勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、立ち塞がる

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「こ、ここが噂のダンジョンかぁ~」

 ガリウスと名乗った先輩冒険者の後をついていった先――
 そこにあったのは英雄譚でしか読んだことがない、栄光と破滅へ誘う奈落。
 迷宮、もしくはダンジョンと呼ばれる場所だった。
 冒険者ギルドがあるほどこの街が栄えてるのはこのダンジョンの存在が大きい。
 ここは本当に不思議な所で、ダンジョン内では様々な妖魔が自然に湧き出て来る者に牙を剥く。
 その半面、現在の技術では到底再現できない武具や、精錬された鉱石等が手に入る宝物庫でもある。
 だからこそ――冒険者は夢を求め、ダンジョンに挑むんだ。

「何をしてる? 置いていくぞ」
「は、は~い!」

 感無量で身を震わせるボクだったが、ガリウスは苛立ち気に舌打ちすると迷宮の入口へと向かう。
 遅れないようボクは慌ててついていく。
 とそこまで来て、ボクはハタッと気付いた。
 先程も述べたが――ダンジョンは危険な場所。
 ライセンスが無いと入ることすら出来ない。

「あ、あの~ガリウスさん」
「なんだ?」
「ボク、まだライセンスを……」
「――ああ、心配するな」
「うえ?」
「お前はオレのポーターとして話を通す」
「ポーター?」
「荷物持ちさ。
 未熟な者でも、それなら同行しても良いと定められている」

 ――ボクだって戦えるのに。
 不満はあったが、グッと堪えた。
 せっかく先輩冒険者がダンジョンへ同行させてくれるのだ。
 この機会を逃すのはお馬鹿さんだろう。
 すっかり手になじんだ剣に触れながら彼の後を続く。
 う~緊張する。
 ドキドキに揺れる心臓。
 焦燥からか、少し足取りが重い。
 もう数歩でダンジョンの入口――
 というタイミングで、ガリウスが突如尋ねてくる。

「――アレク」
「うひゃい!?」
「お前の持つ剣だが……どこで手に入れた?」
「あ、これですか?
 嘘か真か真偽は分からないんですけど……
 ウチの先祖に騎士だった人がいて、これはその人が使っていたものらしいです。
 納屋の奥底に眠ってたのをボクが発見しました!」
「そうか……
 ふん、そういうこともあろう」

 この剣の由来を話すボクだったが、ガリウスはまるで興味なそうに受付の番人へ自身のライセンスを指し示す。
 その後はボクを指差し何か説明している。
 きっと彼がさっき言っていたポーターとして同行する事だろう。
 ボクはちょっとがっかりしながら様子を窺う。
 早く一人前と認められてほしいからと焦っちゃ駄目だ。
 だからこれはきっと気のせいに違いない。
 彼と番人の間で――何かいやらしい笑いと取引があったように見えたのは。



 





 その後は順調だった。
 襲い来る下等妖魔をガリウスは片っ端から撃破していく。
 さすがはD級、安定した強さだ。
 ほぼソロでも地下一階程度に出る妖魔では苦にもならない。
 ボクの仰せつかった役目は、落ちたドロップ品の回収だ。
 彼から渡されたズタ袋の中にドンドンと詰め込んでいく。
 そんな単純作業を続け地下二階に達した時――

「人気もないし――そろそろいいか」

 淡々としたその言葉に反応出来たのは奇跡に近い。
 魔石を回収しようとしゃがんだ瞬間、突如ガリウスに斬り付けられたボク。
 咄嗟に後方へジャンプし直撃を避ける。
 まさに紙一重。
 でも薄皮一枚を残し服が斬り裂かれてしまう。

「ほう……なんだ、お前。
 女だったのか」
「だからなんだ!」
「いや、なに――
 女なら女で、殺す前に楽しめると思ってな」
「! 何で――
 どうしてこんな事をするんだ!?」

 下着も一緒に裂かれた為、成長段階の胸が晒された羞恥よりも激しい怒りがボクを支配する。
 なんで――なんで仲間を襲うような真似を!

「お前が初心者――新人だからだよ」
「――え?」
「ダンジョン深部で危ない橋を渡るより、お前の様な未熟なルーキーをカモにした方が稼げるのさ。
 幸いダンジョンでは死が日常だ。
 誰が死んでも気にする者もいないし、おあつらえ向きに死体も消え去る」
「な、なんて卑劣な――」
「――卑劣? オレがか?
 この阿呆が――
 計算高い、といえ。
 時折湧いて出るお前の様な奴等を喰いものにした方が効率がいいだろう?
 目障りなんだよ、お前らみたいなのが。
 どいつもこいつも希望に溢れた顔をしやがって――
 見てるだけで虫唾が奔る――」

 吐き捨てる様に呟き近付くガリウス。
 ボクは迎撃しようと剣を握り締め――抜き放つ事無くその場に崩れ落ちる。
 な、なんだこれ……身体が……身体が利かない!?

「ようやく効いてきたか」
「ど、どういう……こと……」
「さっき迷宮に潜る前にくれてやったレモン水。
 あの中に遅効性の痺れ薬を混ぜておいたんだよ。
 そんな事にも気付かずガブ飲みするとはな――」
「そ、そんな……」
「親切だと思ったか?
 ――馬鹿が。
 最後の授業料だ。
 他者から施される無償の善意には裏があると思え。
 それが弱肉強食の掟だろう?
 ふん……気が萎えたし、面倒だ。
 楽しむ事は止めてさっさとお前を始末するか。
 お前の持つ剣は古びてるが魔力付与がされている値打ちものだ。
 オレが売り捌いて有意義に使ってやるさ――」
 
 人を殺す事に何の感慨も抱かず剣を振り上げるガリウス。
 こんなところで、ボクは終わっちゃうの?
 まだ――何もしてないのに――
 何も――為せてないのに――
 やだ、やだやだやだやだ! 嫌だよぉ!
 心の中で泣き叫ぶも――現実は非情だ。
 鈍い音を立てて剣が迫る。
 だから――これから先の事は都合の良い夢なのだろう。
 瞬間移動のように突如現れた人が――
 勇壮とガリウスの凶刃を跳ね返し――
 まるでお姫様を守る勇者の様に、ボクの前に立ちはだかってくれるなんて!

「そこまでにするんだな……」

 ヒロイックサーガみたいなタイミングでボクの前に現れたのは――
 ボサボサの黒髪に無精ひげ。
 紫水晶のように煌めく瞳が印象的な――もう一人のおっさんだった。



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