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七章 二年目ふゆの月
89 ふゆの月30日、星まつり②
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『やぁやぁ。ぼくのかわいいしるきーくんは、どうしてそんなうれいのかおをしているのかな?』
『……』
『おやぁ?どうしたのかなぁ?ぼくがきいているのに、へんじがないぞぅ?』
『鬱陶しいですよ、妖精王』
顔を上げたシルキーは、まるで羽虫でも見るような目でテーブルの上の虫をーーではなく、小さな妖精王を見た。
彼はどんな大きさにもなれるのだが、今日は小さなサイズになっているらしい。
叩き潰したい気持ちを抑えて、シルキーは周囲を見渡した。
妖精王の隣には、ある条件の時以外は必ず、妖精の女王がいるからである。
『てぃたーにあはいないよ。ことしはまきおというやつのところへいっている』
『マキオ?』
聞き慣れない名前に、シルキーの片眉が上がる。
器用なものだと思いながら、妖精王はくるりと宙を舞った。
『おや、しらない?さいきん、おまえがかわいがってることよくいっしょにいるやつさ』
『イーヴィンと一緒に?リアンではなく?』
『そうさ。ふゆのつきになってから、かのじょはずっとあのおとこをおいかけている。まじょのでしとかいう、あやしいあのおとこをね』
『なんだって?』
ぎゅうと力を込めて眉間にしわを寄せるシルキーに、妖精王はわざとらしくキャアキャア騒ぎながら手を叩いて喜んだ。
おっとりとした深窓の令嬢のような気品ある顔が、これ以上ないくらいに醜く歪む様は、滑稽で愉快だったからだ。
『おおこわい。おまえもそんなかおをするんだねぇ、しるきー。てぃたーにあがおうえんするまでもなかったかな。すっかりおとこまえなかおになって。とおさんはうれしいよ。おーいーおいおい』
『鬱陶しいから泣き真似とかやめて下さい。それに、その喋り方。かわいこぶってますけど、気持ち悪いです』
シルキーの言葉に頬を膨らませて『プンプン』なんてしていた妖精王だったが、ブリザードの如き冷たい微笑を返されて口を閉じた。
ポンと音を立てて、妖精王は高身長の美丈夫になる。キラキラした妖精特有の鱗粉を纏う姿は、神々しい。
そうして見れば、麗しい妖精の女王と似合いである。
『我儘な子だねぇ。でも、いいのかい?イーヴィンが好きなんだろう?このままじゃ、マキオに取られてしまうかもしれないよ』
『……』
『だんまりかい。なぁ、どうして彼女を口説かない?好きなら好きだと告げなくちゃ、何にも始まらないじゃないか』
そう言って妖精の女王との馴れ初めという名の惚気話を始めた妖精王に、シルキーはげんなりと顔をしかめた。
幾分マシになった表情に、妖精王がニヤリと笑う。
『なぁ。妖精と人間が幸せになる物語があったっていいじゃないか。ティターニアだって、お前とイーヴィンが幸せになることを願っているのだよ。もちろん、僕もね』
『でも、彼女は……』
『男嫌い?そんなわけがあるか。万が一そうだったとして、男であるお前にキスをされて拒絶しない辺り、お前は例外ってことなんだろうよ』
それなりに好意がなければ、唇がくっつくほどの距離など普通は許さない。
つまり、イーヴィンはシルキーに対してそれなりの好意は抱いている。
妖精王はそう言いたいのだろう。
だが、マイナス志向の沼に浸かっている彼は、そんな妖精王の言葉にも否定的だった。
『僕は男と見なされていない』
『……お前、めんどくさいな』
オエーと舌を出して顔を顰める妖精王に、シルキーは辛気臭く不貞腐れた。
仕方がないなと肩を竦めながら、妖精王は楽しそうだ。
シルキーのお綺麗な顔が、コロコロと表情を変えるので、楽しくて仕方がないらしい。なんとも性格の悪い王様である。
『じゃあ、男だと知らしめたら良い』
『それで嫌われたら生きていけない』
『大丈夫だ。妖精はそんなことくらいで死なないから』
『知ってますよ。だから、困るんです』
『困る?どうして』
『……』
『おやぁ?どうしたのかなぁ?ぼくがきいているのに、へんじがないぞぅ?』
『鬱陶しいですよ、妖精王』
顔を上げたシルキーは、まるで羽虫でも見るような目でテーブルの上の虫をーーではなく、小さな妖精王を見た。
彼はどんな大きさにもなれるのだが、今日は小さなサイズになっているらしい。
叩き潰したい気持ちを抑えて、シルキーは周囲を見渡した。
妖精王の隣には、ある条件の時以外は必ず、妖精の女王がいるからである。
『てぃたーにあはいないよ。ことしはまきおというやつのところへいっている』
『マキオ?』
聞き慣れない名前に、シルキーの片眉が上がる。
器用なものだと思いながら、妖精王はくるりと宙を舞った。
『おや、しらない?さいきん、おまえがかわいがってることよくいっしょにいるやつさ』
『イーヴィンと一緒に?リアンではなく?』
『そうさ。ふゆのつきになってから、かのじょはずっとあのおとこをおいかけている。まじょのでしとかいう、あやしいあのおとこをね』
『なんだって?』
ぎゅうと力を込めて眉間にしわを寄せるシルキーに、妖精王はわざとらしくキャアキャア騒ぎながら手を叩いて喜んだ。
おっとりとした深窓の令嬢のような気品ある顔が、これ以上ないくらいに醜く歪む様は、滑稽で愉快だったからだ。
『おおこわい。おまえもそんなかおをするんだねぇ、しるきー。てぃたーにあがおうえんするまでもなかったかな。すっかりおとこまえなかおになって。とおさんはうれしいよ。おーいーおいおい』
『鬱陶しいから泣き真似とかやめて下さい。それに、その喋り方。かわいこぶってますけど、気持ち悪いです』
シルキーの言葉に頬を膨らませて『プンプン』なんてしていた妖精王だったが、ブリザードの如き冷たい微笑を返されて口を閉じた。
ポンと音を立てて、妖精王は高身長の美丈夫になる。キラキラした妖精特有の鱗粉を纏う姿は、神々しい。
そうして見れば、麗しい妖精の女王と似合いである。
『我儘な子だねぇ。でも、いいのかい?イーヴィンが好きなんだろう?このままじゃ、マキオに取られてしまうかもしれないよ』
『……』
『だんまりかい。なぁ、どうして彼女を口説かない?好きなら好きだと告げなくちゃ、何にも始まらないじゃないか』
そう言って妖精の女王との馴れ初めという名の惚気話を始めた妖精王に、シルキーはげんなりと顔をしかめた。
幾分マシになった表情に、妖精王がニヤリと笑う。
『なぁ。妖精と人間が幸せになる物語があったっていいじゃないか。ティターニアだって、お前とイーヴィンが幸せになることを願っているのだよ。もちろん、僕もね』
『でも、彼女は……』
『男嫌い?そんなわけがあるか。万が一そうだったとして、男であるお前にキスをされて拒絶しない辺り、お前は例外ってことなんだろうよ』
それなりに好意がなければ、唇がくっつくほどの距離など普通は許さない。
つまり、イーヴィンはシルキーに対してそれなりの好意は抱いている。
妖精王はそう言いたいのだろう。
だが、マイナス志向の沼に浸かっている彼は、そんな妖精王の言葉にも否定的だった。
『僕は男と見なされていない』
『……お前、めんどくさいな』
オエーと舌を出して顔を顰める妖精王に、シルキーは辛気臭く不貞腐れた。
仕方がないなと肩を竦めながら、妖精王は楽しそうだ。
シルキーのお綺麗な顔が、コロコロと表情を変えるので、楽しくて仕方がないらしい。なんとも性格の悪い王様である。
『じゃあ、男だと知らしめたら良い』
『それで嫌われたら生きていけない』
『大丈夫だ。妖精はそんなことくらいで死なないから』
『知ってますよ。だから、困るんです』
『困る?どうして』
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