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放課後の屋上は、まだ春の冷たい風が吹いていた。
古びた鉄柵の影がコンクリートに落ちて、長く、細く伸びている。
俺――匠は、制服のポケットに突っ込んだ手をぎゅっと握りしめていた。
なんで、こんなとこに呼び出されたんだろう。
「……匠」
振り向かなくても分かる。
あの真っ直ぐな声は、蓮だ。
白いワイシャツをいつもきっちり着こなして、眉ひとつ乱さない優等生。
俺とは正反対の世界にいるやつ。
「なに?」
わざとぶっきらぼうに言った。
この空気が嫌でたまらない。
でも心臓の音は、妙にうるさい。
「……俺、お前のこと、好きなんだ」
瞬間、風が止んだ。
空の色まで変わった気がした。
「……は?」
何を言われたのか、一瞬理解できなかった。
蓮はまっすぐ俺を見ている。
冗談でも、悪ふざけでもない顔だ。
その目が真剣すぎて、冗談みたいな俺の人生と釣り合っていなかった。
「冗談、だろ」
乾いた笑いが勝手にこぼれた。
「冗談じゃない」
蓮が、一歩、俺に近づいた。
風が二人の間をすり抜ける。
体温が、ふっと、近づく。
バカだ。
俺みたいなやつ、好きになるとか。
まともな家庭もなくて、授業もサボって、教師からも見放されて――。
そんな俺を「好き」なんて言うやつ、いるわけないだろ。
「好きなわけ、ないだろ。俺みたいなやつ」
喉の奥が震えて、声が少しだけ掠れた。
蓮は、それでも下を向かなかった。
むしろ一歩、また近づいて、俺の手をそっと握った。
温かい。
こんな温度、知らなかった。
「……そんなふうに言うなよ」
蓮の声が震えていた。
強いのに、やさしい声だった。
「俺が好きなのは、“お前”なんだ。誰でもない」
目を逸らせなかった。
見たら、壊れると思った。
でも――見てしまった。
あの真っ直ぐすぎる目を。
「……バカ」
情けない声が漏れた。
蓮は静かに笑って、俺の額に、そっと唇を落とした。
その瞬間、屋上の曇り空がほんの少しだけ晴れた気がした。
古びた鉄柵の影がコンクリートに落ちて、長く、細く伸びている。
俺――匠は、制服のポケットに突っ込んだ手をぎゅっと握りしめていた。
なんで、こんなとこに呼び出されたんだろう。
「……匠」
振り向かなくても分かる。
あの真っ直ぐな声は、蓮だ。
白いワイシャツをいつもきっちり着こなして、眉ひとつ乱さない優等生。
俺とは正反対の世界にいるやつ。
「なに?」
わざとぶっきらぼうに言った。
この空気が嫌でたまらない。
でも心臓の音は、妙にうるさい。
「……俺、お前のこと、好きなんだ」
瞬間、風が止んだ。
空の色まで変わった気がした。
「……は?」
何を言われたのか、一瞬理解できなかった。
蓮はまっすぐ俺を見ている。
冗談でも、悪ふざけでもない顔だ。
その目が真剣すぎて、冗談みたいな俺の人生と釣り合っていなかった。
「冗談、だろ」
乾いた笑いが勝手にこぼれた。
「冗談じゃない」
蓮が、一歩、俺に近づいた。
風が二人の間をすり抜ける。
体温が、ふっと、近づく。
バカだ。
俺みたいなやつ、好きになるとか。
まともな家庭もなくて、授業もサボって、教師からも見放されて――。
そんな俺を「好き」なんて言うやつ、いるわけないだろ。
「好きなわけ、ないだろ。俺みたいなやつ」
喉の奥が震えて、声が少しだけ掠れた。
蓮は、それでも下を向かなかった。
むしろ一歩、また近づいて、俺の手をそっと握った。
温かい。
こんな温度、知らなかった。
「……そんなふうに言うなよ」
蓮の声が震えていた。
強いのに、やさしい声だった。
「俺が好きなのは、“お前”なんだ。誰でもない」
目を逸らせなかった。
見たら、壊れると思った。
でも――見てしまった。
あの真っ直ぐすぎる目を。
「……バカ」
情けない声が漏れた。
蓮は静かに笑って、俺の額に、そっと唇を落とした。
その瞬間、屋上の曇り空がほんの少しだけ晴れた気がした。
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