【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那

文字の大きさ
16 / 66
第2章

11・お飾り妻?は困惑する

しおりを挟む

 リシャルト様がずっと大切に思っていた女性が、――?
 
「い、いやいやいや……。そんな馬鹿な! だって私とリシャルト様がこんなにお話したのって、今日が初めてじゃないですか」

 私の言葉に、リシャルト様はショックを受けているようだった。
 だが、こちらとて身に覚えがないのだ。仕方ないだろう。
 きっと人違いとか、勘違いに違いない。

「もしかして、覚えていらっしゃらないのですか?」

「何を…………?」

にとっては、誰かを治癒することは日常のことなので……。忘れられていても仕方ありませんね」
 
 え、そんな悲しそうに言われては、私の方が間違っているような気がしてくる……。
 どこかでお会いしたことありましたっけ……?

「……10年前のことです。僕はあなたに命を助けられました。10年前に助けた貴族のことは、あなたの記憶にございませんか?」

 10年前に私が命を助けた貴族。
 とても、心当たりがある。荷造りしていた時に見つけた、青い雫のネックレスをくれた少年だ。
 確かにあの少年も、リシャルト様と同じ金髪で青い瞳をしていた。
 けれど、あの口も態度も悪かった貴族の少年と、目の前の物腰穏やかなリシャルト様の印象が全く合致しない。
 
「幼い僕は素直になれなくて、あなたに酷い言葉ばかりかけてしまいました」

「……『チビ聖女』とかですか?」

 そんなまさか、と思いながら、かつて貴族の少年に言われた覚えのある言葉を私は静かに呟いた。
 当時、黒髪黒目であることを揶揄するような言葉はよくかけられていたが、一般的な悪口を言われたのは彼が初めてだった。だからこそ記憶に残っていた。

「覚えていてくださったのですね」

 ほっとしたようにリシャルト様が息を吐き出す。
 ……いいのか、そんな覚えられかたで、という気がしなくもないが。

「あと、私の髪引っ張ったりとかしてませんでした……?」

 治癒をしている私の周りに毎日来ては、私の長い黒髪を引っ張ってちょっかいをかけてきたり、うろちょろしたり。
 
「そうです。それ僕です」

 そんな堂々と言われても……。

「あの時は、失礼なことばかりして申し訳ありませんでした」
 
 リシャルト様は少し俯きながら言った。リシャルト様の長い金髪が風にさらさらと揺れる。
 思い出しはしたが、あの時の少年が超絶イケメンで物腰穏やかな宰相閣下になっていたとは、にわかには受け止めきれない。

「幼心に、心配だったんですよ。あの時12歳だった僕より幼いはずの女の子が、朝から晩まで働いている。そんなことあっていいのか、と」

 残念ながら、この世界ではわりとそれが普通だ。
 特に貧しい家庭の子どもたちは、早くから『小さな大人』とみなされ労働力のひとつとされる。
 貴族の世界で生きてきたリシャルト様にとってはある種衝撃だったのだろう。
 私だって、もし前世の記憶があるままに幼少期を過ごしていたら、あまりにも現代日本と違いすぎてショックを受けていただろう。

「だからこそ、あなたを幸せにしてあげたいとずっと願っていたのです」
 
 真摯に青い瞳を向けられて、私はリシャルト様から目をそらすことができなかった。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。

er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜

大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。 みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。 「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」 婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。 「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。 年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

処理中です...