193 / 398
おっさん、疑われる
しおりを挟む
「主殿」
「皆、体調はどうだ?
ダンジョンコアが破壊されたことにより、ここは浄化され正常化した。
もう敵は出ない筈だが……油断はするな。
仕掛けてあるトラップは解除されていないかもしれない」
「主殿」
「それにしてもご苦労だったな、カエデにルゥ。
無事レティスと合流できたようで何よりだ。
すぐさま駆け付けてくれたのは感謝するが……命は大事にするんだぞ。
残酷に思える決断でも、救援を呼ぶのが正しい場合もあり得る」
「主殿」
「しかしまさかコアを破壊した事で転移陣が使用不可になるとはな。
さすがに歩いて戻るのは時間が掛かって仕方ない。
こうなると先に台座で脱出したレティス達が羨ましいな」
「あのさ、おっさん」
やたらテンションを上げて話す俺に何故かジト目で話しかけてくるシア。
俺は冷汗がこめかみを流れるのを感じつつ声掛けに応じる。
「ん? どうした、シア?」
「そのいかにもわざとらしい棒な対応はともかくさ……
いい加減、相手にしてあげたら?」
「同感ですわ」
「ん。賛同せざるをえない」
「わん!」
「確かにシア殿の仰る通りですな」
皆に責め立てられ俺は唇の端が引き攣ったように痙攣するのを感じた。
一同の視線が注がれているのは俺の腰元だ。
そこには無表情に、しかし熱烈な想いを込めてピタリと抱き着く少年がいた。
誰であろう、そいつの正体は従魔の腕輪により仲魔になったショゴスだ。
皆の冷たい視線を痛い程感じつつ、俺はこうなった経緯を思い返すのだった
ダンジョンマスターの記憶を持ち越し、あまつさえ取り込んだ霊的設計図を胎内に内包した不定形生命体ショゴス。
激戦の果てに突如現れるや親しげに語り掛けてくるという状況。
先程まで命のやり取りをしていたのだ、油断はならない。
だが警戒心を露にする俺達を前にそいつは深々と恭順の意を示した。
それは最早隷属といっても良いほどのレベルだった。
どうやら敵対する気はまったくないらしい。
疑う訳ではないが、真意を探りながら話し始めればそこはそれ。
会話好きな我がパーティの面々によってあっという間に打ち解けた。
決死の表情で舞い戻ってきたカエデとルゥにも事情を説明し、こうしてショゴスはパーティの一員としてまったくの違和感もなく溶け込んだのだ。
しかし愛称としてショーちゃんと名付けられたそいつは、何故か俺に対して深い執着を持ち纏わり付いてくる。
お前の主はシアなのだと幾度も説明するも、シアはあくまで従魔の腕輪の持ち主であり、いかなる理由故なのか本能的に俺を主と認識しているとの事。
当惑した俺は魔導具に詳しいリアにどういう事なのか話を聞いてみたが、非常に稀な例だがおそらく刷り込み……インプリンティングが為されたとの返答だった。
奴の自我の目覚めとなった一撃を俺が繰り出した事による弊害らしい。
まあ好かれるのは悪い事ではないが粘液状というのも問題だ。
不定形ゆえ何にでも変身できると豪語するショーちゃん。
ならば人型をとリクエストしたら何故か美少女になったのである!
しかも全裸。
よくよく見ればそれは俺の記憶の片隅にいた初恋のあの娘だった。
どうやら俺の腕から読み取った霊的設計図に付随された記憶から、かつて親愛を抱いた人物を引っ張り出してきたらしい。
そんな状態で俺に抱き着いてくるのだからそれはもう大騒ぎになった。
まったく俺に落ち度は無い筈だが、女の敵とまで罵られるし。
別な姿で頼む、という俺のお願いに対し怪訝そうな顔をするショーちゃんだったがすぐに姿を変えてくれた。
それが今のこの姿、ガリウス・ノーザン7歳である。
過去の俺の姿をトレースしたというその姿に女性陣が発狂した。
フィーに至っては「と、尊いですわ!」と叫び鼻血を出して倒れた。
違う姿にするべきだという俺の意見は当然のごとく却下された。
こうして紅顔の少年を連れて、敵のいなくなった海底ダンジョンを脱出している最中なのだが……何だろう、ショーちゃんの懐き方が半端なかった。
事ある後にあれはどうしたこうしたと俺に纏わりつく。
最初は微笑ましく見ていた女性陣も徐々に疑いの眼を向けてくる始末。
「だから俺は別に幼児愛好家でも男色家でもないぞ!
ショーちゃんがじゃれて来るから、相手をしてやってるだけだ」
「焦るとこが怪しい」
「ん。あんなガリウス見たことがない。
はっ、これだけアプローチしても靡かなかったのはまさか」
「まあまあ、良いではござらんか。
戦場では衆道もまた立派な趣味でござるよ。
ここはガリウス殿を生暖かく見守っていきましょう」
「そ、そうだね。
ボク、おっさんにどんな性的嗜好や性癖があっても受け入れるよ!」
「ん。良い女は男が信じて進む道を支えるべき。
例え石を投げられるアレな感じでも」
カエデ、気遣いは嬉しいがまったくフォローになってないぞ。
いや、一人だけ歓喜している奴もいるが。
「しっかし……本当に凄い懐かれ振りだな」
今まで微笑みながらも沈黙していたミズキが口を開く。
ミアとミイの安全がカエデ達により確保された事で、やっと安堵したのだろう。
「確かに皆が疑いたくなるのも分かるぞ」
「良かったら代わるが?」
「それは遠慮させて頂く」
クスクス笑いながら離れていくミズキ。
いつもの張り詰めた感じが抜けて凄く魅力的になったと思う。
そんな俺達のやり取りを聞いていたショーちゃんが不服そうに呟く。
「やれやれ……
我が主殿はどうにもこうにもツレない御方だ。
忠義と愛情を注ぐ我輩の、いったい何がご不満なのやら」
「不満?
そんなのは勿論決まっている。
お前が――俺を気に入っている事だ」
「皆、体調はどうだ?
ダンジョンコアが破壊されたことにより、ここは浄化され正常化した。
もう敵は出ない筈だが……油断はするな。
仕掛けてあるトラップは解除されていないかもしれない」
「主殿」
「それにしてもご苦労だったな、カエデにルゥ。
無事レティスと合流できたようで何よりだ。
すぐさま駆け付けてくれたのは感謝するが……命は大事にするんだぞ。
残酷に思える決断でも、救援を呼ぶのが正しい場合もあり得る」
「主殿」
「しかしまさかコアを破壊した事で転移陣が使用不可になるとはな。
さすがに歩いて戻るのは時間が掛かって仕方ない。
こうなると先に台座で脱出したレティス達が羨ましいな」
「あのさ、おっさん」
やたらテンションを上げて話す俺に何故かジト目で話しかけてくるシア。
俺は冷汗がこめかみを流れるのを感じつつ声掛けに応じる。
「ん? どうした、シア?」
「そのいかにもわざとらしい棒な対応はともかくさ……
いい加減、相手にしてあげたら?」
「同感ですわ」
「ん。賛同せざるをえない」
「わん!」
「確かにシア殿の仰る通りですな」
皆に責め立てられ俺は唇の端が引き攣ったように痙攣するのを感じた。
一同の視線が注がれているのは俺の腰元だ。
そこには無表情に、しかし熱烈な想いを込めてピタリと抱き着く少年がいた。
誰であろう、そいつの正体は従魔の腕輪により仲魔になったショゴスだ。
皆の冷たい視線を痛い程感じつつ、俺はこうなった経緯を思い返すのだった
ダンジョンマスターの記憶を持ち越し、あまつさえ取り込んだ霊的設計図を胎内に内包した不定形生命体ショゴス。
激戦の果てに突如現れるや親しげに語り掛けてくるという状況。
先程まで命のやり取りをしていたのだ、油断はならない。
だが警戒心を露にする俺達を前にそいつは深々と恭順の意を示した。
それは最早隷属といっても良いほどのレベルだった。
どうやら敵対する気はまったくないらしい。
疑う訳ではないが、真意を探りながら話し始めればそこはそれ。
会話好きな我がパーティの面々によってあっという間に打ち解けた。
決死の表情で舞い戻ってきたカエデとルゥにも事情を説明し、こうしてショゴスはパーティの一員としてまったくの違和感もなく溶け込んだのだ。
しかし愛称としてショーちゃんと名付けられたそいつは、何故か俺に対して深い執着を持ち纏わり付いてくる。
お前の主はシアなのだと幾度も説明するも、シアはあくまで従魔の腕輪の持ち主であり、いかなる理由故なのか本能的に俺を主と認識しているとの事。
当惑した俺は魔導具に詳しいリアにどういう事なのか話を聞いてみたが、非常に稀な例だがおそらく刷り込み……インプリンティングが為されたとの返答だった。
奴の自我の目覚めとなった一撃を俺が繰り出した事による弊害らしい。
まあ好かれるのは悪い事ではないが粘液状というのも問題だ。
不定形ゆえ何にでも変身できると豪語するショーちゃん。
ならば人型をとリクエストしたら何故か美少女になったのである!
しかも全裸。
よくよく見ればそれは俺の記憶の片隅にいた初恋のあの娘だった。
どうやら俺の腕から読み取った霊的設計図に付随された記憶から、かつて親愛を抱いた人物を引っ張り出してきたらしい。
そんな状態で俺に抱き着いてくるのだからそれはもう大騒ぎになった。
まったく俺に落ち度は無い筈だが、女の敵とまで罵られるし。
別な姿で頼む、という俺のお願いに対し怪訝そうな顔をするショーちゃんだったがすぐに姿を変えてくれた。
それが今のこの姿、ガリウス・ノーザン7歳である。
過去の俺の姿をトレースしたというその姿に女性陣が発狂した。
フィーに至っては「と、尊いですわ!」と叫び鼻血を出して倒れた。
違う姿にするべきだという俺の意見は当然のごとく却下された。
こうして紅顔の少年を連れて、敵のいなくなった海底ダンジョンを脱出している最中なのだが……何だろう、ショーちゃんの懐き方が半端なかった。
事ある後にあれはどうしたこうしたと俺に纏わりつく。
最初は微笑ましく見ていた女性陣も徐々に疑いの眼を向けてくる始末。
「だから俺は別に幼児愛好家でも男色家でもないぞ!
ショーちゃんがじゃれて来るから、相手をしてやってるだけだ」
「焦るとこが怪しい」
「ん。あんなガリウス見たことがない。
はっ、これだけアプローチしても靡かなかったのはまさか」
「まあまあ、良いではござらんか。
戦場では衆道もまた立派な趣味でござるよ。
ここはガリウス殿を生暖かく見守っていきましょう」
「そ、そうだね。
ボク、おっさんにどんな性的嗜好や性癖があっても受け入れるよ!」
「ん。良い女は男が信じて進む道を支えるべき。
例え石を投げられるアレな感じでも」
カエデ、気遣いは嬉しいがまったくフォローになってないぞ。
いや、一人だけ歓喜している奴もいるが。
「しっかし……本当に凄い懐かれ振りだな」
今まで微笑みながらも沈黙していたミズキが口を開く。
ミアとミイの安全がカエデ達により確保された事で、やっと安堵したのだろう。
「確かに皆が疑いたくなるのも分かるぞ」
「良かったら代わるが?」
「それは遠慮させて頂く」
クスクス笑いながら離れていくミズキ。
いつもの張り詰めた感じが抜けて凄く魅力的になったと思う。
そんな俺達のやり取りを聞いていたショーちゃんが不服そうに呟く。
「やれやれ……
我が主殿はどうにもこうにもツレない御方だ。
忠義と愛情を注ぐ我輩の、いったい何がご不満なのやら」
「不満?
そんなのは勿論決まっている。
お前が――俺を気に入っている事だ」
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた
Mr.Six
ファンタジー
仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。
訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。
「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」
そう開き直り、この世界を探求することに――
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる