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第三部「継ぐ者の光、試される未来」
第5話:小さな詩人、未来への第一歩
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「……エリア・グランデ嬢を、詩学局付の特別研修生として迎えたい」
王政文化庁の長官が、そう申し出てきたのは、春の祝祭式典から数日後のことだった。
「年齢に応じた柔軟な指導を行いながら、王立文官予備育成の道を開く。
もちろん、政治的利用ではなく、“言葉の芽”を育てる純粋な試みとして」
レイナは、その文書を静かに読みながら、ふと微笑む。
「……やはり、動いてきましたね」
王妃陛下が、真向かいの席でお茶を口に運びながら頷いた。
「王宮は、“声の力”を知ってしまった。
レイナ、あなたがそうしたように。
そして今、それがエリアに受け継がれたことを、皆が感じている」
「……この子が、自分で“書きたい”と言い出してくれたのなら、私は止めません。
でも、彼女が“何かを背負わされる”未来だけは、避けさせたいのです」
「それでも、あなたは王宮で育てますか?」
「はい。逃げ場の中で育つ強さよりも、真実に触れながら選ぶ意思を、私は信じたい」
王妃は、そっと頬をゆるめる。
「……やはり、あなたは“この国の母”になったのですね」
* * *
一方そのころ、エリアは父と一緒に、屋敷の奥の旧剣保管庫にいた。
かつてアレクシスが用いた剣、従士が奉じた装具、
そして、使われることのなかった儀礼用の短剣。
「……お父様、どうしてこの部屋に?」
「君に見せておきたかったんだ。
“剣で守る”という選択も、かつては僕のすべてだったから」
エリアは、小さな目で部屋を見渡す。
「わたし、剣は使わない。でも……」
「でも?」
「“剣で守ってくれてた人がいた”って知ってると、やっぱり安心する」
アレクシスは、それを聞いて微笑んだ。
「その気持ちがある限り、きっと君も誰かを守れる。
剣じゃなくても、君の“声”は、誰かの盾になる」
その言葉に、エリアはゆっくりと頷いた。
「……わたし、詩を学びたい。
もっと、たくさん書けるようになりたい」
「ならば行こう。君の歩く場所に、“言葉という剣”を」
* * *
春の終わり。
エリアは王立詩学局の特別教室に通うようになった。
周囲は年上ばかり。
けれど彼女は臆することなく、真っ直ぐに“書く”ことと向き合った。
最初に彼女が提出した詩は、まだたどたどしく、粗削りだった。
けれど指導官は言った。
「この子は“詩を書こう”としているのではなく、
“誰かに伝えよう”として書いている。
この差は、やがて何十年分の違いになります」
そしてその報告は、レイナとアレクシスの元へと届けられた。
> 《エリア嬢は、“母の声”を受け継ぐだけではなく、
> “自分の声”を探しはじめています》
* * *
その夜。
レイナは机に向かい、静かに一行だけ日記を書いた。
> 「この子は、“象徴”にならなくていい。
> ただ、“エリア”として、人の心に残る詩を紡げばいい」
ふと窓の外を見ると、エリアが庭に出て、小さなノートを手に何かを書いていた。
その姿は、まるで未来と語り合うように――。
王政文化庁の長官が、そう申し出てきたのは、春の祝祭式典から数日後のことだった。
「年齢に応じた柔軟な指導を行いながら、王立文官予備育成の道を開く。
もちろん、政治的利用ではなく、“言葉の芽”を育てる純粋な試みとして」
レイナは、その文書を静かに読みながら、ふと微笑む。
「……やはり、動いてきましたね」
王妃陛下が、真向かいの席でお茶を口に運びながら頷いた。
「王宮は、“声の力”を知ってしまった。
レイナ、あなたがそうしたように。
そして今、それがエリアに受け継がれたことを、皆が感じている」
「……この子が、自分で“書きたい”と言い出してくれたのなら、私は止めません。
でも、彼女が“何かを背負わされる”未来だけは、避けさせたいのです」
「それでも、あなたは王宮で育てますか?」
「はい。逃げ場の中で育つ強さよりも、真実に触れながら選ぶ意思を、私は信じたい」
王妃は、そっと頬をゆるめる。
「……やはり、あなたは“この国の母”になったのですね」
* * *
一方そのころ、エリアは父と一緒に、屋敷の奥の旧剣保管庫にいた。
かつてアレクシスが用いた剣、従士が奉じた装具、
そして、使われることのなかった儀礼用の短剣。
「……お父様、どうしてこの部屋に?」
「君に見せておきたかったんだ。
“剣で守る”という選択も、かつては僕のすべてだったから」
エリアは、小さな目で部屋を見渡す。
「わたし、剣は使わない。でも……」
「でも?」
「“剣で守ってくれてた人がいた”って知ってると、やっぱり安心する」
アレクシスは、それを聞いて微笑んだ。
「その気持ちがある限り、きっと君も誰かを守れる。
剣じゃなくても、君の“声”は、誰かの盾になる」
その言葉に、エリアはゆっくりと頷いた。
「……わたし、詩を学びたい。
もっと、たくさん書けるようになりたい」
「ならば行こう。君の歩く場所に、“言葉という剣”を」
* * *
春の終わり。
エリアは王立詩学局の特別教室に通うようになった。
周囲は年上ばかり。
けれど彼女は臆することなく、真っ直ぐに“書く”ことと向き合った。
最初に彼女が提出した詩は、まだたどたどしく、粗削りだった。
けれど指導官は言った。
「この子は“詩を書こう”としているのではなく、
“誰かに伝えよう”として書いている。
この差は、やがて何十年分の違いになります」
そしてその報告は、レイナとアレクシスの元へと届けられた。
> 《エリア嬢は、“母の声”を受け継ぐだけではなく、
> “自分の声”を探しはじめています》
* * *
その夜。
レイナは机に向かい、静かに一行だけ日記を書いた。
> 「この子は、“象徴”にならなくていい。
> ただ、“エリア”として、人の心に残る詩を紡げばいい」
ふと窓の外を見ると、エリアが庭に出て、小さなノートを手に何かを書いていた。
その姿は、まるで未来と語り合うように――。
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