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おっさん、疑われる
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「主殿」
「皆、体調はどうだ?
ダンジョンコアが破壊されたことにより、ここは浄化され正常化した。
もう敵は出ない筈だが……油断はするな。
仕掛けてあるトラップは解除されていないかもしれない」
「主殿」
「それにしてもご苦労だったな、カエデにルゥ。
無事レティスと合流できたようで何よりだ。
すぐさま駆け付けてくれたのは感謝するが……命は大事にするんだぞ。
残酷に思える決断でも、救援を呼ぶのが正しい場合もあり得る」
「主殿」
「しかしまさかコアを破壊した事で転移陣が使用不可になるとはな。
さすがに歩いて戻るのは時間が掛かって仕方ない。
こうなると先に台座で脱出したレティス達が羨ましいな」
「あのさ、おっさん」
やたらテンションを上げて話す俺に何故かジト目で話しかけてくるシア。
俺は冷汗がこめかみを流れるのを感じつつ声掛けに応じる。
「ん? どうした、シア?」
「そのいかにもわざとらしい棒な対応はともかくさ……
いい加減、相手にしてあげたら?」
「同感ですわ」
「ん。賛同せざるをえない」
「わん!」
「確かにシア殿の仰る通りですな」
皆に責め立てられ俺は唇の端が引き攣ったように痙攣するのを感じた。
一同の視線が注がれているのは俺の腰元だ。
そこには無表情に、しかし熱烈な想いを込めてピタリと抱き着く少年がいた。
誰であろう、そいつの正体は従魔の腕輪により仲魔になったショゴスだ。
皆の冷たい視線を痛い程感じつつ、俺はこうなった経緯を思い返すのだった
ダンジョンマスターの記憶を持ち越し、あまつさえ取り込んだ霊的設計図を胎内に内包した不定形生命体ショゴス。
激戦の果てに突如現れるや親しげに語り掛けてくるという状況。
先程まで命のやり取りをしていたのだ、油断はならない。
だが警戒心を露にする俺達を前にそいつは深々と恭順の意を示した。
それは最早隷属といっても良いほどのレベルだった。
どうやら敵対する気はまったくないらしい。
疑う訳ではないが、真意を探りながら話し始めればそこはそれ。
会話好きな我がパーティの面々によってあっという間に打ち解けた。
決死の表情で舞い戻ってきたカエデとルゥにも事情を説明し、こうしてショゴスはパーティの一員としてまったくの違和感もなく溶け込んだのだ。
しかし愛称としてショーちゃんと名付けられたそいつは、何故か俺に対して深い執着を持ち纏わり付いてくる。
お前の主はシアなのだと幾度も説明するも、シアはあくまで従魔の腕輪の持ち主であり、いかなる理由故なのか本能的に俺を主と認識しているとの事。
当惑した俺は魔導具に詳しいリアにどういう事なのか話を聞いてみたが、非常に稀な例だがおそらく刷り込み……インプリンティングが為されたとの返答だった。
奴の自我の目覚めとなった一撃を俺が繰り出した事による弊害らしい。
まあ好かれるのは悪い事ではないが粘液状というのも問題だ。
不定形ゆえ何にでも変身できると豪語するショーちゃん。
ならば人型をとリクエストしたら何故か美少女になったのである!
しかも全裸。
よくよく見ればそれは俺の記憶の片隅にいた初恋のあの娘だった。
どうやら俺の腕から読み取った霊的設計図に付随された記憶から、かつて親愛を抱いた人物を引っ張り出してきたらしい。
そんな状態で俺に抱き着いてくるのだからそれはもう大騒ぎになった。
まったく俺に落ち度は無い筈だが、女の敵とまで罵られるし。
別な姿で頼む、という俺のお願いに対し怪訝そうな顔をするショーちゃんだったがすぐに姿を変えてくれた。
それが今のこの姿、ガリウス・ノーザン7歳である。
過去の俺の姿をトレースしたというその姿に女性陣が発狂した。
フィーに至っては「と、尊いですわ!」と叫び鼻血を出して倒れた。
違う姿にするべきだという俺の意見は当然のごとく却下された。
こうして紅顔の少年を連れて、敵のいなくなった海底ダンジョンを脱出している最中なのだが……何だろう、ショーちゃんの懐き方が半端なかった。
事ある後にあれはどうしたこうしたと俺に纏わりつく。
最初は微笑ましく見ていた女性陣も徐々に疑いの眼を向けてくる始末。
「だから俺は別に幼児愛好家でも男色家でもないぞ!
ショーちゃんがじゃれて来るから、相手をしてやってるだけだ」
「焦るとこが怪しい」
「ん。あんなガリウス見たことがない。
はっ、これだけアプローチしても靡かなかったのはまさか」
「まあまあ、良いではござらんか。
戦場では衆道もまた立派な趣味でござるよ。
ここはガリウス殿を生暖かく見守っていきましょう」
「そ、そうだね。
ボク、おっさんにどんな性的嗜好や性癖があっても受け入れるよ!」
「ん。良い女は男が信じて進む道を支えるべき。
例え石を投げられるアレな感じでも」
カエデ、気遣いは嬉しいがまったくフォローになってないぞ。
いや、一人だけ歓喜している奴もいるが。
「しっかし……本当に凄い懐かれ振りだな」
今まで微笑みながらも沈黙していたミズキが口を開く。
ミアとミイの安全がカエデ達により確保された事で、やっと安堵したのだろう。
「確かに皆が疑いたくなるのも分かるぞ」
「良かったら代わるが?」
「それは遠慮させて頂く」
クスクス笑いながら離れていくミズキ。
いつもの張り詰めた感じが抜けて凄く魅力的になったと思う。
そんな俺達のやり取りを聞いていたショーちゃんが不服そうに呟く。
「やれやれ……
我が主殿はどうにもこうにもツレない御方だ。
忠義と愛情を注ぐ我輩の、いったい何がご不満なのやら」
「不満?
そんなのは勿論決まっている。
お前が――俺を気に入っている事だ」
「皆、体調はどうだ?
ダンジョンコアが破壊されたことにより、ここは浄化され正常化した。
もう敵は出ない筈だが……油断はするな。
仕掛けてあるトラップは解除されていないかもしれない」
「主殿」
「それにしてもご苦労だったな、カエデにルゥ。
無事レティスと合流できたようで何よりだ。
すぐさま駆け付けてくれたのは感謝するが……命は大事にするんだぞ。
残酷に思える決断でも、救援を呼ぶのが正しい場合もあり得る」
「主殿」
「しかしまさかコアを破壊した事で転移陣が使用不可になるとはな。
さすがに歩いて戻るのは時間が掛かって仕方ない。
こうなると先に台座で脱出したレティス達が羨ましいな」
「あのさ、おっさん」
やたらテンションを上げて話す俺に何故かジト目で話しかけてくるシア。
俺は冷汗がこめかみを流れるのを感じつつ声掛けに応じる。
「ん? どうした、シア?」
「そのいかにもわざとらしい棒な対応はともかくさ……
いい加減、相手にしてあげたら?」
「同感ですわ」
「ん。賛同せざるをえない」
「わん!」
「確かにシア殿の仰る通りですな」
皆に責め立てられ俺は唇の端が引き攣ったように痙攣するのを感じた。
一同の視線が注がれているのは俺の腰元だ。
そこには無表情に、しかし熱烈な想いを込めてピタリと抱き着く少年がいた。
誰であろう、そいつの正体は従魔の腕輪により仲魔になったショゴスだ。
皆の冷たい視線を痛い程感じつつ、俺はこうなった経緯を思い返すのだった
ダンジョンマスターの記憶を持ち越し、あまつさえ取り込んだ霊的設計図を胎内に内包した不定形生命体ショゴス。
激戦の果てに突如現れるや親しげに語り掛けてくるという状況。
先程まで命のやり取りをしていたのだ、油断はならない。
だが警戒心を露にする俺達を前にそいつは深々と恭順の意を示した。
それは最早隷属といっても良いほどのレベルだった。
どうやら敵対する気はまったくないらしい。
疑う訳ではないが、真意を探りながら話し始めればそこはそれ。
会話好きな我がパーティの面々によってあっという間に打ち解けた。
決死の表情で舞い戻ってきたカエデとルゥにも事情を説明し、こうしてショゴスはパーティの一員としてまったくの違和感もなく溶け込んだのだ。
しかし愛称としてショーちゃんと名付けられたそいつは、何故か俺に対して深い執着を持ち纏わり付いてくる。
お前の主はシアなのだと幾度も説明するも、シアはあくまで従魔の腕輪の持ち主であり、いかなる理由故なのか本能的に俺を主と認識しているとの事。
当惑した俺は魔導具に詳しいリアにどういう事なのか話を聞いてみたが、非常に稀な例だがおそらく刷り込み……インプリンティングが為されたとの返答だった。
奴の自我の目覚めとなった一撃を俺が繰り出した事による弊害らしい。
まあ好かれるのは悪い事ではないが粘液状というのも問題だ。
不定形ゆえ何にでも変身できると豪語するショーちゃん。
ならば人型をとリクエストしたら何故か美少女になったのである!
しかも全裸。
よくよく見ればそれは俺の記憶の片隅にいた初恋のあの娘だった。
どうやら俺の腕から読み取った霊的設計図に付随された記憶から、かつて親愛を抱いた人物を引っ張り出してきたらしい。
そんな状態で俺に抱き着いてくるのだからそれはもう大騒ぎになった。
まったく俺に落ち度は無い筈だが、女の敵とまで罵られるし。
別な姿で頼む、という俺のお願いに対し怪訝そうな顔をするショーちゃんだったがすぐに姿を変えてくれた。
それが今のこの姿、ガリウス・ノーザン7歳である。
過去の俺の姿をトレースしたというその姿に女性陣が発狂した。
フィーに至っては「と、尊いですわ!」と叫び鼻血を出して倒れた。
違う姿にするべきだという俺の意見は当然のごとく却下された。
こうして紅顔の少年を連れて、敵のいなくなった海底ダンジョンを脱出している最中なのだが……何だろう、ショーちゃんの懐き方が半端なかった。
事ある後にあれはどうしたこうしたと俺に纏わりつく。
最初は微笑ましく見ていた女性陣も徐々に疑いの眼を向けてくる始末。
「だから俺は別に幼児愛好家でも男色家でもないぞ!
ショーちゃんがじゃれて来るから、相手をしてやってるだけだ」
「焦るとこが怪しい」
「ん。あんなガリウス見たことがない。
はっ、これだけアプローチしても靡かなかったのはまさか」
「まあまあ、良いではござらんか。
戦場では衆道もまた立派な趣味でござるよ。
ここはガリウス殿を生暖かく見守っていきましょう」
「そ、そうだね。
ボク、おっさんにどんな性的嗜好や性癖があっても受け入れるよ!」
「ん。良い女は男が信じて進む道を支えるべき。
例え石を投げられるアレな感じでも」
カエデ、気遣いは嬉しいがまったくフォローになってないぞ。
いや、一人だけ歓喜している奴もいるが。
「しっかし……本当に凄い懐かれ振りだな」
今まで微笑みながらも沈黙していたミズキが口を開く。
ミアとミイの安全がカエデ達により確保された事で、やっと安堵したのだろう。
「確かに皆が疑いたくなるのも分かるぞ」
「良かったら代わるが?」
「それは遠慮させて頂く」
クスクス笑いながら離れていくミズキ。
いつもの張り詰めた感じが抜けて凄く魅力的になったと思う。
そんな俺達のやり取りを聞いていたショーちゃんが不服そうに呟く。
「やれやれ……
我が主殿はどうにもこうにもツレない御方だ。
忠義と愛情を注ぐ我輩の、いったい何がご不満なのやら」
「不満?
そんなのは勿論決まっている。
お前が――俺を気に入っている事だ」
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