勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
194 / 398

おっさん、策を見破る

しおりを挟む
「もうすぐ出口……
 っていうか、海底ダンジョン【龍の宮】入口だな」

 自在に階層を移動できる転移陣がコアを砕いたことにより発動しなくなった為、延々と歩く事――三時間。
 俺達は遂に龍神族の遺跡【白亜の都】へ通じる出入口まで来ていた。
 邪魔な外敵どもは【世界を支えし龍】の胎内でもあるダンジョンが浄化され正常化した事によって出現しなくなっていたので、俺達を阻む者はいない。
 心配だった罠も龍神の配慮なのか全て解除されており行程は実にスムーズだ。
 まあこうなる事は既に【神龍眼】に目覚めた時に【読んで】いたのだが……
 未だ自在に扱いきれぬこの【力】故、どこに落とし穴があるか分からない。
 油断は禁物だろう。
 例えばこれから先、俺達が揃って外に出たことは既に【識って】いる。
 ただ――怪我もせず無事に出れたのかまでは分からない。
 もっと内容を読み込めば描写はされているのだろうが、今の俺のスキルレベルでは大まかな状況しか把握出来ないのだ。
 つまり五体満足かどうかは最善を尽くして対応していくしかない。
 俗にいう行間を読むというやつだ。
 イレギュラーな事態というのは常に潜んでいる。
 なのでしっかり備えなくてはならないだろう。
 たとえ――これから起きる事を理解していても。

「手筈と内容については事前に説明した通りだ。
 かなりきついものになると思うが……やれるか?」
「合点承知の助。
 ボク達に任せてよ、おっさん!
 ねえ、ルゥ?」
「わん!」
「ん。そこは信じてほしい」
「そうでござるな」
「ここまでお膳立て頂いたのですもの……
 どうか大船に乗った気持ちでお任せください」
「確かに。まさに重畳。
 我々に対して愚問ですよ、主殿。
 我輩を含む皆様は相応の覚悟を以って貴方に付き従っているのですから」
「頼もしい返事だな。
 感謝に堪えないよ、お前達の存在には。
 あと俺達に付き合わせる形になるが……ミズキも本当に問題ないか?」
「無論だ。
 貴様と皆が来てくれなかったら、私と仲間は間違いなく全滅していた。
 この恩義を少しでも返せるなら一肌脱ごう」
「おやおや。
 ミズキ様がそれ以上脱ぐことになったら大変になるのでは?」
「こら、ショーちゃん!
 なんで君は可愛い顔して一言多いのかな!」
「わふわふ(うんうん)」
「ん。シアの意見に激しく同意――
 これは紛れもなく濃厚なガリウスの霊的設計図(遺伝子)を感じる」
「まあまあ、各々方。
 中年というのは拙者達が普段思っても口に出さないことを発言してしまうもの。
 ガリウス殿の親父ギャグ的セクハラ成分をショーちゃんが取り込んだというのならそれも致し方無い事かと」
「お前ら……俺はそこまでおっさんじゃないぞ。
 ちゃんとTPOは弁えている筈だ……多分。
 ……って、どうしたんだフィー? そんなとこで何を?」
「ど、毒舌美少年天使……
 これってマジで神じゃございません!?
 ああ、主よ……奇跡は本当にあったのですね♪」

 何故か感涙を流しながら跪いて明後日の方向に祈りを捧げ始めるフィー。
 お前の神様はそんなことにはまったく関心がないと思うぞ……絶対に。
 俺は【神龍眼】も発動していないのに痛くなり始めた頭を押さえながら、最終確認を行う。
 
「油断はするな。
 だが――全力を出し切れば決して勝てない相手じゃない。
 各自が仕事を全うしろ」
「「「「「はい!」」」」」

 こうして俺達は【龍の宮】を出た。


















「無事だったのか、君達!」

 龍の宮を出た俺達を待っていたのは勇壮な騎士風装束に身を包んだ一団だった。
 各自揃いの抗魔力付与鎧に様々な魔術兵装。
 装備や立ち振る舞いを一瞥しただけで一流であることを漂わせている。
 彼らはその名も名高きS級パーティ【黄金の夜明け】団だ。
 5人一組をユニット単位とした魔術師団であり超実戦派。
 三つあるユニットの頭目が全員Sランクということからも、そのレベルの高さを窺わせる。
 フードを頭からすっぽり被っている為、各自の顔はよく見えない。
 今までの探索ではすれ違いをしておりレティスやレファス、酒場の主人から話は聞いていたものの実際に会ったことはなかった。
 なので俺は唯一顔を晒して声を掛けてきた金髪碧眼のイケメンに声を掛ける。

「あなた方は?」
「おっと、これは名乗りもせず失礼をしたね。
 僕達はこのダンジョンにアタックしていた【黄金の夜明け】団の一翼だ。
 僕は青薔薇の階位を頂戴しているマクレガーという。
 龍神の巫女レティスさんから緊急要請があってね。
 遭難していると思しきパーティの救出を請け負い、こうして仲間を招集して参上したんだけど……どうやら少し遅かったみたいだね」

 言って茶目っ気たっぷりにウインクをするマクレガー。
 視線を向けられたミズキがゲンナリとした表情で美麗な眉を顰める。
 道中聞いた話だと幾度かしつこく言い寄られていたらしい。
 まあそこは男嫌いで通っているミズキ、一刀両断でお断りしてきたらしいが。

「何せよ無事で良かった。
 それに転移陣が発動しないという事は――君達がコアを砕いたのかな?」
「ああ、そうだ」
「へえ~それはおめでとう!
 君は確か【気紛れ明星】の頭目、ガリウス君だね。
 見眼麗しい女性陣に囲まれていると聞いていたが……噂は本当だな。
 こうしてお会いするのは初めてだが、正直羨ましいよ」

 無邪気に祝福の言葉を告げるマクレガー。
 裏表のないその顔に心の奥が少しざわめく。
 だから本筋には必要のない事だが、意地悪く少しだけ言葉を交わしてみる。

「……なあ、マクレガー。
 俺からも一つ訊いていいか?」
「なんだい?」
「ダンジョン攻略の依頼を請け負ったパーティはスタンピードに備え常に連絡のつく場所――及び、火急時に駆けつけられる範囲に待機しなくてはならない。
 有り体にいえばダンジョンまで一時間以内に到着しなくてはならない。
 レティスが今朝連絡をした時――あんた達はどこにいたんだ?」
「ああ、それは運が悪くてね。
 たまたま団の都合で本拠地(ホーム)に転移していたんだ。
 今後の事で『色々』打ち合わせがあったのでね。
 焦っていたレティスさんには申し訳ないことをしたと思う」
「そうか……それは不幸だったな。
 まあ長いダンジョンアタックの日々、そういう不幸もある」
「理解頂けて嬉しいよ。
 Sランクともなると日常的な雑事が多くてね……『手配』に苦慮する」
「そうだな……色々あるだろうし、苦労を偲ばれる。
 質問ついでに――あともう一つだけいいか?」
「構わないとも」
「転移不可能な外部からここに来るにはレティスの操る台座が必要なんだが……
 あんたらはどうやってここに来たんだ?」
「それは無論、台座に乗って……」
「レティスが操る台座で?」
「ああ」
「――おかしいな。
 レティスはずっと俺達と行動を共にしていたのにな。
 彼女らが操る台座ごと」
「それは………」
「まあ、何にせよ訊きたかったのは以上だ。
 貴重な時間を割いて貰って悪かったな。
 ダンジョンコアも砕いた事だし今は迷宮主との対決でパーティは疲弊している。
 俺達はここでお暇させてもらうよ」

 無言のまま固まっているマクレガーに声を掛け、脇を通り過ぎる。
 背後を見せた瞬間、濃密な殺気と共に絹を裂くように立ち昇るのは皆の悲鳴。
 だが――
 
「――何故、Aランクごときが僕の必殺の一撃を防げる?」
「答えは簡単だ。
 最初から警戒していたからだ……お前が襲い掛かってくるのを」

 眼にも止まらぬ速さで抜剣し高速旋回。
 魔導付与された剣を手に凄まじい膂力で斬り掛かってきたマクレガー。
 完全に不意打ちとなったが――
 どんな鋭い一撃も、事前に来ると分かっていれば何ら脅威ではない。
 同じく旋回し高速抜刀した樫名刀で迎え撃った俺。
 お互いの吐息が感じるほどの距離で鍔迫り合いながら、最後のダメ押しをする。
 
「陽動から本命まであんたの策はお見通しだぜ。
 残念だったな、十三魔将……【千貌】のラキソベロン」

 逃げ道を全て断ち切るような俺の言葉に――
 マクレガーこと【千貌】のラキソベロンは悪びれもせずニヤリと微笑んだ。




 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...