乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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五章 二年目なつの月

55 なつの月6日、二度目の季節③

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「私たち、結婚するの。イーヴィンも、お祝いしてくれるかしら?」

 トドメとばかりにリサから言われて、イーヴィンは頭にゴンと鈍器が叩きつけられたような気分になった。
 イーヴィンの後ろで、シルキーが「おめでとう」とばかりにパチパチと拍手している。
 小さく手叩てばたきする様子は純真無垢な少女のようで、イーヴィンは可愛く見えて仕方がない。

(可愛いな、おい。だが、しかし!これで確実に婿候補が減った!ヤバイ、どうしよう!)

 シルキーの可愛らしさに思わず突っ込みつつ、イーヴィンは動揺した。

 実は、前世でイーヴィンはローナンを結婚相手に選んでいた。
 だからだろうか。イーヴィンは、リサに対して嫌な気持ちになった。
 それまで、彼女に嫌なことなど何一つされたことはなかったのに、ローナンの隣で幸せそうにしているのがズルイと思う。

(ローナンに対して好きとか思ってないし、恋なんてしていないのに。前世で旦那として選んだ人だったから、複雑なのかな?)

 自分のことなのに、よく分からない。
 おかしいなと首を捻っていると、いつまでも何も言わないイーヴィンに、ローナンとリサが不安そうな表情を浮かべた。

 どこか呆然としているイーヴィンの肩を、シルキーがこっそりと小突く。

「あ、ごめんなさい。突然のことで、ビックリしちゃって。二人とも、おめでとう。結婚式、楽しみにしてるよ」

 シルキーに小突かれて我に帰ったイーヴィンは、不器用に笑いながら祝いの言葉を口にした。

 言いながら、やっぱりおかしいと思う。
 だって普通、失恋したら胸が痛むものだろう。元夫を失ったのに、イーヴィンの胸はチクリとも痛まない。

(じゃあ、リサに対して思った気持ちは、なに?)

「そうだね。トントン拍子で上手くいったものだから、思っていたより早く結婚することになったけど……これで良かったと思う」

「ええ。私もそう思うわ」

 イーヴィンとシルキーがいるというのに、二人はあっという間に自分たちの世界へ旅立っているらしい。蜜月期間のカップル、恐るべし。

 腹黒似非爽やかなローナンがリサ相手にデレデレとしているのを、イーヴィンは発情期の雄猫を見るような迷惑そうな目で見た。
 呆れるほど甘ったるい視線を受けて、普段はクールなお姉さんのリサも、蕩けるような目で見つめ返している。

(いや、どう考えてもリサに取って代わりたいとは思わないわ。むしろ、リサに貰ってもらえて良かったとすら思うし。こんな癖のある男を好きになってくれてありがとう、リサ!ローナン元夫をよろしくお願いします!)

 これから招待状を配るという二人を見送って、イーヴィンは畑へ戻った。

 ローナンとリサの結婚に、異議はない。
 異議があるとすれば、独身のままかもしれない今後の人生である。

「畑が落ち着いたら、女神様に相談しよう」

 兎にも角にも、今は稼ぎ時なのだ。
 のんびりなんて、していられない。
 結婚するにも先立つものがいるし、独身生活なら尚更必要である。

「さぁて。ほらほら、カボチャさん、なつの暑さにバテている場合じゃないからね~」

 イーヴィンは、月末にウシを飼うことを目標に掲げ、いそいそと畑に水を撒いた。
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