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一章 一年目なつの月
04 なつの月9日、シルキーの同居人②
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イーヴィンは目の前の人物を見つめて困惑した。
生まれてこの方、こんなに綺麗な人を見たことがない。王都で見た王侯貴族も霞むくらい、綺麗という言葉しか出ないくらい、目の前の人は綺麗だった。
紳士の礼をしているが、その見た目は貴婦人のようだ。
真っ白な肌は陶器のようだし、銀の髪は微かな風に揺れるほどサラサラ。窓から差し込んだ陽の光が反射すると、まるで星屑が散りばめられているようにキラキラする。
全体的に色素が薄いせいか、男とも女とも取れる中性的な雰囲気があった。
イーヴィンの脳裏にふと、『白の貴婦人』の名が浮かぶ。それはまさに、シルキーの別名ではなかったか。
「あなたは、シルキー?」
イーヴィンの呟きのような問いに、その人はこくりと頷いた。それからくるりと踵を返すと奥の部屋へと消えていく。
(えっと……追い出す気は、まだないみたい……?)
戸惑いながら、イーヴィンはトランクを抱え直してシルキーの後を追った。
恐る恐る足を進めながら、シルキーは一体男なのか女なのかと考える。
シルキーは、そのほとんどが女性だと言われている。そう、そのほとんどが、だ。
ほとんど、ということは、皆無ではないということ。
つまり、あのシルキーは男である可能性もある。
というか、たぶん、男だろう。
真っ白なウイングカラーシャツに灰色のリボンを結び、その上にはベスト。しっかりとアイロンのかけられた皺のないパンツを合わせている。
その格好は、男の家事使用人の制服とよく似ている。
若い男に見える妖精と、成人したばかりの若い女。
そんな二人が一つ屋根の下に住むのは、通常ならばいけないことだ。あらぬ誤解を受けても仕方がない。
けれど悲しいかな、イーヴィンにはそういう常識が少々欠けていた。
父と母、五人の弟に囲まれて育った彼女は、自分が女性だという自覚が薄かったのだ。
白の貴婦人と同居すれば、少しは女性らしくなるのではーーそんな母の思いも虚しく、シルキーはまさかの男。
とはいえ、女性との同居に些か緊張していたイーヴィンにとって、相手が男の妖精だというのは気が楽だった。だって、弟たちと暮らすのとそう変わりない。変わりないどころか、怒鳴らなくても手伝ってくれる分、とても有難い存在である。
ゆるゆると歩いては止まりを繰り返しながら考え事をしていると、奥の部屋から鼻をくすぐる良い香りが漂ってきた。
子犬のようにスンスンと鼻を動かしながらイーヴィンが奥の部屋へ入ると、そこはどうやらダイニングのようだった。
香りを漂わせていたのは、テーブルの上に用意された紅茶だったらしい。
一緒に添えられたクッキーを見て、イーヴィンの目がキラキラと輝く。途端にお腹がキュルリと鳴って、今更ながらにお昼を食べていないことに気がついた。
お腹に手を当てて立ち止まるイーヴィンに近寄ったシルキーは、その手からそっとトランクを取り上げるとどこかへ行ってしまった。
「え、ちょっと待って!」
生まれてこの方、こんなに綺麗な人を見たことがない。王都で見た王侯貴族も霞むくらい、綺麗という言葉しか出ないくらい、目の前の人は綺麗だった。
紳士の礼をしているが、その見た目は貴婦人のようだ。
真っ白な肌は陶器のようだし、銀の髪は微かな風に揺れるほどサラサラ。窓から差し込んだ陽の光が反射すると、まるで星屑が散りばめられているようにキラキラする。
全体的に色素が薄いせいか、男とも女とも取れる中性的な雰囲気があった。
イーヴィンの脳裏にふと、『白の貴婦人』の名が浮かぶ。それはまさに、シルキーの別名ではなかったか。
「あなたは、シルキー?」
イーヴィンの呟きのような問いに、その人はこくりと頷いた。それからくるりと踵を返すと奥の部屋へと消えていく。
(えっと……追い出す気は、まだないみたい……?)
戸惑いながら、イーヴィンはトランクを抱え直してシルキーの後を追った。
恐る恐る足を進めながら、シルキーは一体男なのか女なのかと考える。
シルキーは、そのほとんどが女性だと言われている。そう、そのほとんどが、だ。
ほとんど、ということは、皆無ではないということ。
つまり、あのシルキーは男である可能性もある。
というか、たぶん、男だろう。
真っ白なウイングカラーシャツに灰色のリボンを結び、その上にはベスト。しっかりとアイロンのかけられた皺のないパンツを合わせている。
その格好は、男の家事使用人の制服とよく似ている。
若い男に見える妖精と、成人したばかりの若い女。
そんな二人が一つ屋根の下に住むのは、通常ならばいけないことだ。あらぬ誤解を受けても仕方がない。
けれど悲しいかな、イーヴィンにはそういう常識が少々欠けていた。
父と母、五人の弟に囲まれて育った彼女は、自分が女性だという自覚が薄かったのだ。
白の貴婦人と同居すれば、少しは女性らしくなるのではーーそんな母の思いも虚しく、シルキーはまさかの男。
とはいえ、女性との同居に些か緊張していたイーヴィンにとって、相手が男の妖精だというのは気が楽だった。だって、弟たちと暮らすのとそう変わりない。変わりないどころか、怒鳴らなくても手伝ってくれる分、とても有難い存在である。
ゆるゆると歩いては止まりを繰り返しながら考え事をしていると、奥の部屋から鼻をくすぐる良い香りが漂ってきた。
子犬のようにスンスンと鼻を動かしながらイーヴィンが奥の部屋へ入ると、そこはどうやらダイニングのようだった。
香りを漂わせていたのは、テーブルの上に用意された紅茶だったらしい。
一緒に添えられたクッキーを見て、イーヴィンの目がキラキラと輝く。途端にお腹がキュルリと鳴って、今更ながらにお昼を食べていないことに気がついた。
お腹に手を当てて立ち止まるイーヴィンに近寄ったシルキーは、その手からそっとトランクを取り上げるとどこかへ行ってしまった。
「え、ちょっと待って!」
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