勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、魔術を語る

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「じゃあウチはここで待機してるんで、陸に戻る時は声を掛けてや。
 幸いこの神殿は竜神様の結界が張られてるから安全地帯。
 探索で一休みしたい時など、声を掛けて貰えば無料で寝泊まりOKやで。
 伯爵様ほどのもてなしは出来へんけど……
 ウチで良かったら、たっぷりサービスしたるわ。
 ほな、頑張ってな~♪」
「お姉さま、勇者様に対しそんな言い方――」

 愛想の良いウインクと共に手を振って送り出すレファスに対し、まなじりを上げたレティスが喰って掛かるのが見えたが……
 重々しい音を立てて閉まった大扉に遮られる。
 おっかなびっくり様子を窺ってた俺達だが顔を見合わせると吹き出してしまう。

「いや……エキセントリックな対応というか、びっくりだね」
「ああ、押しが強いというか何というか」
「ん。そこは遠慮せず率直に言えばいい」
「ですな。
 リア殿の仰る通り、なかなかに個性的な御仁でござった」
「わんわん!」
「あら、ルゥちゃんもそう思うんですの?」
「くぅ~ん」
「あはは、そうだねって首を振ってる!
 やっぱりインパクトあったみたい」
「しばらくは忘れないキャラクターだった。
 性格設定が秀逸」
「まあまあ。
 雑談はその辺にして探索に臨むとしよう。
 一応、ここはダンジョン内部だしな」
「は~い」
「了承した」
「畏まったでござる」
「さて、この海底ダンジョンだが都市探索型から多分遺跡探索になるとみたが……
 皆はどう思う? 忌憚のない意見をくれ」
「そうですね、この手の都市探索はわたくし共もあまり経験はないのですけど……
 恐らく間違いないかと」
「この広大な都市を隅々まで探索するのは非効率。
 であれば何かしら的を絞って対応していった方がよい」
「同感でござるな。
 ガリウス殿も既にお気付きの通り、都市の中は敵意ある妖魔だけではござらん。
 我々に中立的な立場をとる者が索敵スキルに先程から引っ掛かっておりまする。
 彼等に敵対するよりかは、懐柔し友好的に振る舞って協力を仰ぐのが良いかと」
「やっぱりそうなんだ?
 何だか悪意ある視線じゃなくて、値踏みしてるというか何というか……
 ボク達との距離を測ってる感じ?」
「ああ、俺もそう思う。
 多分竜神族の遺跡に住み着いた者達なのだろう。
 魚人(マーマン)や犬頭族(コボルト)などの人型亜種妖魔は人族に友好的な者もいる。俺達の対応次第だが、きっと上手く立ち回れば助力を得られるだろう。
 シティアドベンチャーは苦手な俺達だが……
 幸いな事にカエデが仲間になってくれたしな。
 面倒を掛けると思うが宜しく頼む」
「こちらこそでござる」
「さて、まずは情報収集をしに都市を散策したいと思うが……
 その前にどうだ、皆? やっぱり駄目か」
「うん、おっさんの推測通りだね」
「ん。【無音詠唱】を含めスキルは問題なく発動」
「ええ、でも一切の魔術系能力が効果を発揮しません。
 おそらくこれは何かしらの力によって干渉自体が打ち消されているのかと」
「やはりな。
 静寂(しじま)なんて名称が付くからには何かしらのデメリットがあると思った。
 俺も試してみたが常在型の魔力付与の為された武具や魔導具は問題なく使えた。
 となれば、考えられるのはアクセス干渉が遮られているのかもしれないな」
「アクセス干渉?」
「ああ、前衛のシアは聞きなれない言葉か。
 餅は餅屋、リア説明してくれるか?」
「ん。了解。
 シア、貴女は魔術を扱う時どのように使用している?」
「え?
 こう~使いたい魔術を思い浮かべて「エイ、ヤァ!」って感じ?」
「……感性で魔術を扱う者には難しい話かもしれない。
 けど魔術とは本来この世非ざる力なのは理解していると思う」
「うん、それはまあ」
「フィーの使う法術も基本は一緒。
 魔力によって世界の理に干渉し望む効果を現世に導く術。
 それ故に【魔術】と呼ばれ、術式の込められた物は【魔導具】と名付けられた。
 では各自の魔術の違いとは何か?
 これは暴論だが、計算式の違いに過ぎない」
「計算式?」
「分かりやすく言えば過程。
 例えばシア、貴女が魚を食べたいと思ったらどうする?」
「え?
 う~ん、お店に買いに行くか食べに行く」
「そう、それが一つの答え。
 でも中には釣りに行く人もいるし、養殖から始める者もいる。
 魔術は様々な世界干渉能力を持つ存在への関わりによって成り立つ。
 この世界の魔術全般が同調魔術型(シンクロハーモニクス)と呼ばれる理由。
 魔術は神秘。
 故に個人の持つ素質と血筋、才覚に左右される。
 魔術は学問。
 故に集団で考案・思索された効率の良い方法が分野として発展する。
 しかしどのような魔術もまずは干渉可能な高位存在へのアクセスから始まる」
「あ、つまり」
「そう、ここ静寂の祠はそれが出来ない。
 アクセスが出来ないから逆説的に魔術が発動しない。
 術式に問題はなく……必要な魔力は消費されているのに」
「多分ここもある種の【固有領域】に近いのだろう。
 何かしらの条件をクリアしないとアクセス権が得られないんだろうな。
 まっあまり深く考える必要はないと思うぞ」
「何故?」
「ミズキ達……ここに挑んでいる他のパーティの面子にも術師がいたからさ。
 誰も魔術が扱えないなら、肉体的に脆弱な術師を同行させないだろう?
 きっと何かしら方法がある筈だと俺は思う。
 さあ、こうしていても始まらない。
 各自警戒しながらまずは出発だ。
 俺が殿を務め周囲を警戒するのでカエデ、悪いけど先導を頼む」
「心得ました」
「それじゃ……行くぞ!」
「「「了解((わん))!」」」
 
 掛け声の後、警戒を怠らず俺達はゆっくりと歩み出す。
 未知の迷宮――白亜の都市群へと。
 



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