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第38話:進路と夢と、ふたりの選択
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夜。
透真は、机の前で白紙の進路希望調査票をじっと見つめていた。
将来の夢。希望する進学先。目指す職業──
どの項目にも、まだ一文字も書けていなかった。
(……何を、したいんだろう)
ずっと、“今を生きる”ことに精一杯だった。
未来を描くことなんて、考えたことがなかった。
そのとき、部屋の扉がノックされる。
「入っていいか?」
「……陽翔。どうぞ」
陽翔はスウェット姿で入ってきて、透真の机をちらりと見た。
「進路票、書けた?」
「まだ。……お前は?」
「仮で、第一希望は“政府機関の防衛局”。
αとしての推薦枠があるから、現実的に考えてな」
透真は小さく笑った。
「……さすが、現実派」
「でも、本音を言えば──」
陽翔は透真の横に腰を下ろし、目線を合わせた。
「お前がいない場所で、人生を積み上げたって、
何も嬉しくない。……俺は、お前と一緒に生きたい」
「……ありがとう」
透真は、そう返しながら、目を伏せた。
「俺もそう思ってる。……けど、
“陽翔の未来を狭めたくない”って気持ちもあるんだ」
「それを“遠慮”って呼ぶんだよ。
俺は選びたいんだ、お前がいる未来を。
犠牲でも妥協でもなく、俺自身の選択として」
透真は少しだけ笑って、小さく頷いた。
「じゃあ、俺も、ちゃんと考えてみるよ。
“お前といる未来”を、どう作っていくかを」
その夜、透真は進路票に初めて文字を記した。
〈進学希望先〉:都市圏・共同進学プログラム希望
〈志望理由〉:将来、バース分野に関わる調査・記録職に就きたい。
誰かの“番の記録”を、きちんと未来に残せるように──
そんな仕事に就きたいと思うようになった。
翌朝。
透真は記入済みの票をファイルに入れながら、
自分の胸の奥が、ほんの少し温かくなっているのを感じた。
誰かの未来じゃない。
“自分の未来”を、自分の手でつくる。
その第一歩を、ようやく踏み出せた気がした。
一方その頃。
陽翔のスマホには、一通の通知が届いていた。
『防衛局上層部より通知:推薦候補生に選出。特別研修のため、半年間の地方派遣が確定。』
──ふたりの選択の行く先に、また新たな試練が近づいていた。
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「入っていいか?」
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陽翔はスウェット姿で入ってきて、透真の机をちらりと見た。
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透真は小さく笑った。
「……さすが、現実派」
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「お前がいない場所で、人生を積み上げたって、
何も嬉しくない。……俺は、お前と一緒に生きたい」
「……ありがとう」
透真は、そう返しながら、目を伏せた。
「俺もそう思ってる。……けど、
“陽翔の未来を狭めたくない”って気持ちもあるんだ」
「それを“遠慮”って呼ぶんだよ。
俺は選びたいんだ、お前がいる未来を。
犠牲でも妥協でもなく、俺自身の選択として」
透真は少しだけ笑って、小さく頷いた。
「じゃあ、俺も、ちゃんと考えてみるよ。
“お前といる未来”を、どう作っていくかを」
その夜、透真は進路票に初めて文字を記した。
〈進学希望先〉:都市圏・共同進学プログラム希望
〈志望理由〉:将来、バース分野に関わる調査・記録職に就きたい。
誰かの“番の記録”を、きちんと未来に残せるように──
そんな仕事に就きたいと思うようになった。
翌朝。
透真は記入済みの票をファイルに入れながら、
自分の胸の奥が、ほんの少し温かくなっているのを感じた。
誰かの未来じゃない。
“自分の未来”を、自分の手でつくる。
その第一歩を、ようやく踏み出せた気がした。
一方その頃。
陽翔のスマホには、一通の通知が届いていた。
『防衛局上層部より通知:推薦候補生に選出。特別研修のため、半年間の地方派遣が確定。』
──ふたりの選択の行く先に、また新たな試練が近づいていた。
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