乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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三章 一年目ふゆの月

29 ふゆの月25日、異国の王子様②

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 しばらくしてサワサワと衣擦れの音を立てて現れたシルキーは、控えめに言っても深窓のご令嬢としか思えない姿だった。
 女性の格好が恥ずかしいのか、白い頰をうっすらと朱に染めて俯く様子は、か弱い令嬢にしか見えない。思わず手を差し伸べたくなるような、儚さがあった。

「わぁ……さすが。白の貴婦人と言われるだけはあるねぇ」

 うっかり口を滑らせるイーヴィンに、シルキーは唇を尖らせて抗議した。
 けれど、女装している今は、可愛いだけである。
 イーヴィンは「ごめんごめん」と笑いながら謝った。それから小さな背を精一杯伸ばして彼の隣に立つと、紳士のように腕を差し出した。

「お手をどうぞ?」

 へへ、と笑う彼女は子リスのように愛らしい。
 シルキーは「仕方がないなぁ」と言いたげにしながらも、差し出された腕に素直に腕を絡めた。
 小柄な彼女相手だと、男性としては華奢なシルキーでも少々背を屈めないといけない。
 窮屈な体勢にシルキーは難儀したが、イーヴィンが嬉しそうに笑うものだから、結局は長々とその体勢で、家の中をぐるりと一周したのだった。

「はぁー……楽しかった!」

 二人してアベコベだと笑いながら、ダイニングでひとまず休憩する。
 女装姿は慣れないのか、お茶の用意をするシルキーはどこかぎこちない。見兼ねたイーヴィンはお茶の用意を代わり、彼を着替えに行かせた。

 シルキーが廊下へ出たところに、ドアがノックされた。丁寧なノックは聞き慣れないものだ。シルキーはノック一つだけでも誰が来たのか察知することができるのだが、今回は見知らぬ人らしい。

 彼は出ようか出まいか少し悩んで、イーヴィンが出るよりはこのまま自分が出るべきだと判断した。着替えを後回しにすると、玄関の扉を開く。

「失礼致します。こちらは、イーヴィン嬢のお宅でしょうか?」

 白髪混じりの執事然とした老人が、外に立っていた。
 丁寧にお辞儀をしながら確認してきた老人に、シルキーは訝しみながら頷く。

「そうでしたか。それは、良かった。本日は、我が主人あるじがこの島にしばらく滞在することになったので、ご挨拶に伺ったのです」

 そう言って、老人は一歩横に退いた。
 老人の後ろから現れたのは、やけにオーラの強い男だった。村人のような格好をしているが、オーラがちっとも隠しきれていない。世俗に疎い妖精のシルキーでさえ、この男はただの村人なんかじゃないと分かる。

 なんというか、いかにも上流階級といった風情で、全てが作り物のようなのだ。どこもかしこも手入れが行き届いた、お人形のようである。

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