勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、打ち震える

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「リア!」
「ん。任せて【必滅の魔弾(クリティカルブリッド)】!」

 俺の要請に応えてリアが放ったのは魔弾の術式である。
 嵐精霊の恩寵によりリアは最優先の行動順位を受けている。
 高速展開された術式が数十発の魔弾と化しアイスサラマンダーに向かっていく。
 術師の扱う魔弾は実にシンプルだ。
 純粋な魔力を攻撃用に転換し放つ。
 それ故に術式の展開が速く、さらには対象の属性に左右されず、如何なる存在に対してもある程度有効なダメージを与える事が可能だ。
 ただ延焼・凍結・転倒などに代表される付随効果はない為、あまり好まれて使用される事は無い。  
 しかし実戦において先手を打てるというのは何より重要なアドバンテージだ。
 俺はリアとパーティを組んでからその有用性を説いてきた。
 そうしてリアが生み出したのがこの【必滅の魔弾】なのである。
 予め意識下に待機させている付随術式を高速解凍し付与する。
 通常職でない賢者であるリアだからこそ術式に編み込める、まさに秘奥。
 セレクトされた必滅の効果とは、魔弾が対象へぶつかった瞬間にダメージを与えるだけでなく即座にエネルギーを対消滅させるもの。
 この炎属性だか氷属性だか分からない敵に対してファイヤーボールなどをぶち込むより余程良い対応だろう。
 飛翔し襲い来るアイスサラマンダーに注がれる魔弾の弾幕。
 エネルギーの対消滅が行われ、もうもうと煙が立ち昇る。

「やったかな!?」
「シア……貴方ね」
「それは言ってはいけないお約束でござる」

 拳を握りながら叫ぶシアの言葉に、呆れたかのようにフィーとカエデが呟く。
 果たしてその予感は当たっていた。
 湯気の様な煙を突っ切り大口を開け突撃を仕掛けてくるアイスサラマンダー。
 体は傷つき、纏う炎と冷気は薄れその数は3匹へと減ってはいたものの……
 群れ全体を落とす事は出来なかった。
 通常よりも魔術の威力が高く発現してしまうという【龍の宮】においてまさか、と戦慄するリアだが……人並み以上に目が利く俺はそのタネを見破っていた。
 あいつらは魔弾が直撃する直前、自らの周囲に防御幕の様なものを展開して相殺を図っていたのだ。
 多分自らの不安定な体を形成する精霊力そのものだろう。
 師匠が似たような事をしているので間違いない筈だ。
 無論、聖霊使いの扱うスピリチュアルアーマーには到底及ばない。
 だが魔弾の効果を軽減し生き残るのには何とか足りていたらしい。
 ショックを受けているリアの肩を励ましの意味を込め叩き、俺は前へ駆け出す。
 追従して併走してくるカエデとルゥ。
 考えは一緒らしい。

「後衛に寄らせる前に叩く。
 シアがいるから後顧の憂いは無い」
「了解でござる」
「わん!」

 消耗している今が好機だ。
 俺達は一体ずつ相手取る為、各々駆け出す。
 一番最初に接敵したのはルゥだ。
 魔狼としての俊敏性を遺憾なく発揮し、圧倒的な機動力でアイスサラマンダーに近付く。
 ただルゥは物理攻撃が主体だ。
 得意の爪牙はアイスサラマンダーに効かないだろうが……どう対処する?
 その懸念は一瞬にして払拭された。

「わん!」

 奴等の行動を見て覚えたのか、あるいは主人であるシアの戦い方を参照にしたのだろうか。
 アイスサラマンダーに向けルゥが振りかざした前足には、それぞれ相対する様に炎と冷気が燈っていた。
 まさかこの短期間で自分の身体にエンチャントする技術を身に着けたのか!?
 だが、確かにそれならば物理攻撃が効かない敵にも有効だ。
 ルゥの……いや、伝説の魔狼フェンリルの戦闘センスに脱帽する。
 天候操作も行えるルゥは確かに精霊力も扱えるだろう。
 精霊力がエンチャントされた前脚は、目標を違える事無くアイスサラマンダーの肢体を捉え、炎の部分には冷気の宿った右脚が、冷気の部分には炎が宿った左脚が突き刺さって切り裂いていき、四肢を文字通り打ち砕く。

「あお~ん!」

 自らの成果を誇る様に軽く遠吠えするルゥ。
 うむ、見事だ。
 あとでしっかり褒めてやろう。
 そしてその時には俺達の仕事も終わっていた。
 疾風のごとき俊敏性で苦無を手に接敵したカエデがアイスサラマンダーの首を、抜刀し様に放った俺の斬撃が残ったもう一体の体を両断していた。
 さすがはバトルジャンキーのカエデだ。
 先程の攻防の一瞬で物理攻撃の有用性の不確定さ、アイスサラマンダーの耐久性を見抜いていたらしい。
 こちらに向けて不必要な大口を開けていた以上、おそらくアイスサラマンダーは俺達にブレスを叩きつけようとしていたのだろう。
 通常のサラマンダーが放つブレスでも術師の放つ渾身のファイヤーストームに匹敵する威力を持つ。
 まして未知存在であるアイスサラマンダーだ。
 どんな結果になるか身を以て経験したいとは微塵にも思わない。
 だからこそカエデは一撃必殺に賭けた。
 忍び寄り、死角から闘気を集中させた苦無によるスニークアタック。
 その効果は抜群で抵抗すら許さずアイスサラマンダーの首を刎ねた。
 的確に核となる首を断たれてはどうにもならないらしい。
 一撃で霧散し消えていくアイスサラマンダー。

「またつまらないものを斬ってしまったでござる」

 残心を怠らずど嘯く姿もどこか様になっている。
 俺の方は至って簡単だった。
 アイスサラマンダーへと近付き、樫名刀を構え斬撃を放つ。
 ただ、それだけだ。
 だが……だからこそ自らの異常性に気付いた。
 動作が最適化され過ぎている!
 理想とする最高の動きを澱みなく再現する身体と技量。
 実戦は道場稽古ではない。
 相手はロジックに基づいて動き、自ら同様に戦術を練ってくる。
 どうしたってセンチ単位で動きのズレが生じ、的確な動作を妨げてしまうのだ。
 しかし今の俺は違う。
 反復動作で培った剣筋そのものを体現できた。
 しかもミリ単位のズレとコンマ数秒の遅れも無しに。
 これがいかに凄いことかは、才能の無さに鬱屈しながら剣を振るってきた者にしか分からないだろう。
 羽毛の様に軽やかに駆け出せた時から予想はしていたが……
 クラスチェンジ後のあまり肉体性能に、俺は思わず戦慄すら覚えるのだった。

 
 

 


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