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九章 三年目なつの月
106 なつの月14日、告白の練習③
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しばらく喜びのダンスのようにクルクル回ってから、シルキーはイーヴィンを下ろした。
それから彼女の前に跪いて、恭しく持ち上げた手の甲にキスを落とす。
生まれて初めてのお姫様扱いに嬉しいやら恥ずかしいやらで顔を真っ赤にする彼女を、シルキーは抱き上げた。いわゆる、お姫様抱っこで。
イーヴィンも、お姫様抱っこへの憧れはあったのか、最初こそ驚いた顔をしたものの、すぐに嬉しそうな顔をして彼の首へ腕を回す。
そうして向かったのは、シルキーの部屋だった。
同じ家に住んでいるのに、初めて見る彼の部屋に、イーヴィンはキョロキョロと興味津々な様子で見回す。
彼女の部屋より少し狭い部屋には、男性用の大きめのベッドとチェストしかない。天井から吊り下がったハーブは、彼らしかったけれど。
ベッドの上に優しく降ろされて、イーヴィンはドキリとした。
シルキーとしては座る所がベッドしかなかったのでそこへ降ろしただけだが、彼女はそうは思わなかったらしい。
可愛らしく頬を染め、戸惑うように見上げてくる様に、シルキーの理性がグラグラする。
だけど、今はダメだ。
シルキーは今にも引き千切れそうな理性を手繰り寄せ、なんとか耐える。
そして、彼女の首にかけられた、ネックレス型の薬瓶に手を伸ばした。
首に触れるシルキーの手に、イーヴィンがピクリと体を震わせる。
だが、彼が何をしようとしているのか気付いて、イーヴィンはそっと頭を下げた。
薬瓶には、薬が入っている。
魔女から貰った、魔法のくすり。
シルキーの言葉を聞けるようにする薬だ。
イーヴィンは薬瓶を受け取り、一気に煽った。小さな薬瓶の中身は、一瞬で彼女の中に流れていく。
『ーーイーヴィン?』
聞く、というより届く、という感覚だった。
初めて届いたシルキーの言葉は、とても甘くて優しい響きをしている。
『僕の言葉、届いてる?』
「うん。とっても素敵な声。甘くて、優しくて、落ち着くの。好きよ、私」
『僕も、イーヴィンの声が大好きです』
「そっか」
照れ臭そうに笑い合って、今の幸せを噛み締める。
満足そうに呼気を漏らして、シルキーはイーヴィンの隣へ座った。
『ねぇ、イーヴィン。動物小屋で言っていたことは、本当?』
真剣な表情で聞いてくるシルキーに、イーヴィンは黙った。
だが、聞かれていたなら今更である。
彼女は、観念するように答えた。
「……全部、本当」
『そう、ですか。イーヴィンは、僕と、子供を作りたいと思ってくれているんですね。それも、たくさん……』
「そうよ!たくさんいたら、世話が大変で、寂しく思う暇もないでしょう?」
もしも私が死んでも、とは言えなかった。
そんな雰囲気でないことは、イーヴィンだって分かっている。
ヤケクソのように言うイーヴィンに、シルキーがクスクス笑う。
なんて可愛いんだろう。
そして、なんて素晴らしい女性なんだろう。
シルキーよりもずっとずっと年下の彼女は、彼が寂しくないようにたくさんのプレゼントをくれるらしい。
シルキーは、そんな彼女に応えたくてたまらない。
『そう……たくさん、ね』
いつもしっとりとしている唇が、興奮に少し乾いていた。
シルキーは、乾きを癒すように唇を舐める。
たったそれだけのことなのに、イーヴィンにはやけに艶めいて見えて、無意識に太腿を擦り合わせた。
『ねぇ、イーヴィン。僕は妖精で、君は人間で、種族が違う。もしかしたら、すぐに子供はできないかもしれない』
「うん」
たくさんなんて言ったけれど、どれだけ産めるかなんてイーヴィンにだって分からない。
もしかしたら、一人も授からないかもしれないのだ。
シルキーの言葉にしょんぼりと眉を下げるイーヴィンに、彼は『でもね』と続ける。
『でもね、君が望むなら、僕は頑張ろうと思うんです。だからね、イーヴィン。君も一緒に頑張って。たくさん頑張ったら、きっとすぐですよ』
「たくさん……?すぐ……?」
聞き捨てならないことを言いながら、シルキーはイーヴィンの首筋を指でくすぐってくる。
触れるか触れないかという絶妙な触れ方をしてくる指先に、彼女はゾクゾクと体を震わせた。
『大丈夫。シルキーは手先が器用ですから、きっとご満足頂けると思います』
(なんだ、この色気は!一体どこに隠していたんだぁぁぁぁ!)
淑女のようだと思っていた妖精は、とんでもない男だったらしい。無邪気を装って言っているが、その内容はえげつない。
色々未経験のイーヴィンに、毎日無体なことをしちゃうぞ、と言っているのである。
溜めに溜めまくった彼女への恋情は、夜のご奉仕と言う名の欲に変換されたらしい。
ご愁傷様としか言いようがない。
イーヴィンの脳裏に『昼は淑女、夜は娼婦』という言葉が 過ぎる。
初キスの恐怖を思い出した彼女は、怯えを滲ませてシルキーを見た。
『お願い、イーヴィン。大事にするから、愛させて』
コテンと小首を傾げてお願いするシルキーは、とても美しい。
計算され尽くした仕草は高貴なお姫様のように優雅で、その麗しさにイーヴィンはうっとりとため息を吐いた。
(うぅ……卑怯よ)
今更か弱いお姫様ぶられても困る。
しかし、好きな人に求められて否やと言えるほど、イーヴィンは恋愛経験豊富ではなかった。
急展開に戸惑いながらも、彼女は覚悟を決めてシルキーの胸に飛び込む。
覆いかぶさってくる淑女の皮を被った狼に、イーヴィンは「大好きよ」と囁いた。
それから彼女の前に跪いて、恭しく持ち上げた手の甲にキスを落とす。
生まれて初めてのお姫様扱いに嬉しいやら恥ずかしいやらで顔を真っ赤にする彼女を、シルキーは抱き上げた。いわゆる、お姫様抱っこで。
イーヴィンも、お姫様抱っこへの憧れはあったのか、最初こそ驚いた顔をしたものの、すぐに嬉しそうな顔をして彼の首へ腕を回す。
そうして向かったのは、シルキーの部屋だった。
同じ家に住んでいるのに、初めて見る彼の部屋に、イーヴィンはキョロキョロと興味津々な様子で見回す。
彼女の部屋より少し狭い部屋には、男性用の大きめのベッドとチェストしかない。天井から吊り下がったハーブは、彼らしかったけれど。
ベッドの上に優しく降ろされて、イーヴィンはドキリとした。
シルキーとしては座る所がベッドしかなかったのでそこへ降ろしただけだが、彼女はそうは思わなかったらしい。
可愛らしく頬を染め、戸惑うように見上げてくる様に、シルキーの理性がグラグラする。
だけど、今はダメだ。
シルキーは今にも引き千切れそうな理性を手繰り寄せ、なんとか耐える。
そして、彼女の首にかけられた、ネックレス型の薬瓶に手を伸ばした。
首に触れるシルキーの手に、イーヴィンがピクリと体を震わせる。
だが、彼が何をしようとしているのか気付いて、イーヴィンはそっと頭を下げた。
薬瓶には、薬が入っている。
魔女から貰った、魔法のくすり。
シルキーの言葉を聞けるようにする薬だ。
イーヴィンは薬瓶を受け取り、一気に煽った。小さな薬瓶の中身は、一瞬で彼女の中に流れていく。
『ーーイーヴィン?』
聞く、というより届く、という感覚だった。
初めて届いたシルキーの言葉は、とても甘くて優しい響きをしている。
『僕の言葉、届いてる?』
「うん。とっても素敵な声。甘くて、優しくて、落ち着くの。好きよ、私」
『僕も、イーヴィンの声が大好きです』
「そっか」
照れ臭そうに笑い合って、今の幸せを噛み締める。
満足そうに呼気を漏らして、シルキーはイーヴィンの隣へ座った。
『ねぇ、イーヴィン。動物小屋で言っていたことは、本当?』
真剣な表情で聞いてくるシルキーに、イーヴィンは黙った。
だが、聞かれていたなら今更である。
彼女は、観念するように答えた。
「……全部、本当」
『そう、ですか。イーヴィンは、僕と、子供を作りたいと思ってくれているんですね。それも、たくさん……』
「そうよ!たくさんいたら、世話が大変で、寂しく思う暇もないでしょう?」
もしも私が死んでも、とは言えなかった。
そんな雰囲気でないことは、イーヴィンだって分かっている。
ヤケクソのように言うイーヴィンに、シルキーがクスクス笑う。
なんて可愛いんだろう。
そして、なんて素晴らしい女性なんだろう。
シルキーよりもずっとずっと年下の彼女は、彼が寂しくないようにたくさんのプレゼントをくれるらしい。
シルキーは、そんな彼女に応えたくてたまらない。
『そう……たくさん、ね』
いつもしっとりとしている唇が、興奮に少し乾いていた。
シルキーは、乾きを癒すように唇を舐める。
たったそれだけのことなのに、イーヴィンにはやけに艶めいて見えて、無意識に太腿を擦り合わせた。
『ねぇ、イーヴィン。僕は妖精で、君は人間で、種族が違う。もしかしたら、すぐに子供はできないかもしれない』
「うん」
たくさんなんて言ったけれど、どれだけ産めるかなんてイーヴィンにだって分からない。
もしかしたら、一人も授からないかもしれないのだ。
シルキーの言葉にしょんぼりと眉を下げるイーヴィンに、彼は『でもね』と続ける。
『でもね、君が望むなら、僕は頑張ろうと思うんです。だからね、イーヴィン。君も一緒に頑張って。たくさん頑張ったら、きっとすぐですよ』
「たくさん……?すぐ……?」
聞き捨てならないことを言いながら、シルキーはイーヴィンの首筋を指でくすぐってくる。
触れるか触れないかという絶妙な触れ方をしてくる指先に、彼女はゾクゾクと体を震わせた。
『大丈夫。シルキーは手先が器用ですから、きっとご満足頂けると思います』
(なんだ、この色気は!一体どこに隠していたんだぁぁぁぁ!)
淑女のようだと思っていた妖精は、とんでもない男だったらしい。無邪気を装って言っているが、その内容はえげつない。
色々未経験のイーヴィンに、毎日無体なことをしちゃうぞ、と言っているのである。
溜めに溜めまくった彼女への恋情は、夜のご奉仕と言う名の欲に変換されたらしい。
ご愁傷様としか言いようがない。
イーヴィンの脳裏に『昼は淑女、夜は娼婦』という言葉が 過ぎる。
初キスの恐怖を思い出した彼女は、怯えを滲ませてシルキーを見た。
『お願い、イーヴィン。大事にするから、愛させて』
コテンと小首を傾げてお願いするシルキーは、とても美しい。
計算され尽くした仕草は高貴なお姫様のように優雅で、その麗しさにイーヴィンはうっとりとため息を吐いた。
(うぅ……卑怯よ)
今更か弱いお姫様ぶられても困る。
しかし、好きな人に求められて否やと言えるほど、イーヴィンは恋愛経験豊富ではなかった。
急展開に戸惑いながらも、彼女は覚悟を決めてシルキーの胸に飛び込む。
覆いかぶさってくる淑女の皮を被った狼に、イーヴィンは「大好きよ」と囁いた。
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