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第1話:婚約破棄の宴
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王都にある大貴族主催の舞踏会。
煌びやかなシャンデリアの光が反射し、宝石のように着飾った令嬢たちが談笑するなか、伯爵令嬢クラリス・エルフォードは微笑をたたえて立っていた。
──その瞬間までは、誰もが彼女を羨望の眼差しで見ていた。
「クラリス・エルフォード嬢。君との婚約は、今この場をもって破棄させてもらう」
静寂が落ちる。
声の主は、彼女の婚約者である侯爵家の嫡男、アラン・バルネラ。彼は高らかに告げ、隣に立つ茶髪の少女の手を取った。
「僕はこの女性、リリア・スノウと出会い、真実の愛に目覚めた。クラリスとの婚約は政略に過ぎなかったが、リリアとは心から愛し合っているんだ」
驚きに満ちたざわめきが、貴族たちの間に広がる。
平民出身の令嬢との関係を公然と宣言するなど、前代未聞だった。
だが、当のクラリスは――冷静だった。
「……まあ、そうですの」
その言葉に、アランの眉がぴくりと動く。
「では、婚約破棄の書類は明朝までにご用意くださいませ。正式な手続きを経なければ、王家からの認可も下りませんので」
「なっ……」
思わず言葉を詰まらせるアラン。その反応に、クラリスはやわらかく微笑む。
「私は、ただ父と母の意向に従っていただけですわ。貴方が別の方と添い遂げたいというなら、それも結構。ただ……」
ここで言葉を切り、彼女はリリアに視線を向ける。
「お相手が平民の娘というのは、貴族社会ではなかなかに大胆な選択でございますわね。心より応援いたします」
皮肉とも取れるその言葉に、周囲の空気がさらに張り詰めた。
「それでは皆さま、ご歓談のさなかに無粋な場面をお見せしまして申し訳ございません。私はこれにて、失礼させていただきますわ」
ドレスの裾を優雅に翻し、クラリスは背筋を伸ばしたままその場を後にする。誰ひとり、彼女を止める者はいなかった。
――ただ一人、その姿を見つめ続けていた銀髪の青年を除いては。
彼の名はノア・ヴァレンティア。王宮直属の近衛騎士団に所属する青年であり、クラリスの幼馴染でもある。
(……変わらないな、クラリスは)
毅然とした態度で傷ついた心を隠す彼女の姿に、ノアの胸がわずかに痛んだ。
そしてこのとき、誰も知らなかった。
数日後、クラリスが王宮の公職に抜擢され、社交界の中心へと返り咲くことを。
そして、アランとリリアに――思わぬ「ざまぁ」の報いが降りかかることを。
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静寂が落ちる。
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「僕はこの女性、リリア・スノウと出会い、真実の愛に目覚めた。クラリスとの婚約は政略に過ぎなかったが、リリアとは心から愛し合っているんだ」
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だが、当のクラリスは――冷静だった。
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「では、婚約破棄の書類は明朝までにご用意くださいませ。正式な手続きを経なければ、王家からの認可も下りませんので」
「なっ……」
思わず言葉を詰まらせるアラン。その反応に、クラリスはやわらかく微笑む。
「私は、ただ父と母の意向に従っていただけですわ。貴方が別の方と添い遂げたいというなら、それも結構。ただ……」
ここで言葉を切り、彼女はリリアに視線を向ける。
「お相手が平民の娘というのは、貴族社会ではなかなかに大胆な選択でございますわね。心より応援いたします」
皮肉とも取れるその言葉に、周囲の空気がさらに張り詰めた。
「それでは皆さま、ご歓談のさなかに無粋な場面をお見せしまして申し訳ございません。私はこれにて、失礼させていただきますわ」
ドレスの裾を優雅に翻し、クラリスは背筋を伸ばしたままその場を後にする。誰ひとり、彼女を止める者はいなかった。
――ただ一人、その姿を見つめ続けていた銀髪の青年を除いては。
彼の名はノア・ヴァレンティア。王宮直属の近衛騎士団に所属する青年であり、クラリスの幼馴染でもある。
(……変わらないな、クラリスは)
毅然とした態度で傷ついた心を隠す彼女の姿に、ノアの胸がわずかに痛んだ。
そしてこのとき、誰も知らなかった。
数日後、クラリスが王宮の公職に抜擢され、社交界の中心へと返り咲くことを。
そして、アランとリリアに――思わぬ「ざまぁ」の報いが降りかかることを。
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