乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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四章 一年目はるの月

41 はるの月14日、感謝祭⑤

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 慌てて振り向くと、迷彩柄のツナギを着たファーガルが、工具箱を持って立っている。

「なんだ、外にいたのか」

「ツリーハウスの点検をしていた」

「悪ぃな。作って貰った上に定期点検までしてもらっちゃって」

「構わない。ツリーハウスは作ってみたかったからな」

「え。ツリーハウス、ファーガルが作ったの⁈」

 ずずいと身を寄せて、キラキラと目を輝かせて見つめてくるイーヴィンに、ファーガルは「うっ」と呻いて後退った。
 相変わらず女性が苦手らしい彼に、イーヴィンは苦笑いを浮かべる。

「ごめんなさい、近かった?私ってば、弟がたくさんいるせいか、男の人との距離感が上手く掴めないのよね」

「ファーガルが硬派なだけだから、気にすんなよ」

 むむむ、と顔を顰めるイーヴィンの肩を、リアンは軽く叩いた。
 リアンの馴れ馴れしい仕草に、ファーガルが眉根を寄せて、いけないものでも見たような躊躇いの表情を浮かべる。

「リアン。女性を叩いたらいけないだろう」

「これくらい、普通だろ?じゃれてるだけじゃん」

「大丈夫だよ、ファーガル。言ったでしょう?私は牧場主で、か弱くないの。小さいからって甘くみてると痛い目をみるわよ?」

 アチョーと弟相手にするような武術家の真似事をしてみせたイーヴィンに、気を削がれたファーガルは一息吐くと「分かった分かった」と両手を挙げて降参のポーズを取った。

「それで?わざわざ俺に会いにくるような急用でもあったのか?」

「ファーガルよ……今日、感謝祭。女の子がわざわざ来る理由なんて決まってるだろ?」

「あぁ、感謝祭だったか。そういえば村の娘たちが朝から色々くれるなぁとは思っていたんだが……そうか、感謝祭だったんだな」

「うおぉ!この、天然鈍チン硬派野郎め!なんでモテるんだ、この顔で!オレの方が取っつきやすいし可愛いのに!まだブラウニーからしか貰えてない!」

 ファーガルのがっしりとした体によじ登り、リアンはわぁわぁと喚いた。
 肩にしがみ付いたリアンが体を揺すっても、ファーガルの体は微動だにしない。

(仲良しだなぁ)

「リアンの分もあるから。ファーガルにも持って来たから、降りてくれる?割れ物だから、そのままだと渡しづらい」

 イーヴィンがそう言うと、鬱陶しく喚いていたリアンは、キリリと顔を引き締めるとおとなしくファーガルから降りた。

(現金なやつ)

 そう思いながらも、渡す前から嬉しそうにされたらイーヴィンだって悪い気はしない。
 カゴから出したプリンを一つずつ、彼らに渡した。

「はい、どうぞ。いつも、ありがとう。これからもよろしくお願いします」

「わー!なにこれ、すげえ!可愛いー!」

「ミルク瓶か。こんな風にも使えるとは思わなかったな」

 二人それぞれ興味津々にミルク瓶プリンを眺めている。
 それを嬉しそうに見てから、イーヴィンは二人に見送られながらリアンの牧場を後にした。

「お昼の鐘が鳴る前に帰らないと」

 残るプリンはあと二つ。
 シルキーとイーヴィンの分である。

「今日のランチはなんだろう?魚かな?お肉かな?それともまさかのお豆かな?」

 呑気に自作の歌を口ずさみながら、イーヴィンは自宅へと急いだ。
 そうでもしないと、緊張に足が竦みそうだった。
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