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おっさん、推理する
しおりを挟む「ふう~。
どうにか危なげなく切り抜けたな」
「ガリウス……
それはさすがに謙遜し過ぎ」
「そうだよ、おっさん!
強大な力を持つ悪魔達を相手にしながら、今のは完璧圧倒的じゃない。
少しは誇っても良いと思うけど?」
「そうか?
まあ……得てして調子に乗ってる時ほど足元を掬われやすいからな。
俺は勝利に驕れるほど大した器じゃないから油断せず堅実にいきたい。
これもまた身に着いた性分ってやつだ」
「む~!
おっさんはもっと自信を持っていいのに」
「謙虚。
だが――それでこそガリウス。
無理強いは良くない」
「それはそうなんだけどさ……
おっさんはもっと正当に評価されてほしいんだ。
色眼鏡抜きでもおっさんは尊敬に値する人だもん。
まあ――追放劇を企んだボクが言えた義理じゃないけどさ」
「そんなことないぞ、シア。
お前達が俺の事を思って仕組んだのはちゃんと分かってる。
ただ――相談はしてくれ。
ああいうのは胃に悪いからな。
あと、ありがとう二人とも。気持ちは貰っておく」
悪魔達が消えていくのを油断せず残心を以て見据える俺が洩らした呟き。
その言葉に噛み付く様に反論するシアとリアに――俺は思わず苦笑する。
俺は、自分が人間的に強くない事を知っている。
煽てられ調子に乗った者がどのような末路を辿るか――充分理解している。
だからこそ誠実に――謙虚になるべきだと思うのだ。
半身を捥ぎ取られるような失敗は、もう二度と繰り返さない。
儀式の刻限が過ぎ、眠りに落ちていたフィーがトランスから覚めていくのを見守りながら俺は自戒する。
「しかし――また妨害が入ったな」
「なんだか【検索の儀】をする度に乱入者が入ってくるよねー」
「これで何回目だ?
成功率を考えると怖いぞ」
「今まで7回施行し5回の妨害。
今回で8回施行し6回の妨害。
恐ろしい事に成功率は二割になった」
「本当か?
まったくどうなってるんだか」
「仕方ないよ。
リアが言ってたけど――
これもまた因果律ってやつだって。ね?」
「ん。単なる憶測だけど――多分正しい」
「どういうことだ?」
「フィーの信仰する神は全知全能にして零知零能。
大いなる力を持ち人を庇護するも――その方向性は人が望まなくてはならない。
故に個人の才覚――祝福された才能が重視される。
だがこの【検索の儀】はある意味法術の中でも異端。
この儀式はどちらかというと――術者の望む未来の選択肢を狭める事によって正解を導き出してる節がある」
「よく分からないんだが――どういう事だ?」
「簡単にいえば未来改竄系の術式。
本来、未来へ至る分岐は無数。
その本数を術者を支軸に情報を投じる事により収束。
知り得ない筈の正解を強引に導くのが本質。
ただ――これはいうなれば裏技(チート)。
世界の法則を乱す行為。
その為、あるべき世界の修復力が働く。
それが所謂、謎の解明や欲しい答えが分かる非常に惜しいタイミングで都合よく乱入してくる輩の後押しになってると思う」
「なるほどね~。
ズルをして正解に辿り着いちゃ駄目なんだ?」
「おそらくな。
きっと賽子の出目が大好きな邪神が均衡を許さないんだろう。
っと――お嬢様のお目覚めだ」
「大丈夫、フィー?」
「急に動くと立ち眩む。
ゆっくり動くといい」
「ガリウス様……皆……わたくし……」
雑談する俺達の前でフィーが頭を振りながら覚醒する。
未だ夢見がちで現実という認識が曖昧なのだろう。
俺は安心させる様に手を握る。
しかし周囲の惨状に落胆したようにフィーは顔を曇らせる。
「またも乱入者……儀式は失敗したのですね」
「そんなことはないぞ?」
「えっ?」
「失礼致します!
凄い音がしましたけど、いったい……
――って、きゃあ!」
力強く告げた俺の言葉に驚くフィー。
そして遅ればせながら入室してくるマリアンヌだったが、周囲に未だ残る悪魔の死体を見て悲鳴を上げる。
まあ箱入りの聖職者にとっては酷な光景だな。
俺はマントを脱ぐと薄絹を纏ったフィーに掛ける。
「ガリウス様……?」
「襲撃の犯人――というか魔神の正体は分かった。
フィーのお陰だな。
あとは――居場所の確認だ」
俺は優しく微笑みフィーを元気づけると、怯えるマリアンヌに近付く。
彼女には気の毒だが尋ねなくてはなるまい。
この事件の首謀者――魔神の居場所を問い質す為に。
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