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終章 三年目あきの月、改め9月
108 9月23日、次の花嫁②
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額を押さえながら、足元に落ちたブーケを拾う。
顔を上げたその先。教会の入り口で、モアが手を叩いて喜んでいる。
「ふふふっ!次の花嫁はあなたね、イーヴィン!」
果たして意図的に投げられたブーケにご利益はあるのだろうかとイーヴィンは思った。
そんな彼女の隣では、礼服に身を包んだシルキーが、締まりのない顔で甘ったるい微笑みを浮かべながら『了解しました』とばかりにモアへ手を振っている。
シルキーは牧場の敷地内から出ない妖精だが、家ではなくイーヴィンに付いたことで敷地外にも出られるようになっていた。
おかげで外でデートが出来るようになったので、イーヴィンは嬉しい。
つい先日なんて、からかってきた定期船の船長に自慢してしまったくらいだ。
『ねぇ、イーヴィン。ウエディングドレスはどんなのが良いですか?あなたは脚が綺麗だから、思いきって短めのドレスも素敵かもしれない』
「そうねぇ。私としては、シルキーもウエディングドレスを着せたいくらいなんだけど」
思い出すのは、初めての星まつりの日。
姉妹のような格好をしたのは、とても素敵な思い出である。
(シルキーは男性にしては華奢だから、スレンダーラインのドレスも良いかもしれないわ。肩をちょっと隠すようにチュールとか使って……)
花嫁姿のシルキーを想像して楽しそうにしているイーヴィンに、彼は面白くない。
恋人として濃密な毎日を送っているのに、彼女はまだ女扱いをしてくるのである。
これは分からせないといけないなと彼が思うのは、当然のことだった。
『……イーヴィン』
シルキーの声が、低くなる。
怒っているのかと隣を見れば、見せつけるように邪悪な笑みを浮かべる彼がそこにいた。
美人がそんな顔をすると、凡人がするよりも大迫力である。
「な、なにかな、シルキーくん」
『僕は、男です。今夜は嫌と言うほど分からせてあげますので、楽しみにしていて下さいね』
宣戦布告するように軽く唇を啄ばんでくるシルキーに、イーヴィンは慌てて謝るがもう遅い。
今夜こそコウノトリがきますかね、なんて宣うシルキーに顔を真っ赤にしながら、イーヴィンは顔を隠すように彼の背中をポカポカと叩いた。
ベッタベタのバカップルな二人に、周囲が生暖かい視線を向けたのは言うまでもない。
「まぁまぁ、見まして?次の花嫁はあの子でしてよ!」
「ほう。それはそれは」
「めでたいわねぇ」
天上の神々が、下界を見下ろしてコロコロと笑う。
「そうねぇ。では、ちょっと早いけれど、神々から祝福を」
女神からは、末永き幸せを。
姉神からは、末永き愛を。
兄神からは、末永き人生を。
三柱の神から祝福を受けて、ほんの一瞬だけイーヴィンが淡く光り輝く。
「でも、来世はいらないなんて、本当に良いのでしょうか?彼女には、聖女の素質がありますのに」
「出来る限り寿命を伸ばせ、出来ないなら一年を十二ヶ月にしろって願いは予想外だったわ。まぁ、叶えたけど」
「なんだ。私は意図せず寿命を延ばしてしまったのか。そのうち彼女に伝えに行ってやろう」
「兄様は彼女の前に現れないで下さい。彼女が穢れます」
もっと罵ってくれと縋る兄神を、ナメクジをみるような目で見る女神。
そんな二人を放置しながら、姉神は次なる出会いのためにせっせと爪を磨く。
今日も、神々は自分勝手で。
今日も、天上は相変わらずである。
顔を上げたその先。教会の入り口で、モアが手を叩いて喜んでいる。
「ふふふっ!次の花嫁はあなたね、イーヴィン!」
果たして意図的に投げられたブーケにご利益はあるのだろうかとイーヴィンは思った。
そんな彼女の隣では、礼服に身を包んだシルキーが、締まりのない顔で甘ったるい微笑みを浮かべながら『了解しました』とばかりにモアへ手を振っている。
シルキーは牧場の敷地内から出ない妖精だが、家ではなくイーヴィンに付いたことで敷地外にも出られるようになっていた。
おかげで外でデートが出来るようになったので、イーヴィンは嬉しい。
つい先日なんて、からかってきた定期船の船長に自慢してしまったくらいだ。
『ねぇ、イーヴィン。ウエディングドレスはどんなのが良いですか?あなたは脚が綺麗だから、思いきって短めのドレスも素敵かもしれない』
「そうねぇ。私としては、シルキーもウエディングドレスを着せたいくらいなんだけど」
思い出すのは、初めての星まつりの日。
姉妹のような格好をしたのは、とても素敵な思い出である。
(シルキーは男性にしては華奢だから、スレンダーラインのドレスも良いかもしれないわ。肩をちょっと隠すようにチュールとか使って……)
花嫁姿のシルキーを想像して楽しそうにしているイーヴィンに、彼は面白くない。
恋人として濃密な毎日を送っているのに、彼女はまだ女扱いをしてくるのである。
これは分からせないといけないなと彼が思うのは、当然のことだった。
『……イーヴィン』
シルキーの声が、低くなる。
怒っているのかと隣を見れば、見せつけるように邪悪な笑みを浮かべる彼がそこにいた。
美人がそんな顔をすると、凡人がするよりも大迫力である。
「な、なにかな、シルキーくん」
『僕は、男です。今夜は嫌と言うほど分からせてあげますので、楽しみにしていて下さいね』
宣戦布告するように軽く唇を啄ばんでくるシルキーに、イーヴィンは慌てて謝るがもう遅い。
今夜こそコウノトリがきますかね、なんて宣うシルキーに顔を真っ赤にしながら、イーヴィンは顔を隠すように彼の背中をポカポカと叩いた。
ベッタベタのバカップルな二人に、周囲が生暖かい視線を向けたのは言うまでもない。
「まぁまぁ、見まして?次の花嫁はあの子でしてよ!」
「ほう。それはそれは」
「めでたいわねぇ」
天上の神々が、下界を見下ろしてコロコロと笑う。
「そうねぇ。では、ちょっと早いけれど、神々から祝福を」
女神からは、末永き幸せを。
姉神からは、末永き愛を。
兄神からは、末永き人生を。
三柱の神から祝福を受けて、ほんの一瞬だけイーヴィンが淡く光り輝く。
「でも、来世はいらないなんて、本当に良いのでしょうか?彼女には、聖女の素質がありますのに」
「出来る限り寿命を伸ばせ、出来ないなら一年を十二ヶ月にしろって願いは予想外だったわ。まぁ、叶えたけど」
「なんだ。私は意図せず寿命を延ばしてしまったのか。そのうち彼女に伝えに行ってやろう」
「兄様は彼女の前に現れないで下さい。彼女が穢れます」
もっと罵ってくれと縋る兄神を、ナメクジをみるような目で見る女神。
そんな二人を放置しながら、姉神は次なる出会いのためにせっせと爪を磨く。
今日も、神々は自分勝手で。
今日も、天上は相変わらずである。
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こちらの作品も読んでくださってありがとうございます!嬉しいです。
私も、こんなのんびりした世界でシルキーに構われながらほっこり生活したいです(笑)
ご指摘の樹木の成長についてですが、正しくは『一年』ですね。盛大に間違えたままにしていて、焦りました。教えていただき、ありがとうございます。
成長については、当然ながら異世界の人たちは疑問に思っていないということが前提になるのですが。恐ろしいことに、 大人とされる十六歳になるまで、前世の時間に換算すると五、六年程度になります。
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