勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、微笑み誇る

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「あん? 術が使えない?
 そりゃおめ~あれだ、奉納点が足りないんだよ」
「奉納点?」

 大歓声の後、雪崩式に宴会となった酒場。
 中でも先程から懇意にさせて貰っている虎人族の戦士フーは俺の質問に対し豪快に笑って答える。
 ここ静寂の祠内部では何故か術式が打ち消される。
 正確には高位干渉存在へアクセス出来ないのだ。
 だが酒場内を見回した感じ普通に冒険者の術師はいるし、店主は汚れたグラスを【浄化】で綺麗にし、酒樽の残りが少なくなれば【酒製造】で補充をしている。
 間違いなく魔術は発動する。
 となれば俺達の知らない裏事情があるに違いない。
 なので駆け引きもなく率直に聞いてみたのだ。
 特に隠すこともなくその質問に対して返って来た答えがこれだ。

「奉納点っていうのはそのまんまだ。
 冒険者ギルドと一緒で、どれだけ都市に貢献したかによって貯まる。
 中央の広場に龍神様の像があっただろう?」
「ああ、巨大な彫像があったな」
「あそこが竜神様に繋がるお膝元だ。
 この酒場や住人から依頼を受けて解決していく。
 依頼の難易度によって各自奉納点が定められている。
 オレ達だと荒事や探索による物資調達が多いがな。
 そうして貯めたポイントを龍神様に願い立てれば様々な恩寵が得られるんだ」
「例えば?」
「お前の望む術の発動とか、上位遺跡【龍宮】の探索許可とか様々だ。
 この静寂の祠内には基本やり取りに金銭は絡まない。
 だからこそ奉納点がその代替えとなっているんだ」
「そのやり取りはどうすればいい?」
「ああ、それは簡単だ。
 奉納点をやり取りする際に【契約】を願い出ればいい」
「――契約?」
「そうだ。
 ほれ、試しにやってやる。
 我、フー・スー・ヤ―が龍神様に願い奉る。
 気のいい酒豪ガリウスに奉納点10点を譲渡する」

 その言葉と共にフーと俺の右手が輝きを上げる。
 すると次の瞬間、そこには10の輝きが灯り時間と共に消えた。

「これが【契約】だ。
 原則こうやって他者から他者にポイントを移せる。
 他には代行手続きとして、ここの店主みたいに信頼度の高い者が仲介点を頂きながら譲渡代行をすることも出来る。つまり依頼だな。
 まあ特に難しく考える事はない。
 普通に生活していても日々奉納点は貯まっていく。
 それでも何かを欲するなら……マメに働け。
 この都市、っていうか龍神様は勤労を尊ぶからな」
「なるほどな。
 ありがとう、参考になったよ」

 奉納点という金銭を介在しないポイントのやり取りか。
 現金を持ち歩いたり換金しないで済む分、便利ではある。
 反面、ゼロから貯蓄し対応をしなくてはならないのは不便だな。
 ここの飲み代は店主の気遣いで無料になっているからいいものの(それが火酒制覇の特権らしい)そうでなければ無一文でいきなり犯罪者だ。気を付けないと。
 フーに礼を告げジョッキを傾けていると店主が話し掛けてきた。
 
「ガリウス、お前さん達は伯爵様の命を受けてここに来たんだろう?」
「ええ、そうです。
 この静寂の祠に悪さを仕掛けている奴がいるようで。
 その防疫を含め、ここにあるダンジョンを制覇してほしいと依頼されました」
「まあ、姫巫女が通したんだから人柄に間違いはあるまい。
 基本的に悪人はこの中には入れない様になっておるしな。
 お前さん達はこれから奉納点を稼ぐ為に色々住人に関わるだろうが……
 頼む、可能な限りでいい。
 その際は優しくしてやってくれんか?」
「店主?」
「龍神族の遺跡であるこの都市に住むものは、およそ2000人。
 その多くが迫害を受け故郷を追われた者達だ。
 龍神様の庇護を受けねば野垂れ死にをしていただろう。
 ここで衣食住が満たされ身体は回復したと思う。
 だが――精神に負った深い傷は中々癒えるものじゃない。
 なので、可能な限りでいいから優しく接してやってくれ。
 何も特別扱いをしろ、とは言わん。
 お前さんの素敵な仲間達がそうしているように……
 自然体で触れ合ってくれればいい。
 それこそが何よりの救いとなるからな」
「分かりました。
 確約は出来ませんが可能な限り対処します。
 とはいっても――
 改めてこいつらにそんな助言は必要なさそうですがね」
 
 店主に微笑みながら俺は周囲を見渡す。
 下半身が蛇であるラミアの魔術師ビーナの冗談に爆笑するシア。
 背中に羽が生えたバードマンの軽戦士ラウにアプローチされ苦笑するフィー。
 鱗が生えた爬虫類人であるリザードマンの賢者ハスクと議論するリア。
 小人ような体躯であるハーフリングの盗賊ク・ミエンと意気投合するカエデ。
 皆の癒し系として可愛がられているルゥ。
 新天地でも異種族でも、偏見なく受け入れ応対する仲間達。
 前途は確かに多難だろう。
 だが……今ばかりは、こいつらを少しだけ誇らしく思うのだった。




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