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おっさん、解説をする
しおりを挟む「おっさん、見えてきたよ!
アレが迷宮都市!?」
都市と都市を繋ぐ定期便も兼ねる、寄り合い馬車。
金を多めに出すことで、完全に借り切ったその車中から身を乗り出しながらシアが元気いっぱいに叫ぶ。
昨夜、皆と一緒に雑魚寝したのが余程嬉しかったらしい。
すっかり上機嫌で何よりだ。
俺はその元気の良さに苦笑しつつも解説してやる。
「ああ、そうだ。
最近では迷宮都市の異名の方が強いが、昔は精霊の寵愛を一身に受ける理想郷とも言われる所だったんだぞ。
大災害の爪痕以外に注視すると立派な建物が見えるだろう?
かつての繁栄の名残だ」
「ガリウスの指摘は正しい。
ここはかつて人類の英知を結集して造られた。
残された数々の文献から察するに、とても素晴らしい都市だったと思われる」
「まあ若干衰退したとはいえ、精霊の加護が根強いしな。
ここだと作物は元気に育つし怪我は治りやすいしと、良いことづくめだ」
「神の慈悲とはまた違う恩寵なのですね。
随分とお詳しいようですが、ガリウス様は以前に来られた事が?」
「ああ、駆け出しの頃にな」
「道理で……納得しました。
しかし――これほどの規模の都市が一瞬にして総崩れになったというのは、とても信じられません。
都市を守護する兵士も屈強だったでしょうに」
「外部に対しては強固だった結界も内部からの圧力には弱かった。
砦攻めの基本だが――喪われた命の事を考えると遣り切れないな」
俺の言葉に三人は沈痛な顔を浮かべる。
未曽有の大災害と称される妖魔によるスタンピード。
この災害により命を亡くした人は当時の人口の半分、つまり10万を超える。
未だ痛ましい爪痕を残す外壁を見ながら俺は思いを馳せる。
迷宮都市。
大召喚術師ユーナティアによって造られたこの都市は、当時激化していた魔族との最終決戦へ向け多くの難民を受け入れる避難所として端を発した。
彼女の仲間である聖霊使いによって様々な精霊達の祝福を受けたこの都市は、別名精霊都市とでもいうべき機能を持った都市でもあった。
蛇口を捻るだけで幾らでも水が供給される潤沢な水源。
一年を通し常に快適な気候を維持する天蓋。
滋養に溢れ作物が幾度も収穫できる土壌。
区画整備がきちんと為され過ごしやすい分譲住宅。
外敵を遮断する強固な結界の力もあり、決戦後も人類の理想郷として栄えた。
しかし光が増せば影が強くなるように――
華やかな繁栄の陰では、見えない澱みが蓄積されていったのだろう。
都市開設後、50年を経た時にそれは起こった。
前兆もなく突如として都市を襲った未曽有の大災害。
それは自然の摂理に背き続けたことによる、世界の均衡を是正する揺り返しとでもいうべき反動なのだと噂された。
だが――後世の研究者は告げる。
あれは間違いなく作為的な悪意によるもの、なのだと。
それを裏付ける証拠に、激震と共に都市中央部に現れたのだ。
妖魔を無尽蔵に生み出す魔の巣窟――即ち、ダンジョンが。
出現と共に溢れ出る妖魔の群れ。
狂騒とでもいうべき爪牙により罪なき人々の命は無残にも散らされていった。
外部からの敵――魔族の猛攻にすら耐えた結界は内部からの侵略者に対し何の効力も発揮しなかったからだ。
常在してた守備兵は混乱を超えよく健闘したが……人数が人数だ。
次第に壊滅し、悲劇は連鎖する。
支援要請を受けた各国の協力によって、どうにか都市部の妖魔は掃討したものの、ダンジョンそのものまでは手が回らない。
ダンジョンを殺すには最深部に眠るコアを破壊しなければならないからだ。
最も深き嘆きの迷宮と称されるこのダンジョン。
最優秀であるS級を含む数多の冒険者が探索に臨むも――
未だ制覇されていない。
500を超える階層の果てにはいったい何が待ち受けているのか。
その真相は誰も知らない。
俺達は最近ここで不可解な失踪事件が続いてると聞き訪れた。
名高る有望なパーティが次々と謎の失踪を遂げる怪事件。
端に迷宮での遭難や壊滅なら分かる。
だがB級やA級だけでなくそこにS級のパーティも含まれているのは異常だ。
確定ではないが直感で、そこに魔神どもの思惑がある気がする。
魔神皇復活に関わる案件でない事を祈りつつ――
俺は待ち受ける戦いの予感をひしひしと肌に感じるのだった。
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