【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那

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第3章

幕間3・王太子side①

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 アルバートが国王陛下より、一ヶ月以内にエマの聖女としての力を示すように告げられてから2週間。

 (なぜだ、なぜ上手くいかない……!)

 アルバートは焦っていた。
 というのも、エマが聖女代理になってから10日以上経過しているというのに、一向に聖女として認められていないからだ。

 アルバートの本来の計画では、あっという間にエマの力が列聖省に認められ、正式な聖女となっている予定だった。
 そうしてエマとの婚約を発表し、国王陛下に祝福されて晴れて結婚――。
 となるはずなのに。
 現実は全くそうではなかった。

 国王に示された期限は1ヶ月。もう半分を過ぎてしまっている。
 だというのに、エマの活躍の話はどこからも漏れ聞こえてこなかった。
 当の本人であるエマに聞いても、「エマ、頑張っておりますわぁ」と言われ、アルバートは見事に話を逸らされてしまう。
 さすがのアルバートも察していた。エマが活躍を示せていない、ということに。

 (俺の可愛いエマよりも、あのお飾りの聖女の力のほうが優れているとでも言うのか!? ふざけるな!)

 アルバートはぎりりと爪を噛んだ。
 今まで散々馬鹿にして解任した元聖女が、自分の想い人よりも優れているだなんて、そんなことはアルバートのプライドが許せなかった。

「くそ……っ」

 このままでは自分はどうなる?
 アルバートはイライラと考える。

 このままエマが力を示せず、聖女として認められなければ、アルバートに待っているものは処罰だけだ。
 王の許可なく聖女を解任した。挙句選んだ次の聖女候補が全く役に立たないなど論外。

 (ただ俺は、父上に褒められてエマと幸せになりたいだけだ……!)

 破滅してなるものか。何か他に策はないだろうか。
 残り2週間しかない。
 この状態のまま、ただ時間だけが過ぎるのは良くない気がしていた。早く手を打たなければ間に合わない。
 アルバートは教会にいるであろうエマに会いに行くことにした。

 (まずはエマから正確な事情を聞かなくては)


 ◇◇◇◇◇◇


 アルバートが教会本部へたどり着くと、中には何人かの負傷者と複数の治癒士がいた。皆どこか慌ただしそうにしている。
 だが、そこにエマの姿は見当たらなかった。

 (エマはどこだ……?)

「おい、そこの治癒士」

 アルバートは、適当に近くにいた治癒士の女に聞いてみることにした。
 声をかけると、治癒士の女はアルバートの姿に驚いた様子で肩をはね上げた。

「あ、アルバート殿下!? ど、どうかなされましたか!?」

「エマはどこだ」

「エマ様でしたら、修道院にいらっしゃいます……。ここ最近、全く治癒の力を使って下さらなくて……」

 おずおずとそう言った女に、アルバートは瞬間的に怒りが湧いてくるのを感じた。

「おいお前! ただの治癒士ごときがエマに失礼なことを言うな! お前とは身分が違うんだ! 失せろ!」

 アルバートは強く吐き捨てる。最愛のエマの悪口など、誰であっても許さない。
 アルバートはさっさと教会を出て、修道院に行くことにした。


 ◇◇◇◇◇◇


「あ、アルバート様……。どうしてこちらに? 来られるなら教えてくださればよろしいのに」
 
 修道院のエマの部屋を訪ねると、慌てた様子でエマがアルバートを出迎えた。元々前の聖女が使っていたその部屋は、エマが自分の屋敷から持ってきたらしいぬいぐるみやドレスで溢れていた。
 エマはアルバートに椅子に座るよう促す。

「エマ、あと2週間しか期間がないが、聖女としてはどうだ? 上手く認められそうか?」

「そ、それは……」

 口ごもるエマに、アルバートは真っ直ぐな視線を向けた。
 エマは、なんと答えたものかとしばらく目を泳がせている。やがて、泣きそうな表情でアルバートを見返した。

「アルバートさまぁ……っ、エマ、全然役に立ててなくて……っ。ごめんなさぁい……っ」

 大きなエマの瞳から、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。
 その様に、アルバートはいてもたってもいられなくなった。

 (ああ、俺はなんて酷なことをエマにさせているのか!)

 大切な女性と一緒になるためとはいえ、一方的に責務を負わせている。

「エマ、上手く聖女様の力使えないの……っ。こんなんじゃ、アルバート様と一緒にいられないっ」
 
「大丈夫。大丈夫だ、エマ」

 アルバートは、泣きじゃくるエマの小さな体を抱き寄せた。
 小さな体を震わせて涙をこぼす様に、庇護欲を掻き立てられるのを感じていた。

「俺が何とかしてやるから、な!」
 
 エマが聖女として役に立とうが立たなかろうが、アルバートには関係がない。
 エマが聖女として認められる為ならば、列聖省を買収でもしようか。
 アルバートはただ、エマを聖女にすることで結婚を認められたいだけなのだから。

 泣きじゃくるエマを抱きしめながら、アルバートは何か策はないか考えをめぐらせていた。
 腕の中でエマが口元を笑みの形に歪めていたことには、アルバートは当然気づかない。
 
 
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