銘私なんだ。これはもう末代までの誇りとして語り継いでいこう。うん、そうしよう。
「気持ち悪っ」
「うるさい」
さくらがこう言い出すのはもうお決まりだ。私だってわかってるよ。自分が気持ち悪いことしてるくらい。でも、しょうがないじゃん。ひばりの前なんだから。
大体、誰だってひばりにあーんされたら舞い上がっちゃうよ。その感覚がさくらにはわからないのだろうか、全く。
「本当だわ。美味しい。我ながら中々良い出来ね」
ひばり自身も一口味見していた。彼女の舌が満足してるならそれで良いのだろう。
「これなら問題ないわね」
パンパンと手を叩く。すると、どこからか使用人の人たちが現れた。駆けつけたと言った方が適切だろうか。何しろ、現れるのが一瞬だったのだから。
「私の部屋まで運んでちょうだい」
「かしこまりました」
素早い手際で作業が始まる。どこからかカートなんて持ち出して。これで運ぶのだろうか。
「さっ、私の部屋に行きましょう。案内するわ」
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