Ωの花嫁に指名されたけど、αのアイツは俺にだけ発情するらしい

第63話：告白の余波と、動き出す制度改革

配信翌日──

　ネットニュース、テレビ、SNS、街頭の大型ビジョンに至るまで、
　透真と陽翔の告白映像は瞬く間に拡散され、全世界に影響を与え始めていた。

『番制度に“異議あり”。異常共鳴ペアが語る愛の自由』
『制度に潜む選別と偏見──あなたは“番”に縛られていませんか？』

　映像と共に流れた証拠データ。
　制度の導入時に行われた“選別試験”や、“適合しない個体の隔離記録”──

　目を背けてきた真実が、いま白日のもとにさらされた。

　一部の政治家や制度関係者は発言を控え、
　また一部は激しく否定声明を発表。

「あれは歪んだ愛情だ。秩序を乱す扇動だ」

　けれど、それに対して声をあげたのは市民たちだった。

SNS：「俺も制度で排除された。あの人たちのおかげで希望が持てた」
SNS：「“番”に選ばれなかっただけで、恋を罪にされた。変えてほしい」

　制度改革を求める署名は、わずか数日で150万人を超え、
　Ω支援団体や一部の革新派議員も立ち上がり始める。

　一方、陽翔には正式に「制度庁からの出頭要請」が届いていた。

　透真がそれを見て、顔を曇らせる。

「……やっぱり、来たんだね」

「想定内だ。けど、こっちには“世論”がある。今なら正面から戦える」

　そしてその日。
　透真の元へ、ある手紙が届く。

　差出人は──かつて制度によって“番の相手”を奪われた、年配のΩからだった。

『愛を奪われたとき、私はただ黙って泣くことしかできなかった。
でもあなたたちは、言葉を選び、世界を変えた。
……ありがとう。どうか、その手を離さないでください』

　透真は手紙を抱きしめるようにして、目を閉じた。

　過去に傷ついた誰かの“声”が、自分たちの行動によって動いた。

　同じ頃。
　制度庁の内部では、激しい議論と人事刷新が始まっていた。

「番制度は、時代遅れだ」
「いや、秩序維持のためには不可欠だ！」

　──その中心に、緋月透真と天瀬陽翔の名前がある。

「行こう、透真。次は“制度そのもの”に乗り込む番だ」

　陽翔が差し出した手を、透真は迷いなく取った。

　愛を選び、真実を告げたふたりが、
　いま──“制度の根幹”へと踏み込んでいく。