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おっさん、策を見破る
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「もうすぐ出口……
っていうか、海底ダンジョン【龍の宮】入口だな」
自在に階層を移動できる転移陣がコアを砕いたことにより発動しなくなった為、延々と歩く事――三時間。
俺達は遂に龍神族の遺跡【白亜の都】へ通じる出入口まで来ていた。
邪魔な外敵どもは【世界を支えし龍】の胎内でもあるダンジョンが浄化され正常化した事によって出現しなくなっていたので、俺達を阻む者はいない。
心配だった罠も龍神の配慮なのか全て解除されており行程は実にスムーズだ。
まあこうなる事は既に【神龍眼】に目覚めた時に【読んで】いたのだが……
未だ自在に扱いきれぬこの【力】故、どこに落とし穴があるか分からない。
油断は禁物だろう。
例えばこれから先、俺達が揃って外に出たことは既に【識って】いる。
ただ――怪我もせず無事に出れたのかまでは分からない。
もっと内容を読み込めば描写はされているのだろうが、今の俺のスキルレベルでは大まかな状況しか把握出来ないのだ。
つまり五体満足かどうかは最善を尽くして対応していくしかない。
俗にいう行間を読むというやつだ。
イレギュラーな事態というのは常に潜んでいる。
なのでしっかり備えなくてはならないだろう。
たとえ――これから起きる事を理解していても。
「手筈と内容については事前に説明した通りだ。
かなりきついものになると思うが……やれるか?」
「合点承知の助。
ボク達に任せてよ、おっさん!
ねえ、ルゥ?」
「わん!」
「ん。そこは信じてほしい」
「そうでござるな」
「ここまでお膳立て頂いたのですもの……
どうか大船に乗った気持ちでお任せください」
「確かに。まさに重畳。
我々に対して愚問ですよ、主殿。
我輩を含む皆様は相応の覚悟を以って貴方に付き従っているのですから」
「頼もしい返事だな。
感謝に堪えないよ、お前達の存在には。
あと俺達に付き合わせる形になるが……ミズキも本当に問題ないか?」
「無論だ。
貴様と皆が来てくれなかったら、私と仲間は間違いなく全滅していた。
この恩義を少しでも返せるなら一肌脱ごう」
「おやおや。
ミズキ様がそれ以上脱ぐことになったら大変になるのでは?」
「こら、ショーちゃん!
なんで君は可愛い顔して一言多いのかな!」
「わふわふ(うんうん)」
「ん。シアの意見に激しく同意――
これは紛れもなく濃厚なガリウスの霊的設計図(遺伝子)を感じる」
「まあまあ、各々方。
中年というのは拙者達が普段思っても口に出さないことを発言してしまうもの。
ガリウス殿の親父ギャグ的セクハラ成分をショーちゃんが取り込んだというのならそれも致し方無い事かと」
「お前ら……俺はそこまでおっさんじゃないぞ。
ちゃんとTPOは弁えている筈だ……多分。
……って、どうしたんだフィー? そんなとこで何を?」
「ど、毒舌美少年天使……
これってマジで神じゃございません!?
ああ、主よ……奇跡は本当にあったのですね♪」
何故か感涙を流しながら跪いて明後日の方向に祈りを捧げ始めるフィー。
お前の神様はそんなことにはまったく関心がないと思うぞ……絶対に。
俺は【神龍眼】も発動していないのに痛くなり始めた頭を押さえながら、最終確認を行う。
「油断はするな。
だが――全力を出し切れば決して勝てない相手じゃない。
各自が仕事を全うしろ」
「「「「「はい!」」」」」
こうして俺達は【龍の宮】を出た。
「無事だったのか、君達!」
龍の宮を出た俺達を待っていたのは勇壮な騎士風装束に身を包んだ一団だった。
各自揃いの抗魔力付与鎧に様々な魔術兵装。
装備や立ち振る舞いを一瞥しただけで一流であることを漂わせている。
彼らはその名も名高きS級パーティ【黄金の夜明け】団だ。
5人一組をユニット単位とした魔術師団であり超実戦派。
三つあるユニットの頭目が全員Sランクということからも、そのレベルの高さを窺わせる。
フードを頭からすっぽり被っている為、各自の顔はよく見えない。
今までの探索ではすれ違いをしておりレティスやレファス、酒場の主人から話は聞いていたものの実際に会ったことはなかった。
なので俺は唯一顔を晒して声を掛けてきた金髪碧眼のイケメンに声を掛ける。
「あなた方は?」
「おっと、これは名乗りもせず失礼をしたね。
僕達はこのダンジョンにアタックしていた【黄金の夜明け】団の一翼だ。
僕は青薔薇の階位を頂戴しているマクレガーという。
龍神の巫女レティスさんから緊急要請があってね。
遭難していると思しきパーティの救出を請け負い、こうして仲間を招集して参上したんだけど……どうやら少し遅かったみたいだね」
言って茶目っ気たっぷりにウインクをするマクレガー。
視線を向けられたミズキがゲンナリとした表情で美麗な眉を顰める。
道中聞いた話だと幾度かしつこく言い寄られていたらしい。
まあそこは男嫌いで通っているミズキ、一刀両断でお断りしてきたらしいが。
「何せよ無事で良かった。
それに転移陣が発動しないという事は――君達がコアを砕いたのかな?」
「ああ、そうだ」
「へえ~それはおめでとう!
君は確か【気紛れ明星】の頭目、ガリウス君だね。
見眼麗しい女性陣に囲まれていると聞いていたが……噂は本当だな。
こうしてお会いするのは初めてだが、正直羨ましいよ」
無邪気に祝福の言葉を告げるマクレガー。
裏表のないその顔に心の奥が少しざわめく。
だから本筋には必要のない事だが、意地悪く少しだけ言葉を交わしてみる。
「……なあ、マクレガー。
俺からも一つ訊いていいか?」
「なんだい?」
「ダンジョン攻略の依頼を請け負ったパーティはスタンピードに備え常に連絡のつく場所――及び、火急時に駆けつけられる範囲に待機しなくてはならない。
有り体にいえばダンジョンまで一時間以内に到着しなくてはならない。
レティスが今朝連絡をした時――あんた達はどこにいたんだ?」
「ああ、それは運が悪くてね。
たまたま団の都合で本拠地(ホーム)に転移していたんだ。
今後の事で『色々』打ち合わせがあったのでね。
焦っていたレティスさんには申し訳ないことをしたと思う」
「そうか……それは不幸だったな。
まあ長いダンジョンアタックの日々、そういう不幸もある」
「理解頂けて嬉しいよ。
Sランクともなると日常的な雑事が多くてね……『手配』に苦慮する」
「そうだな……色々あるだろうし、苦労を偲ばれる。
質問ついでに――あともう一つだけいいか?」
「構わないとも」
「転移不可能な外部からここに来るにはレティスの操る台座が必要なんだが……
あんたらはどうやってここに来たんだ?」
「それは無論、台座に乗って……」
「レティスが操る台座で?」
「ああ」
「――おかしいな。
レティスはずっと俺達と行動を共にしていたのにな。
彼女らが操る台座ごと」
「それは………」
「まあ、何にせよ訊きたかったのは以上だ。
貴重な時間を割いて貰って悪かったな。
ダンジョンコアも砕いた事だし今は迷宮主との対決でパーティは疲弊している。
俺達はここでお暇させてもらうよ」
無言のまま固まっているマクレガーに声を掛け、脇を通り過ぎる。
背後を見せた瞬間、濃密な殺気と共に絹を裂くように立ち昇るのは皆の悲鳴。
だが――
「――何故、Aランクごときが僕の必殺の一撃を防げる?」
「答えは簡単だ。
最初から警戒していたからだ……お前が襲い掛かってくるのを」
眼にも止まらぬ速さで抜剣し高速旋回。
魔導付与された剣を手に凄まじい膂力で斬り掛かってきたマクレガー。
完全に不意打ちとなったが――
どんな鋭い一撃も、事前に来ると分かっていれば何ら脅威ではない。
同じく旋回し高速抜刀した樫名刀で迎え撃った俺。
お互いの吐息が感じるほどの距離で鍔迫り合いながら、最後のダメ押しをする。
「陽動から本命まであんたの策はお見通しだぜ。
残念だったな、十三魔将……【千貌】のラキソベロン」
逃げ道を全て断ち切るような俺の言葉に――
マクレガーこと【千貌】のラキソベロンは悪びれもせずニヤリと微笑んだ。
っていうか、海底ダンジョン【龍の宮】入口だな」
自在に階層を移動できる転移陣がコアを砕いたことにより発動しなくなった為、延々と歩く事――三時間。
俺達は遂に龍神族の遺跡【白亜の都】へ通じる出入口まで来ていた。
邪魔な外敵どもは【世界を支えし龍】の胎内でもあるダンジョンが浄化され正常化した事によって出現しなくなっていたので、俺達を阻む者はいない。
心配だった罠も龍神の配慮なのか全て解除されており行程は実にスムーズだ。
まあこうなる事は既に【神龍眼】に目覚めた時に【読んで】いたのだが……
未だ自在に扱いきれぬこの【力】故、どこに落とし穴があるか分からない。
油断は禁物だろう。
例えばこれから先、俺達が揃って外に出たことは既に【識って】いる。
ただ――怪我もせず無事に出れたのかまでは分からない。
もっと内容を読み込めば描写はされているのだろうが、今の俺のスキルレベルでは大まかな状況しか把握出来ないのだ。
つまり五体満足かどうかは最善を尽くして対応していくしかない。
俗にいう行間を読むというやつだ。
イレギュラーな事態というのは常に潜んでいる。
なのでしっかり備えなくてはならないだろう。
たとえ――これから起きる事を理解していても。
「手筈と内容については事前に説明した通りだ。
かなりきついものになると思うが……やれるか?」
「合点承知の助。
ボク達に任せてよ、おっさん!
ねえ、ルゥ?」
「わん!」
「ん。そこは信じてほしい」
「そうでござるな」
「ここまでお膳立て頂いたのですもの……
どうか大船に乗った気持ちでお任せください」
「確かに。まさに重畳。
我々に対して愚問ですよ、主殿。
我輩を含む皆様は相応の覚悟を以って貴方に付き従っているのですから」
「頼もしい返事だな。
感謝に堪えないよ、お前達の存在には。
あと俺達に付き合わせる形になるが……ミズキも本当に問題ないか?」
「無論だ。
貴様と皆が来てくれなかったら、私と仲間は間違いなく全滅していた。
この恩義を少しでも返せるなら一肌脱ごう」
「おやおや。
ミズキ様がそれ以上脱ぐことになったら大変になるのでは?」
「こら、ショーちゃん!
なんで君は可愛い顔して一言多いのかな!」
「わふわふ(うんうん)」
「ん。シアの意見に激しく同意――
これは紛れもなく濃厚なガリウスの霊的設計図(遺伝子)を感じる」
「まあまあ、各々方。
中年というのは拙者達が普段思っても口に出さないことを発言してしまうもの。
ガリウス殿の親父ギャグ的セクハラ成分をショーちゃんが取り込んだというのならそれも致し方無い事かと」
「お前ら……俺はそこまでおっさんじゃないぞ。
ちゃんとTPOは弁えている筈だ……多分。
……って、どうしたんだフィー? そんなとこで何を?」
「ど、毒舌美少年天使……
これってマジで神じゃございません!?
ああ、主よ……奇跡は本当にあったのですね♪」
何故か感涙を流しながら跪いて明後日の方向に祈りを捧げ始めるフィー。
お前の神様はそんなことにはまったく関心がないと思うぞ……絶対に。
俺は【神龍眼】も発動していないのに痛くなり始めた頭を押さえながら、最終確認を行う。
「油断はするな。
だが――全力を出し切れば決して勝てない相手じゃない。
各自が仕事を全うしろ」
「「「「「はい!」」」」」
こうして俺達は【龍の宮】を出た。
「無事だったのか、君達!」
龍の宮を出た俺達を待っていたのは勇壮な騎士風装束に身を包んだ一団だった。
各自揃いの抗魔力付与鎧に様々な魔術兵装。
装備や立ち振る舞いを一瞥しただけで一流であることを漂わせている。
彼らはその名も名高きS級パーティ【黄金の夜明け】団だ。
5人一組をユニット単位とした魔術師団であり超実戦派。
三つあるユニットの頭目が全員Sランクということからも、そのレベルの高さを窺わせる。
フードを頭からすっぽり被っている為、各自の顔はよく見えない。
今までの探索ではすれ違いをしておりレティスやレファス、酒場の主人から話は聞いていたものの実際に会ったことはなかった。
なので俺は唯一顔を晒して声を掛けてきた金髪碧眼のイケメンに声を掛ける。
「あなた方は?」
「おっと、これは名乗りもせず失礼をしたね。
僕達はこのダンジョンにアタックしていた【黄金の夜明け】団の一翼だ。
僕は青薔薇の階位を頂戴しているマクレガーという。
龍神の巫女レティスさんから緊急要請があってね。
遭難していると思しきパーティの救出を請け負い、こうして仲間を招集して参上したんだけど……どうやら少し遅かったみたいだね」
言って茶目っ気たっぷりにウインクをするマクレガー。
視線を向けられたミズキがゲンナリとした表情で美麗な眉を顰める。
道中聞いた話だと幾度かしつこく言い寄られていたらしい。
まあそこは男嫌いで通っているミズキ、一刀両断でお断りしてきたらしいが。
「何せよ無事で良かった。
それに転移陣が発動しないという事は――君達がコアを砕いたのかな?」
「ああ、そうだ」
「へえ~それはおめでとう!
君は確か【気紛れ明星】の頭目、ガリウス君だね。
見眼麗しい女性陣に囲まれていると聞いていたが……噂は本当だな。
こうしてお会いするのは初めてだが、正直羨ましいよ」
無邪気に祝福の言葉を告げるマクレガー。
裏表のないその顔に心の奥が少しざわめく。
だから本筋には必要のない事だが、意地悪く少しだけ言葉を交わしてみる。
「……なあ、マクレガー。
俺からも一つ訊いていいか?」
「なんだい?」
「ダンジョン攻略の依頼を請け負ったパーティはスタンピードに備え常に連絡のつく場所――及び、火急時に駆けつけられる範囲に待機しなくてはならない。
有り体にいえばダンジョンまで一時間以内に到着しなくてはならない。
レティスが今朝連絡をした時――あんた達はどこにいたんだ?」
「ああ、それは運が悪くてね。
たまたま団の都合で本拠地(ホーム)に転移していたんだ。
今後の事で『色々』打ち合わせがあったのでね。
焦っていたレティスさんには申し訳ないことをしたと思う」
「そうか……それは不幸だったな。
まあ長いダンジョンアタックの日々、そういう不幸もある」
「理解頂けて嬉しいよ。
Sランクともなると日常的な雑事が多くてね……『手配』に苦慮する」
「そうだな……色々あるだろうし、苦労を偲ばれる。
質問ついでに――あともう一つだけいいか?」
「構わないとも」
「転移不可能な外部からここに来るにはレティスの操る台座が必要なんだが……
あんたらはどうやってここに来たんだ?」
「それは無論、台座に乗って……」
「レティスが操る台座で?」
「ああ」
「――おかしいな。
レティスはずっと俺達と行動を共にしていたのにな。
彼女らが操る台座ごと」
「それは………」
「まあ、何にせよ訊きたかったのは以上だ。
貴重な時間を割いて貰って悪かったな。
ダンジョンコアも砕いた事だし今は迷宮主との対決でパーティは疲弊している。
俺達はここでお暇させてもらうよ」
無言のまま固まっているマクレガーに声を掛け、脇を通り過ぎる。
背後を見せた瞬間、濃密な殺気と共に絹を裂くように立ち昇るのは皆の悲鳴。
だが――
「――何故、Aランクごときが僕の必殺の一撃を防げる?」
「答えは簡単だ。
最初から警戒していたからだ……お前が襲い掛かってくるのを」
眼にも止まらぬ速さで抜剣し高速旋回。
魔導付与された剣を手に凄まじい膂力で斬り掛かってきたマクレガー。
完全に不意打ちとなったが――
どんな鋭い一撃も、事前に来ると分かっていれば何ら脅威ではない。
同じく旋回し高速抜刀した樫名刀で迎え撃った俺。
お互いの吐息が感じるほどの距離で鍔迫り合いながら、最後のダメ押しをする。
「陽動から本命まであんたの策はお見通しだぜ。
残念だったな、十三魔将……【千貌】のラキソベロン」
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