Ωの花嫁に指名されたけど、αのアイツは俺にだけ発情するらしい

春夜夢

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第61話:暴かれる真実と、決意のキス

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午前十一時五十九分。
 旧市街にある隠しコネクションから、透真と陽翔は並んでカメラの前に立っていた。

 背後には、制度研究庁から奪ったデータと証言を組み合わせた映像。
 手元には、世界中のメディアと個人端末に届く“配信キー”がセットされている。


---

「本当に、いいの?」

 透真が尋ねる。

 陽翔は一切の迷いなく、頷いた。

「どれだけ燃えても構わない。……その代わり、
 この配信が終わったら──お前は俺のものだ。逃がさないからな」


---

 冗談めかした言い方に、透真は微笑みながら小さく頷いた。

「うん、分かってる。……もう、俺も逃げるつもりなんてないから」


---

 ──午前十二時、配信開始。

 画面に映ったのは、透真と陽翔、ふたりの姿だった。

> 「こんにちは。俺たちは、“番制度”の異常共鳴対象です」
「けれど、俺たちは、“制度に選ばれたから”結ばれたわけじゃない」
「“愛したから”、結ばれたんです」




---

 透真は、震える声を必死に抑えて言葉を紡ぐ。

> 「この制度の裏で、どれだけのΩが、“番ではない”という理由で
人間らしい人生を奪われてきたか──知ってほしいんです」



 同時に流れるのは、記録映像と統計データ、そして匿名証言。

 誰かの、誰かの、大切な日常が“制度”の名のもとに壊されてきた。


---

> 「誰かに選ばれる愛じゃなくて、誰かを選び取る愛を」
「──その証明が、俺たちふたりです」




---

 配信は、急速に拡散された。
 世界中のΩやα、制度に傷ついた人々が一斉に反応を示し始める。

> SNS:「信じてくれてありがとう」
SNS:「涙が止まらない……」
SNS:「俺も、誰かを“選ぶ”ことを怖れない」




---

 けれど同時に、制度を守る者たちからの圧力も始まっていた。

 発信元の追跡、削除申請、サーバー攻撃。


---

 その混乱の中、ふたりは静かにその場所を離れ、
 隠れ家の一室に身を寄せる。


---

「……終わったね。少なくとも、俺たちの“声”は届けられた」

「いや。始まったんだよ。今が、俺たちの物語の“本当の始まり”だ」


---

 陽翔はそう言って、透真の頬をそっと撫でる。

「……この声も、唇も、肌も、全部。誰にも奪わせない」

 静かに、そして深く──唇が重なる。


---

 今までのどのキスよりも、
 優しくて、強くて、決して離れないと誓うような、そんなキスだった。


---

 その夜、世界は変わり始めていた。
 愛を“選んだ”ふたりの姿が、
 誰かの勇気となり、誰かの生き方を変えていく。
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