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おっさん、脳内で嵌る
しおりを挟む「おっさん……」
「ガリウス……」
「ガリウス様……」
声掛け後、無言で涙を流す俺をただ黙って見守るシア、リア、フィー。
人生を共にする三人には俺の過去をある程度話している。
魔神共によって引き裂かれた想い。
逝ってしまった彼女への償い切れない願い。
だがそれは人前で泣いていい免罪符にはならない。
ましてこんなおっさんが泣いても締まらないだけだ。
非常に情けない姿だし散々無様な所を見せてしまったが……
この何よりも大事な三人を相手に今更気取っても仕方ない。
これからの働きで見直して貰おうと思う。
俺は袖口で目元を拭うと、アリシアへ話し掛ける。
「それでアリシア――
不躾だが訊いても良いか?」
「何なりと」
「何故――俺達を召喚した?
神域に到るには神秘に満ちた秘儀が必要だ。
過去にそれで苦労させられた訳だしな。
奉納点を変換するのには通常念話で対応している筈だろう?」
「さすがですね、貴方は。
通常の方ならこの神域の雰囲気に飲み込まれて委縮してしまうのに。
そういう猛々しくも勇ましい性格はこの十数年でも変わらなかったようだ」
「昔話をしに来た訳じゃないだろう?
俺達がここに呼ばれた訳を訊きたい。
まあ、おおよその予想はつくが――」
「どういうことでござるか、ガリウス殿?」
「世界を支えし龍でなく代理人であるアリシアが自ら顔を見せた理由……
何かしらの理由により、かの龍が動けないか疲弊した状態になっている。
――違うか?」
「鋭いですね……変わらず。
ええ、貴方の指摘通りです。
世界を支えし龍――ナーザドラゴンが一体【西方龍イリスフィリア】は現在大半の神通力を封じられている状態です。
忌まわしき……異界侵略者共の手によって」
「やはりな。
伯爵から事情は聞いていたが……魔神の仕業か?」
「はい、その通りです」
「どういうことか訊いても?」
「勿論です。
その為に貴方達をここにお呼びしたのですから。
今から言う事は他言無用ですよ。約束出来ますか?」
「無論だ」
「では、説明しましょう。
これは本来秘匿すべきことなのですが……今まで貴方達がいた地底ダンジョン【静寂の祠】、龍宮とも呼ばれるそこは、実は龍の身体そのものなのです」
「うえっ!?」
「本当ですか!?」
「びっくり」
「驚愕でござる」
「まあ……そうじゃないかと予想はしてた」
「そうなの、おっさん!?」
「だって考えてみろ?
これだけの規模の都市のインフラを維持するのに、どれだけの魔力と魔石が消費されると思う?
古代魔導文明全盛期ならいざ知らず、現在は魔力を供給できる魔力炉もない。
ならばその派生源は――凄まじい魔力転換炉を胎内に持つ龍しかいない」
「な、なるほどね」
「考えてみれば――ヒントは沢山ありましたわね。
奉納点による変換サービスとか、誰が判別しどのように対応しているのか不思議でしたけど……ご自身のお膝元、どころか体内ならある程度融通が利くのですね」
「確かにフィーの指摘通り。
ということは、海底にあった龍を模した巨岩も――」
「文字通り龍そのものだった訳だ。
俺達は虎口どころか龍口を過ぎて――体内にある隠れ里に来てたんだろうな」
「正解です、皆さん。
【西方龍イリスフィリア】は四体のナーザドラゴンの中でもとても慈悲深い龍。
行き場の無くなってしまった難民や彷徨える種族を保護しては、自らの胎内に構築されたこの都市に招き入れ住まわせてきました。
それが自らの窮地を引き込むと知らず」
「どういう事だ?」
「イリスフィリアの招いた難民の中にいたのですよ……
龍の優しさを知り、その慈悲に付け込む輩が」
「まさかそいつは――」
「ええ、貴方達が迷宮都市で相見えた鏡像の魔神――
偽りの姿を自在に操り暗躍する【ドッペルイクス】の手によって」
アリシアの言葉に――
欠けていたピースがピタリ、と脳内でハマる音が聞こえた。
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