勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
179 / 398

おっさん、迷いを断つ

しおりを挟む

「ふう……
 おっさんには堪えるな、これは」 

 生体エネルギーである闘気は、通常は無色透明な蒸気みたいなものだ。
 しかしどういう理屈なのか【気と魔力の収斂】により魔力と融合した闘気は金色の輝きを放って俺の身体から立ち昇っている。
 博識なリアに以前聞いた話だと、この輝きこそがこのスキルの真骨頂で、使用者の身体能力を爆発的に高めるだけでなく――魔術や特技などで齎されるありとあらゆるバッドステータスを跳ね除けてくれるという。
 ただ相反する性質を持つ闘気と魔力を完全に調律するのは至難の業であり、確かS級でも数えるほどしか遣い手がいなかった筈だ。
 更に付け加えるなら燃費の悪さだ。
 今こうして【気と魔力の収斂】を維持しているだけで、莫大な量の闘気と魔力を消費している。
 まだまだ俺が未熟なのもあるが、これでは実戦で扱うのは難しいだろう。
 全力発動して10分も持たないのでは前衛を支える者として不安定過ぎるのだ。
 しかし得られる恩寵を考慮すると破格の性能である。
 前衛職究極の闘技法という名は伊達ではない。
 ただ現在のレベルでは扱い切れないのも確かだ。
 今後の用法としては要所要所の切り札として短時間発動させるのが無難だな。
 俺はゆっくり呼吸を整えながら【気と魔力の収斂】を収束していく。
 そして心配しながら様子を窺っていた皆に安心させるように手を振り、俺が抱いた感想を話してみる。
 手本である師匠がいたとはいえ、初施行にしては結果は上々だっただろう。
 口々に賛辞や感嘆をもらす一同。
 その中で何故かフィーだけが浮かない顔をしている。
 気になった俺は訊いてみることにした。

「どうかしたのか、フィー?」
「ええ」
「なんだ?
 遠慮せずに言ってみてくれ」
「率直に申し上げてよろしいです?」
「ああ、構わない」
「ガリウス様が新たなる躍進を遂げたのは非常に誉れ高き事だと思います。
 主も『パワーアップ出来る時は、しておいた方がいい』と申されますし」
「……随分具体的な神様だよな、いつも」
「まあ御利益を考えれば当然なんでしょうけど。
 ただ……ガリウス様が力を得た段階が――
 あまりにも早過ぎる気がして」
「早過ぎる?」
「――ええ。
 力には常に対価が伴います。
 ここにきてガリウス様のクラスチェンジに次ぐ急なパワーアップ。
 わたくしにはそれが何か必要に迫られて得たものに思えて仕方ないのです。
 ただの考え過ぎなら良いのですけど」
「それは……」
「わたくしの根底にあるのは悲観主義(ペシミズム)ですもの。
 ガリウス様と出会ってから――
 神の御許に到ってから――幾らか改善はしました。
 でも根付いた芯までは変わっていません。
 だからこそ考えてしまうのです。
 ガリウス様の得た力とその意味に」
「ん。納得――
 フィーの意見を支持する。
 鶏が先か卵か先かを議論する気はない。
 けど――力には意味がある。
 時にそれは因果を遡る。 
 シアやカエデでなくガリウスが覚醒した意味……きっといつか判明する」
「そうか……」
「まっ深く考えても仕方ない。
 一寸先は闇。
 理屈で考えても答えは出ない。
 それにフィーは肝心な事を忘れている」
「――あら、なんでしょう?」
「ガリウスは常識に対する反常識――型破り。
 どんな事態も何とかしてきた。
 だから賢者としては恥ずべき根拠のない意見だけど……
 絶対、大丈夫。安心して」
「おっさんだしね!」
「わん!」
「確かにガリウス殿ならどんな窮地でも笑って潜り抜けそうですな」
「フフ、そうですね。
 心から納得しちゃいますわ」
「まったく信用されてるんだかされてないんだか。
 だが――先の事を考え過ぎても仕方ないしな。
 今は俺達に出来る事を地道にやっていこう。
 ほら、こうしてる間に次のお客さんがきたようだぞ」
「了解!」

 遥か遠方の通路に見えるのは様々な獣の姿が入り混じった奇怪な二体の合成獣。
 犬の貌から生える象の鼻、河馬の巨体に虎の四肢。
 猿の貌から生える魚の鱗、牝馬の胴体に蛙の手足。
 狂気に魅入られ造形にしたキメラとしか言い様がないそいつらは俺達を見つけると口元から涎を垂らし突進し始める。
 手に手に武器や魔杖を構え迎撃に入る俺達。
 確かにフィーの言う通り力の入手に関してご都合主義的な流れを感じる。
 ただそれは今を生き抜く俺達には考えても仕方無い事だ。
 ならばまずは目の前を敵を斃し少しでも前を進む事を目指そう。
 刀の柄に手を添え俺は迷いを断ち切り駆け出す。
 戦闘に関わらない余計な思考は全て排除する。
 先制して放たれるリアの攻撃術式にフィーの支援法術。
 魔法剣を発動するシアに共に併走するカエデとルゥ。
 高揚していく身体とは裏腹に水面の様に研ぎ澄まされていく精神。
 いつも以上に周囲がよく視え、とてもクリアーな感じだ。
 合成獣たちは揃って屈強で厄介な力を持っているに違いない。
 しかし、負ける気は一切しなかった。
 そして――それはすぐさま現実のものになるのだった。
 



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...