勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
136 / 398

おっさん、迷宮に挑む㉔

しおりを挟む

「いくよ、フィー!」
「お任せ下さい、シア」

 リアによる【停滞鈍化】発動後――
 阿吽の呼吸で死霊王へと駆けだすのは我がパーティの勇者と聖女コンビだ。
 複数の付与術式と祝祷術に支えられたその動きは滑らかで澱みがなく美しい。
 無論、死霊王も傍観している訳ではない。
 異名ともなっている死霊の上位眷属、怨霊を瞬く間に召喚し迎撃に向かわせる。
 怨霊(レイス)は恐るべき敵である。
 通常攻撃を無効化するだけでなく【死の接触(デスタッチ)】と呼ばれる、生命力そのものを吸い取るエナジードレイン系の攻撃をかましてくる。
 HPにダメージを与えるのではなくHPの上限値を削るこの攻撃は、上位法術による回復以外は自然治癒に任せるしかなく――HPを全て削られたら晴れて奴等の仲間入りになるという非常にいやらしい攻撃だ。
 要は第二階層で戦ったアンデットナイトの完全上位互換である。
 しかも幽体ゆえに物理法則を凌駕し並の前衛職なら抵抗する事すら出来ない。
 無残に魂を蹂躙されネズミ算式にレイスが増えるのみだろう。
 古のお伽話では一昼夜で地方都市が壊滅したという。
 それら厄介な死霊、怨霊を統括する者こそ死霊王リッチである。
 奴自身はレベルの低い者なら視ただけで精神に異常をきたす、高次元の防御障壁に包まれている。
 召喚術師の操るフォースフィールドにも似たこの障壁は低位階値の攻撃を自動的に軽減、しかも次からは耐性を得るというとんでもない代物だ。
 目玉の暴君バグズベアードが後衛殺しなら死霊王リッチは前衛殺しと呼ばれるのはこういった理由によるからだ。
 何せ対抗するには接敵するしかないのに奴自身に効く攻撃は限られる。
 初手で最大火力を叩き付けるか、奴自身の相克である法術で防御障壁を相殺するしか対応する方法がなく、通常なら聖別武具や聖遺物などの恩寵に縋るしかない。
 だが――ここに天敵がいた。
 奴自身の障壁を無効化する法術のエキスパート、聖女。
 クラスチェンジにより強大な魔力加護を得た勇者の存在が。
 勝手知ったる何とやらで互いが何をして欲しいのかを理解している二人は、無駄のない詠唱と共に死霊を祓いながら死霊王に肉薄していく。
 冴え渡るシアの【魔法剣】と高らかに響き渡るフィーの祈りを捧げる声。
 その連携の前にはレイスとて敵う訳がなく遂に道が切り開かれる。
 好機とばかりにチャージを仕掛けるシア。
 足に魔力を集中させると【魔力放出】により砲弾の様な勢いで間合いを詰める。
 慌てて念動力で巨大な瓦礫を撃ち出そうとする死霊王だが――遅い。
 その時にはレッドドラゴンを斃したヴィヴィと俺が既にカバーに入っていた。
 荒れ狂う念動により凶悪な速度で渦巻く瓦礫をヴィヴィが両断――細かい砂塵を俺が魔現刃で打ち払う。
 台風の目の様に開いた空隙をシアが電光の様に駆け抜ける!
 懸命に障壁の密度を高め抵抗する死霊王だが、もう遅い。

「右手で魔術【フラッシュ】左手で闘技【クロススラッシュ】。
 魔法剣――【シャイニングクロス】!」

 破魔の力を持つ、シアの放った渾身の光属性魔法剣が障壁ごと死霊王を両断!
 抵抗すら許さず灰燼と化す。

「やった!」
「ん。さすが」
「やりましたわね!」
「お見事、さすが勇者ね」
「うむ」
「そうかな……えへへ」

 鮮やかなシアの手腕を褒め称える一同。
 だらしなく相好を崩すシアだが……そういった所がまだ甘いんだぞ、お前は。
 調子に乗ってる時が一番怖い。
 これは師匠の言葉だ。
 はて、続きは何だったか?
 まあいい。
 今は能天気な勇者様を支える事を優先するとしよう。
 苦笑した俺は樫名刀を手に周囲を警戒する。
 対策を練りに練ったとはいえ圧倒的な殲滅速度で全ての迷宮主を斃し終えた。
 犠牲も何もない快勝だというのに……いったい何だろうか、この胸騒ぎは。
 胸中に宿る違和感に疑問を抱きつつも俺は仲間の下へ歩み出すのだった。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妖精の森の、日常のおはなし。

華衣
ファンタジー
 気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?  でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。  あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!? 「僕、妖精になってるー!?」  これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。 ・毎日18時投稿、たまに休みます。 ・お気に入り&♡ありがとうございます!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...