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第5話『隠しルート解放:第四の男が微笑んだ』
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──攻略対象は3人。
原作通りなら、それで完結するはずだった。
王太子・クラヴィス。
騎士団長・レオン。
魔導師・ユリウス。
彼らのルートを回避しながら、穏やかに推しキャラ(=私)として生き抜く──
……はずだったのに。
「……お久しぶりですね、シエル様」
廊下で声をかけてきたのは、地味な執事服に身を包んだ青年。
ゲームではモブ中のモブ──影の薄さに定評のある従者キャラ。
でも、私は名前を覚えてる。
ゼクス=ラフィーナ。
攻略対象ではない。
イベントにもほとんど登場しない。
唯一の出番は“バッドエンド後の遺体処理係”として暗い演出に映るだけ。
そう──この人、バッドエンド専属キャラだった。
(……なんで、今、私の前に?)
「久しぶり……なの?」
「ええ。シエル様が“彼ら”に囲まれるようになってから、
なかなかお話もできませんでしたから」
(言い方怖くない!? まるで監視してた人のセリフじゃん!?)
「でも、ようやくです。
“この顔”で、僕のことを見てくれたのは──初めてですね?」
「えっ……?」
その瞬間、彼の瞳がぞわりと濁った気がした。
「……もしかして……前世、知ってる?」
ゼクスは静かに微笑んだ。
「“君が、シエルに転生してくる”って、僕はずっと、知ってましたよ」
──雷が落ちたような衝撃。
なんで、この人が私の“中身”を知ってるの?
なんで、“転生”を知ってるの?
まさか……
「まさか……あなたも、プレイヤー……?」
「違いますよ。僕は、最初からこの世界の住人です。
でも──君を見ていた。ずっと、画面の向こうからね」
(……怖ッ!!! なにそのメタ構造!?)
「君はいつも、推しのことだけを見ていた。
僕なんて、見向きもしなかった。でも、ようやく……君は“シエル”になった」
「やだ……やだやだやだ!!」
「もう逃げられませんよ。
この世界で“推し”になった君を、“誰よりも”待っていたのは、僕なんですから」
そう言った彼の背後に──
真っ黒なバッドエンドCG風の空間が一瞬だけ揺らめいた。
(これ……隠しルート開いた……!)
この世界、絶対おかしい。
転生したのも謎だし、攻略対象全員病んでるし、
“存在しないはずのルート”がどんどん出てくる。
そして──
(ゼクスのルートって、どんなエンドだったっけ……)
記憶にない。
でも直感が叫んでいた。
──このルートだけは、絶対に見てはいけない。
原作通りなら、それで完結するはずだった。
王太子・クラヴィス。
騎士団長・レオン。
魔導師・ユリウス。
彼らのルートを回避しながら、穏やかに推しキャラ(=私)として生き抜く──
……はずだったのに。
「……お久しぶりですね、シエル様」
廊下で声をかけてきたのは、地味な執事服に身を包んだ青年。
ゲームではモブ中のモブ──影の薄さに定評のある従者キャラ。
でも、私は名前を覚えてる。
ゼクス=ラフィーナ。
攻略対象ではない。
イベントにもほとんど登場しない。
唯一の出番は“バッドエンド後の遺体処理係”として暗い演出に映るだけ。
そう──この人、バッドエンド専属キャラだった。
(……なんで、今、私の前に?)
「久しぶり……なの?」
「ええ。シエル様が“彼ら”に囲まれるようになってから、
なかなかお話もできませんでしたから」
(言い方怖くない!? まるで監視してた人のセリフじゃん!?)
「でも、ようやくです。
“この顔”で、僕のことを見てくれたのは──初めてですね?」
「えっ……?」
その瞬間、彼の瞳がぞわりと濁った気がした。
「……もしかして……前世、知ってる?」
ゼクスは静かに微笑んだ。
「“君が、シエルに転生してくる”って、僕はずっと、知ってましたよ」
──雷が落ちたような衝撃。
なんで、この人が私の“中身”を知ってるの?
なんで、“転生”を知ってるの?
まさか……
「まさか……あなたも、プレイヤー……?」
「違いますよ。僕は、最初からこの世界の住人です。
でも──君を見ていた。ずっと、画面の向こうからね」
(……怖ッ!!! なにそのメタ構造!?)
「君はいつも、推しのことだけを見ていた。
僕なんて、見向きもしなかった。でも、ようやく……君は“シエル”になった」
「やだ……やだやだやだ!!」
「もう逃げられませんよ。
この世界で“推し”になった君を、“誰よりも”待っていたのは、僕なんですから」
そう言った彼の背後に──
真っ黒なバッドエンドCG風の空間が一瞬だけ揺らめいた。
(これ……隠しルート開いた……!)
この世界、絶対おかしい。
転生したのも謎だし、攻略対象全員病んでるし、
“存在しないはずのルート”がどんどん出てくる。
そして──
(ゼクスのルートって、どんなエンドだったっけ……)
記憶にない。
でも直感が叫んでいた。
──このルートだけは、絶対に見てはいけない。
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