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おっさん、無双する
しおりを挟む「もう安心していいぞ、お前ら」
ボロボロになっている三人を庇いながら俺は声を掛け微笑む。
――間に合って良かった。
――生きててくれた。
単純なその事に、俺は心の底から安堵する。
涙を零しながら俺を見つめてくるあいつらの顔。
苦労を重ね、それでいながら成長したであろう三人の顔が今は眩しく愛おしい。
しかし反面――ここまでこいつらを追い詰めた奴等に対する怒りが、紅蓮の炎のごとく湧き上がってくる。
落ち着け、俺。
冷静になれ――
不慣れな魔術の連続発動と憤怒に激しく脈打つ胸。
内心の激情を悟られないよう深い息吹と共に、俺は状況を探る。
敵は道化師姿のふざけた男他、多数。
周囲に散らばる妖魔の断片と殲滅戦の様相。
法術遣いである聖女がいながら対応しきれていない要因。
更には先程から俺へ虎視眈々と迫る魔力の断片。
結果――判明。
油断なく道化師を見据えながら俺は愛剣を一閃。
魔力を纏わせたその剣風は三人を縛っていた魔力糸を全て断ち切る。
「お、おっさん……」
「ガリウス……」
「ガリウス様、どうして……」
「詳しい話は後だ。
今はもう動けるな?」
「うん……」
「ん。」
「はい、可能です」
「なら回復後にバックアップを頼む。
事情は分からんが――こいつらを野放しに出来ん。
ここで完全に殲滅させるぞ!」
「「「はい!」」」
頼もしい三人の返答を背に俺は全力で前へ駆ける。
最初に接敵したのは異形の羽を持つもの、悪魔だ。
異界からの招かれざる住人であるこいつらは、存在強度の差を利用した【位階】と呼ばれる結界を纏う。
すなわち低位なる存在からのダメージを軽減、更には魔術すら無効化する。
よって通常の攻撃は結界に阻まれ有効打に成り得ない。
ならばどうするか?
決まっている――
魔力と武技、その双方を同時に結界を超える出力で叩き付けるのみ!
俺をただの戦士と侮り、易々と接敵を許す悪魔。
なのでこれ幸いとばかりに全力で剣を振るいながら俺は呟く。
こんなこともあろうかと。
それは俺が誇る唯一のユニークスキルのコマンドワード。
俺の言葉に応じ【自由に閉まって出し入れ便利】が発動する。
掌大のものを同種99個、99種類自由に出し入れするだけの収納型スキル。
勿論これだけでも充分便利だ。
戦闘時の有用性については以前述べた。
だが――俺はスキル所持が判明以後、常々疑問に思っていた。
この掌大というのは何を以て判別されるのだろう?
重さなのか?
形なのか?
大きさなのか?
凡人である俺は常に自らを鍛え技術を磨かなくてはならない。
紆余曲折、試行錯誤の末に判明したのは――
このスキルは重さを基準とし俺が可能と認識したものを収納できるのだ。
通常ならその有用性に喜ぶのみ。
しかし――俺は更にスキルを研鑽した。
俺が重さ可能と認識するもの――ならば魔術はこれに入らないのか?
魔力が拙い俺が発動させた各基本属性魔術――それは現象であり重さは0だ。
継続時間、威力、効果範囲など。
多岐に渡るパラメーターを弄れるも単体では戦闘に役に立たない魔術。
だがそれを複数収納し、しかも同時に発動させればどうなるか?
その答えが――これだ。
収納された風の基本魔術【風華】が発動。
俺の剣先を起点とし『切断力』のみに特化させた【風華】を――
同時に、99個解放する。
これこそ俺の得意技――剣術と魔力の融合技――
「魔現刃(マギウスブレード)――【裂空】!」
その一撃は、位階を過信した悪魔を、その結界ごと斬り裂き両断した。
格上がいつも浮かべる、何が起きたかの分からないという顔をしたまま消え去っていく悪魔の脇を駆け抜ける。
次に向かうは野盗や邪教信者と思しき集団。
俺を敵と認めたのか半円状に囲みながら向かってくる。
好都合だ。
近くに仲間がいては使えない技もある。
「魔現刃――【驟雨】!」
横溜めに構え振り抜いた剣から発動するのは水の基本魔術【流水】。
中でも貫通力と噴出力に特化させたものを混ぜ合わせ同時に発動する。
凄まじい反動と共に解き放たれたそれは雨のように細かい無数の槍。
瞬く間にそれは野盗らの体を構成する骨格を穿ち、肉をこそぎ落とし貫いていく――こうなればいくら操り人形とはいえ役に立たない。
通常では使用を躊躇われるようなほど残虐な技。
しかし相手が骸――
さらにこいつらを護る為なら、俺はいくらでも非情になれる。
最後に向かった先にいるのはワイバーン3匹。
腐敗した体からは臭気が漂い、こちらに向かいブレスを吐こうとしている。
奴等が死して蓄えたであろうメタンガスを混じえた猛毒のブレス。
喰らえば無論、無事ではすまない。
だが俺にとってはそれすら好機。
着火の火種をこちらから送り出し、自爆させてやる!
「魔現刃――【烈火】!」
長い鞭のようにしなった炎を纏った斬撃がワイバーンの首を薙ぐ。
パクリと裂かれ開いた喉――
一瞬の停滞の後、ワイバーン達は大爆発を起こす。
結果を見届けた俺は残心を怠らぬまま道化師に向かい合う。
「おっさん凄すぎ……」
「無双。惚れる」
「もう――ガリウスさまだけでいいんじゃありません?」
回復しながら呟く、どこか呆れたような三人の声援を背に。
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