目指せ、婚約破棄!〜庭師モブ子は推しの悪役令嬢のためハーブで援護します〜

森 湖春

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二章

41 バラジャムの紅茶③

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「ペリーウィンクルさん。無知で申し訳ないのだが、ハニーサックルというのは、何色の花なんだい?」

 サントリナの質問は、ペリーウィンクルにとって助け舟にも思えた。
 セリのキラキラした視線に、訳もわからず引き気味になりながら、ペリーウィンクルは答える。

「橙色をした花です。長さは五センチくらいで、細長い筒状。輪を描くように花が咲きます。とても強いフローラルな香りが特徴ですね。葉は、卵形をしています」

「橙色……ニゲラが好む色だな。それに、細長い筒状の花に、卵形の葉……間違いない。ボクは、リコリス嬢がその花をニゲラに贈っているのを見たことがある」

 慎重に、一つ一つ言葉を噛みしめるように、サントリナは言った。
 そうでなければ良い。そんな気持ちなのだろう。
 人の良いことだ。婚約者が奪われそうだというのに。

「まぁ! では、リコリス様が花泥棒なのですか⁉︎」

「いや、それはまだわからない。もしかしたら、リコリス嬢が自分の箱庭で育てているものかもしれないからね」

「そうですわね。ハニーサックルはそう珍しい花ではありません」

 紅茶のおかわりを準備するていで、ペリーウィンクルは話し合う三人からそっと離れた。
 ワゴンに乗せたティーポットの影で、隠密活動をしている過保護な妖精を見つける。
 ペリーウィンクルがまるまるとしたおなかを指でつつくと、妖精は多肉植物のようなぷっくりとした手で抗議するようにペチペチしてきた。

「ねぇ、ヴィアベル。リコリス様がどこにいるか、探してきてくれない?」

 妖精は、くりくりとしたまん丸の目でペリーウィンクルを見つめ、それから溶けるようにシュワリと消えた。

(サントリナ様はそうでなければ良いと思ってる。でも、そう思うということは、ヒロインがやったと思っているという証のような気もする……)

 ペリーウィンクルは考える。

 シナモンを攻略したと確信したヒロインは、彼がすっかり自分に夢中なのを良いことに、放置した。
 そんな彼女が次にしたことは、次のターゲット──ニゲラの攻略である。

(おそらくヒロインは、逆ハーレムルートを狙ってる)

 そしてどうやらヒロインは、待てができないらしい。
 この短期間で二人目を攻略しようとしているあたり、彼女はせっかちさんのようだ。

(放置されたシナモン様が恋人に捨てられたと思い悩んだ挙句、幼なじみで初恋の相手でもあるセリ様と恋人同士になったことを、ヒロインは知らないのかしら……?)

 知っていたら、なんとかしようと躍起になりそうなものである。
 セリを見ている限り、邪魔だてはなさそうだが。

「では、確かめないといけませんわね」

 話がひと段落したらしい。

「ペリー」

 ローズマリーの声に、「はい、お嬢様」とペリーウィンクルは答える。

「やってくれるわね?」

 有無を言わさぬ堂々たる姿。
 女王のような風格を醸すローズマリーに、ペリーウィンクルはかしこまって「おおせのままに」と頭を下げた。
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