男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢

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第14話 出産の刻、血塗れの産声――誓いと呪いの夜

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「……来るぞ」

その日、ジークは朝からずっと、寝室の隣室で剣を手放さなかった。

部屋の外では、私設の医療班が準備を整え、魔導結界が五重に展開されていた。
だが――それでも、ジークは目を離さない。

「“出産の瞬間が最も狙いやすい”。奴らならそう考える。絶対に、来る」

その声には、確信すらあった。

そして――夜。

「っ……あ、ああぁ……っ!」

産気づいた私は、叫び声を上げながらシーツを握り締めた。
陣痛の波が押し寄せるたび、腹の奥が引き裂かれるような痛みが走る。

「レオナ、深く呼吸しろ……!」

ジークが手を握ってくれる。
その手がなければ、私はとっくに意識を手放していた。

「産婆を! 早く!」

扉が開き、医療班の中の“産婆”が入ってくる――その瞬間。

「……遅いな、来るのが」

ジークの声が、低く響いた。

次の瞬間――

「――“氷葬(アイス・エンブレイス)”」

声と共に、部屋の空気が一変する。
産婆の顔が一瞬にして青ざめ、魔力の暴走が走る。

「っ……バカな、どうして……!」

「お前の魔力、王宮にいた頃の“薬師メイド”と同じだ。バレていないと思っていたか?」

空間が凍てつき、偽の産婆が、ジークの魔法で膝を砕かれ、床に崩れ落ちた。

「誰の指示だ。言え。今すぐ」

「……王妃だ……っ。次の王子を産ませるわけには……!」

「そうか」

ジークの剣が、床を這うように抜き放たれる。

「この手で殺すのは容易い。だが――“見せしめ”は、もっと深く刺す必要がある」

「っ、あ、ああぁっ……!」

出産は、止まらなかった。
刺客を仕留めても、痛みは止まらない。

「もう少しだ……頑張れ、レオナ……!」

「……ジーク様……手……」

「ここにいる。絶対に離れない」

汗と涙と血にまみれた中――

「っ……生まれます! 頭が……!」

「――ひっ……あ、あああ……っ!!」

最後の叫びとともに、響き渡ったのは――

「……おぎゃあっ……おぎゃあっ……!」

――命の産声だった。

数刻後。

私は、ジークの腕の中で赤子を抱いていた。

「……男の子……」

「……強く、真っ直ぐな子に育てよう。君と俺の、未来のすべてだ」

ジークの目には、深い安堵と、消えない怒りが浮かんでいた。

「王妃には、もう慈悲は与えない。子を殺そうとした代償は、王家の誇りごと背負わせてやる」

それは宣戦布告だった。

愛する者を守るために、ジークはもう“人間”ではいられない。
その誓いと呪いの夜に――
私たちは、一つの命を迎えた。

そして、戦いは始まる。

(続く)
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