宝石精霊に溺愛されていますが、主の命令を聞いてくれません

真風月花

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五章

10、王家からの申し出

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 その日は朝から火山が静かだった。

「そなたらを欲しいと申し出てきた者がおる」
「へー、どこの誰だよ」

 天の女主人の言葉に、シャールーズは目を丸くした。
 確かに話は聞いていたが、本当に自分たちが必要とされるとは思っていなかったからだ。
 
「遥か西にサラーマという国がある。その王家だ」
「王家って。王さまかよ」
「ふふ、姫かもしれぬぞ」
「姫ねぇ。びーびー泣くような弱虫に、仕えたくなんかねぇや」

 悪態をつきながらも、花盛りのジャスミンが目についたのは、その白さと甘い香りが見たこともない姫を連想させたからだろうか。

 ジャスミンの花の香りをもっと近くでかごうと、シャールーズは背伸びした。
 だが、まだ背が低くて思うように届かない。

「ほら、特別だぞ」

 女主人は苦笑すると、軽々とシャールーズを抱え上げてくれた。

「下ろせよ、おばさん」
「なぜだ? そなたはジャスミンの花が好きなのだろう?」
「別に好きじゃねぇよ。それに子どもみたいに抱っこすんな」
「まだまだ子どもではないか」

 呆れたように言われて、シャールーズは頬を膨らませた。

「大人は気に入らぬからと、頬を膨らませたりせぬぞ」
「うっせぇな。今日だけ特別だぞ。今日だけ俺を抱っこさせてやる」
「はいはい、シンハライトさま。光栄に存じます」

 楽しそうに女主人は笑った。

 それがシャールーズには嬉しかった。神官たちがいなくなり、参拝者が来なくなってから、女主人は笑うことが減ったからだ。
 いい子でいても、女主人は笑わない。ただにっこりと微笑むだけだ。

(おばさんは、やんちゃな方が好きなんだ)

 おとなしくなんて、していないから。だからもっと笑ってくれ。そなた達といると、楽しいよと言ってくれ。
 そのためなら、いくらでも騒ぐから。
 きっとサファーリンとコーネルピンが人の姿を取れるようになったら、もっと神殿は賑やかになるから。


 ドォ……ン。ドォッ!
 激しい音に、空気が震える。
 神殿の椰子の葉が揺さぶられ、ジャスミンの蔓は強い風に千切れそうだ。

「ど、どうしたんだよ」
「噴火が起こったようだ。これまでとは規模が違う。この神殿も危ないやも知れぬ」
「逃げた方がいいのか? 俺、ラウルを呼んでくる」

 シャールーズは、女主人の腕から飛び降りた。
 その時、床に一枚の紙が落ちているのに気づいた。

 ――ぼくだって ふんかこうに いける。

 つたない文字の走り書き。
 それはラウルの字だった。
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