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終章
116 幕は上がり、②
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春の国の制裁を恐れてか、それともとばっちりはごめんだったのか。
ソレルの周りに妙な空間が開く。
おかしな空気が流れていると、彼は気づかないのだろうか。
(いいえ。たとえ気づいていたとしても、止めるなんて彼のプライドが許さないでしょうね)
ペリーウィンクルの予感は当たり、ソレルは止まらない。
よく通る美声で、彼は続けた。
「そして! ここにいる女性、リコリス嬢と新たに婚約を交わし、妻として受け入れることを宣言する!」
堂々とした宣言だ。
だが、ペリーウィンクルの目にはソレルが自棄っぱちになっているようにしか見えない。
愚かな王子を揶揄するささやきが、いっそう大きくなる。
彼が衆目に慣れた王族で幸いだった。
そうでなければ、この空気の中でこんなまねはできなかっただろう。
(私だったら、逃げ出しているところよ……)
求めていた結果ではあるけれど、大団円とは言い難い。
あらかじめローズマリーから聞かされていたことではあったが、前世では多少好意を抱いていた相手なだけに、ほんの少し良心が痛む。
だが、現実なんてそんなものだ。仕方がない。
(私はランプの魔人でもなければ万能の神でもない。ほんの少し先の未来を知っていただけのただのモブ。だから、たくさんの人は幸せにできない)
あまりに多くを望むことは、何も望まないのと同じだ。
だからこそペリーウィンクルは、せめて手が届く範囲──それは彼女を友人と言ってくれる人たちや隣にいる妖精を指す──が幸せになれるよう願い、行動しようと思っている。
残念ながら、ソレルはその範囲には入らなかった。それだけだ。
どこまでも愚かな王子様は、リコリスが名もなき生き物の事件に関与していることを知りながら、最後まで庇い続けた。
そしてそれは、今も続いている。
(これがソレル殿下なりの愛、というものなのでしょうか)
この気持ちが媚薬による偽物だと知ったとき、彼はどうするのだろう。
(知ったところで、手遅れか)
いちずと言えば聞こえは良いが、春の国の王族としては最低最悪。
こんなのが王位継承権を持っているかと思うと心配になってしまうが、そこはローズマリーとチャービルの腕の見せ所に違いない。
なんとか頑張ってもらいたいと祈るばかりである。
カツン、と大講堂の床を蹴る音がする。
再びペリーウィンクルが階下を見ると、ローズマリーがソレルの前へ出ようとしていた。
波が引くように、人々が左右に避ける。
膝を折り、深々と令嬢らしい優雅な立ち居振る舞いであいさつをしたローズマリー。ソレルはそんな彼女に、わずかにたじろいだ。
ソレルを鼓舞するように、リコリスがピタリと寄り添う。
これ見よがしに腕に絡んで胸を押し当てているのが、なんともあざとい。
仲睦まじい様子を見せつけて、牽制しているつもりなのだろう。
(でも、そうはいかないんですよ)
ソレルの周りに妙な空間が開く。
おかしな空気が流れていると、彼は気づかないのだろうか。
(いいえ。たとえ気づいていたとしても、止めるなんて彼のプライドが許さないでしょうね)
ペリーウィンクルの予感は当たり、ソレルは止まらない。
よく通る美声で、彼は続けた。
「そして! ここにいる女性、リコリス嬢と新たに婚約を交わし、妻として受け入れることを宣言する!」
堂々とした宣言だ。
だが、ペリーウィンクルの目にはソレルが自棄っぱちになっているようにしか見えない。
愚かな王子を揶揄するささやきが、いっそう大きくなる。
彼が衆目に慣れた王族で幸いだった。
そうでなければ、この空気の中でこんなまねはできなかっただろう。
(私だったら、逃げ出しているところよ……)
求めていた結果ではあるけれど、大団円とは言い難い。
あらかじめローズマリーから聞かされていたことではあったが、前世では多少好意を抱いていた相手なだけに、ほんの少し良心が痛む。
だが、現実なんてそんなものだ。仕方がない。
(私はランプの魔人でもなければ万能の神でもない。ほんの少し先の未来を知っていただけのただのモブ。だから、たくさんの人は幸せにできない)
あまりに多くを望むことは、何も望まないのと同じだ。
だからこそペリーウィンクルは、せめて手が届く範囲──それは彼女を友人と言ってくれる人たちや隣にいる妖精を指す──が幸せになれるよう願い、行動しようと思っている。
残念ながら、ソレルはその範囲には入らなかった。それだけだ。
どこまでも愚かな王子様は、リコリスが名もなき生き物の事件に関与していることを知りながら、最後まで庇い続けた。
そしてそれは、今も続いている。
(これがソレル殿下なりの愛、というものなのでしょうか)
この気持ちが媚薬による偽物だと知ったとき、彼はどうするのだろう。
(知ったところで、手遅れか)
いちずと言えば聞こえは良いが、春の国の王族としては最低最悪。
こんなのが王位継承権を持っているかと思うと心配になってしまうが、そこはローズマリーとチャービルの腕の見せ所に違いない。
なんとか頑張ってもらいたいと祈るばかりである。
カツン、と大講堂の床を蹴る音がする。
再びペリーウィンクルが階下を見ると、ローズマリーがソレルの前へ出ようとしていた。
波が引くように、人々が左右に避ける。
膝を折り、深々と令嬢らしい優雅な立ち居振る舞いであいさつをしたローズマリー。ソレルはそんな彼女に、わずかにたじろいだ。
ソレルを鼓舞するように、リコリスがピタリと寄り添う。
これ見よがしに腕に絡んで胸を押し当てているのが、なんともあざとい。
仲睦まじい様子を見せつけて、牽制しているつもりなのだろう。
(でも、そうはいかないんですよ)
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