宝石精霊に溺愛されていますが、主の命令を聞いてくれません

真風月花

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二章

6、しっかりしなくては

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 朝になるまで、シャールーズはアフタルを抱きしめたまま眠っていてくれた。
 夜って怖い。
 目覚めたアフタルは、顔を赤く染めた。
 べつに何かあったわけではないけれど。王女である自分が、相手が精霊とはいえ男性の腕の中で夜を過ごしたなんて。

「しっかりしなくては。わたくしは王宮に戻り、今後のことを考えないといけないんです」
「今後って、なんだよ」

 アフタルの独り言を聞きとがめたシャールーズが、尋ねてくる。
 なんだか不機嫌そうだ。
 やはり甘えすぎたのが良くなかったのかもしれない。
 あくまでの主従の契約なのだから、わきまえなければ。

 コンコン、と部屋の扉を叩く音が聞こえた。

「お目覚めでいらっしゃいますか?」

 扉を開いたのは、巫女だった。
 ベッドに並んで腰を下ろしたままのアフタルとシャールーズを一瞥して、彼女はなぜかうなずいた。

「お食事を用意しております。こちらでどうぞ」

 案内されたのは、食堂だった。
 大部屋に泊まっていた巡礼者の男性が、すでに朝食をとっている。
 テーブルに並べられているのは、麦の粒が入ったスープに平たいパンだ。神殿で供される食事は、信者の寄進で賄われているという。

 辺りを見回すと、どうやらパンを割ってスープに浸した食べるらしい。王宮でも平たいパンが出ることはあるが、今手にしているほどには硬くない。スープは薄味で……というか薄く、におい消しのハーブがたっぷりと入っている。
 
 シャールーズは、食事はいらないと辞退した。

「シャールーズは食事をとらずに平気なのですか?」
「まぁ、こういった物は食わねぇな」
「では、どこから栄養を?」

 アフタルが席に着こうとした時、シャールーズが椅子を引いてくれた。
 そして彼は向かいの席に腰を下ろした。

「そうだな、想いってヤツが糧になるかな」
「想い、ですか?」
「俺らは愛でられ、大切に思われることで宝石になれる。捨て置かれたら、それは単に色がきれいな石でしかねぇ」

 そんな風に考えたことがなかった。
 宝石は、その存在だけで尊いものだと思っていたから。

「たとえ天の女主人に命を吹きこんでもらっても、誰かに愛され、求められなければ俺らはこうして出てこられねぇ。だからアフタルには感謝してるぜ」
「い、いえ。わたくしなんて」

 水差しに入った水を、シャールーズはグラスに注いでくれる。
 アフタルは礼を言って、グラスを受け取った。
 切ったレモンが入った水は爽やかだ。だけど、じっと見つめられていると、食事がしにくい。
 それに夜と違い、妙に丁寧というか優しいというか。
 主従が逆転していたのが、元に戻ったみたいだ。
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