Ωの花嫁に指名されたけど、αのアイツは俺にだけ発情するらしい

春夜夢

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第58話:波紋と策謀、そしてふたりの選択

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制度会見から数日──

 ネットニュースやテレビ番組では、
 ふたりの名前と映像が連日のように取り上げられていた。

> 『番制度は終わるべきか?』
『緋月透真、制度を否定したΩの真意とは』
『異常共鳴ペア・天瀬陽翔が語る“選び取る愛”』




---

 擁護と賞賛、批判と侮蔑──世間の声は極端に分かれていた。
 透真のSNSには温かい応援もあれば、
 “番のくせに制度を壊すな”という匿名の誹謗中傷も。


---

「……こうなることは分かってたけど、実際に見ると、少し……痛いね」

 透真がスマホを伏せて、深く息を吐く。

 陽翔はすぐに背後からその肩を抱きしめ、低く囁いた。

「目を通さなくていい。お前を見てる人間は、ここにいる」


---

 その温もりは変わらず、何より確かな“答え”だった。

 けれど──その夜、事件は起こる。


---

 制度研究庁から届いた資料確認のために、
 透真と陽翔はふたりで専用フロアへ足を運んだ。

 透真が備え付けの端末に触れた瞬間──

> 「──共鳴値異常反応、αΩ間接触違反、データ遮断」
「対象個体に脳反応異常。隔離処置を推奨」



 警報音が鳴り響いた。


---

「……なっ……何、これ……!」

 透真の脳内に、激しい閃光のような痛みが走った。

「透真ッ!」

 陽翔がすぐに抱き寄せるが、警備用AIが冷たく応答する。

> 「対象の脳波に異常波形。侵害反応あり。現在、制度違反の兆候が検出されました」




---

 ──仕組まれていた。

 制度に反旗を翻した“象徴”を、“危険な存在”として排除する計画。

 透真の共鳴反応に、人工的な攪乱プログラムが埋め込まれていたのだ。


---

「ふざけるな……透真は何もしてない!」

 陽翔が身を挺して遮断装置を破壊し、
 透真を抱きかかえて緊急転送装置に駆け込んだ。


---

 研究庁から逃れたふたりは、旧区画の空き施設に一時避難する。
 透真はまだ意識が朦朧としていたが──

「……俺……だけが……足を引っ張って……」

「違う。お前のせいじゃない。全部、あいつらが仕組んだ」

 陽翔は静かに、けれどはっきりと言った。


---

「……もう決めた。制度の“外”に、俺たちの未来を作ろう。
 誰かに決められる愛なんて、クソ喰らえだ」


---

 透真の手が、かすかに陽翔の指を探す。

 繋がれたその手が、ふたりの“意思”を確かに結び直していた。
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