乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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五章 二年目なつの月

56 なつの月12日、結婚式①

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 雲一つない、晴天の日だった。
 木々に囲まれた緑豊かな白亜の教会は、新たな門出を迎える二人を祝福する人々で溢れている。

 シルキーが用意してくれたクラシカルなデザインのワンピース姿で、イーヴィンはモアの隣に座っていた。

「そのワンピース、もしかしてビンテージ?」

 教会の中央には、既に牧師とローナンが待機していて、あとはリサを待つばかり。
 そんな中、興味津々といった様子で話しかけてきたモアに、イーヴィンは小声で答えた。

「さぁ?シルキーが用意してくれたから、よく分からないけど……」

「うわぁ……溺愛されてるねぇ」

「溺愛……?」

「わぁ、自覚なしか。まぁ、相手は妖精だしねぇ」

 カラカラと笑うモアに、イーヴィンは首を傾げた。

(溺愛、なのかなぁ?)

 確かに、距離は近い。
 けれどそれは、彼が妖精だからだろう。

 ワンピースを用意してくれたのも、彼が家事をする妖精だからだ。
 イーヴィンに似合うものを用意するのは、彼が敏腕だからであって、彼女を特別に思ってのことではない。

「皆さま、新婦のご入場です」

 司会者の厳かな言葉を合図に、教会の端でスタンバイしていたオルガン奏者が、華やかな演奏を披露する。
 イーヴィンもモアも慌てて居住まいを正し、新婦の入場を待った。
 固唾を飲んで教会の入り口を見つめる参列者の前で、ゆっくりと扉が開かれる。

「……ほぅ」

 教会のそこかしこから、感嘆の息が漏れる。
 開かれた扉の奥に、緊張をみなぎらせる父親と、その腕に寄り添うように純白のドレスを着たリサが立っていた。

「……素敵」

 それを見た瞬間、イーヴィンの胸を、何かがぶわりと満たした。
 なぜだか目頭が熱くなって、イーヴィンはパチパチと瞬きを繰り返す。
 幸せいっぱいで、胸がはち切れそうだ。

 真っ白なマーメイドラインのウエディングドレスは、足が長いスラリとした体型のリサによく似合っていた。
 緩くウエーブのかかっている金髪は結い上げられ、珊瑚や真珠で飾られている。人魚姫をイメージしているのかもしれない。

 リサが一歩、また一歩と歩くたびに、尾を引くように長いベールが、さらさらとバージンロードを流れていく。うっすらと青みかかった生地は、まるで波のようだ。

「綺麗……」

 隣を見れば、モアがハンカチを握りしめて泣いていた。真新しいハンカチは、既に涙でぐっしょりしている。
 イーヴィンよりもリサと仲が良かった分、感慨深いのかもしれない。

 父親の腕から、ローナンの腕に渡されたリサ。これから彼女は、彼の妻となる。

「いいなぁ」

「イーヴィンも、結婚願望があるの?」

 グスグスと鼻をすすりながら、モアは内緒話をするように小さな声で問いかけてきた。
 その目は、恋に興味津々な年頃の女の子らしく、期待にキラキラしている。

「いや、私は……」

 まさか、自分には婿候補が三人いて、一人は夜逃げ、一人は目の前で挙式中、一人はたぶんあなたが好きな人だと思う、なんて言えるわけもない。

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