勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、苦笑する

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「お~いリア。
 どうだ、調子の方は?」

 村外れにある質素な水車小屋。
 日も暮れて夕方になり、ある程度シアとフィーの作業が落ち着いたところで、俺はポーション精製に励むリアの様子を窺いにやってきた。
 声を掛け、軽いノックと共に小屋に入る。
 その瞬間、俺の鼻腔を襲撃するのは――
 物理的な圧力さえ伴う、途轍もない臭気。
 俺は意識して口呼吸をしながら作業に取り組むリアに近付く。
 余程集中しているのか、リアは俺の姿に気付かないようだ。
 熱心に火に掛けた大鍋を掻き回し続けている。
 灰汁が出ては匙で掬い捨て、温度が上がれば材料を小まめに投下し一定の温度と量を保つよう調整する。
 大鍋の中にはドロドロになった緑色の液体がおぞましい顔を覗かせている。
 よくお伽話の魔女とかが作ってそうな、如何にもアレな中身だ。
 鼻をつく臭気と併せ、これには無論理由がある。
 ポーションの原材料は野生の薬草である。
 これを乾燥させ擦り卸し、根気強く煮詰めるのが簡単なポーションの精製だ。
 実際は幾つもの複雑な工程があり、その良し悪しによって生成されるポーションのランクも違ってくる。
 しかし――この作業には問題が多々見受けられた。
 その最たるものが臭気である。
 山歩きなどの経験がある人はすぐ分かると思うが、野生の草花は害虫除けの為などの理由もあるのか臭気が強いものが多い。
 薬効成分があるものなら尚更だ。
 活きの良いそれらを採取し、擦り卸した上で煮込むのである。
 調合過程で立ち昇る、何とも言えない青臭さはポーション生成の天敵だろう。
 無論対処法も色々あり……魔術を使う、作業時心を無にするなど多岐に渡る。
 ただ作成者は良くても周囲の人々は違う。
 誰だってこんな悪臭の中で生活はしたくない。
 それ故にポーション職人は儲かるが僻地へと追いやられるのだ。
 簡易ポーションなら俺も自力生成可能なので、以前村で挑戦した事がある。
 あの時は本当に参った。
 精製の過程で臭いが完全に身体へ浸み付いてしまって取れず、友好的な村人たちですら二日も近付いてくれなかった。
 っていうか完全にバイキン扱いだったな。
 今となっては苦笑するしかない思い出である。
 作業を眺める俺の影で気付いたのだろう。
 リアが振り返り俺の姿を認める。

「ガリウス……気付かなかった」
「一応、声は掛けたんだけどな――
 どうだ、調子は?」
「お陰様で順調。
 後は自然冷却を待って瓶に詰めるだけ」
「やっぱり専属スキル持ちは違うな。
 俺が以前チャレンジした時はもっと時間が掛かったよ」
「それでも作れるだけ凄い。
 ポーション生成は本来、錬金術師の技術にカテゴリーされる。
 賢者ならまだしも――戦士でそこまで出来るのは規格外」
「まあ弛まぬ研鑽の成果、ってやつだ」
「そういえば――
 時間の合間を縫って、回復以外のポーションも作ってみた」
「お、さすが魔導学院の最年少賢者。
 どんなのか聞いてもいいか?」
「精力剤」
「……え~と、リアさん?」
「飲むだけで絶倫。
 枯れた老人でも忽ち元気になる優れもの。
 夜の生活のお供に――」
「おーけー、そこまでだ。
 細かい解説はいらない」
「残念。あと他には――気付け薬。
 テンションがアゲアゲで三日位は寝ないでも平気」
「それ……絶対ヤバい成分が入ってるだろうが!
 まあポーションづくりは根気のいる作業だろうしな。
 今日は本当に助かったよ」
「ん。礼を言われるほどではある」
「少しは謙遜しとけ(苦笑)
 しかし随分と汗をかいてるけど……大丈夫か?」
「長時間火の前で作業していた。
 だから自然の成り行き」
「――そうか。
 体調に影響しないならいい。
 ただこの臭いも酷いし……良かったら風呂に入るか?
 少し遅くなっていいなら手間だけど沸かすぞ」
「風呂……それならいいところがある」
「お。心当たりが何かあるのか?」
「ええ、とっても――」

 汗にまみれ答えるリアの端正な顔。
 俺を熱くジッと見つめる視線。
 それが何故か淫靡で艶やかさを孕んでいるように感じるのは――
 きっと俺の気のせいに違いない、うん。






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