勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、了承を返す

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「――という訳で、王都で開催されるトーナメントに招かれている。
 レイナの推薦もあってか精霊都市代表として、な」

 誰が聞き耳を立てているか分からない状況で話すような内容ではない。
 改めて俺達の家に場所を変えた後、俺はハイドラント……正確にはレイナと会談した内容を皆に説明した。
 驚愕のあまり固まる一同だが――むべもあるまい。
 魔族の復活、そして侵攻……
 同じ侵略者である魔神共と激戦を繰り広げてきた俺達だが、お伽噺に謳われる様な存在が復活したなどと言われてもピンとこないのだろう。
 さらにパーティの行く末にも関わる事だしな。
 俺は一同の顔を見渡すと重く感じる口を開き謝罪する。

「パーティの頭目とはいえ、勝手に話を進めてしまってすまない。
 だが……俺個人は今回の話を受けたいと思う。
 クラスチェンジ承認関連の事もある。
 しかし一番は――魔族の跳梁跋扈を赦す訳にはいかない。
 危うい均衡で膠着状態にあるとはいえ、奴等の赴く先にあるのは破滅の未来。
 俺達に戦局を変える力がある訳ではないが、戦う事は出来る。
 ならば俺はこの火急の事態を放っておけない」

 重苦しく告げ、頭を下げる。
 反応は劇的だった。

「えええええ~~~~~!!
 お、おっさんってば遂にS級に命じられるの!?」
「わんわん♪」
「ん。大変めでたい」
「感慨深いものがありますわ!」
「大変な名誉でござるよ、これは!」
「いつか貴様なら辿り着くとは思っていたが……さすがだな」
「我が主殿の偉大さにやっと世間が追い付きましたね」

 三者三様、怒号とごとき祝福の嵐。
 あれ……? ここは悲壮感に溢れた湿っぽい会話になるとこでは?
 嬉々として詰め寄ってきた皆の剣幕に押されながら、俺は思わず訊き返す。

「み、皆はいいのか?
 魔神だけに留まらず魔族とも事を構えるようになるんだぞ?」
「だって、ねえ?」
「きゃうん(ふんふん)」
「ん。現状もそんなに変わらない」
「既に異界侵略者である魔神とは敵対してますし」
「まあこの間の戦いで間違いなく目を付けられましたからな」
「この世界に溢れる危機の一つだろう? 何を今更」
「同感。我輩らの力を結集し対抗すれば良いでしょう」

 悲愴感を以って伺った筈だが、逆に反論された。
 その意見が自暴自棄なものでなく確固たる自信に裏付けされている事に驚く。
 そっか……皆も成長してるんだな。
 以前シア達に指摘された事だが、どこか俺は皆を侮っていた。
 いや、侮るというか過保護に捉えていた。
 這っていた赤子もいつかは自分で立ち上がり駆け出す。
 保護者気取りもいい加減卒業しなければならない。
 ハイドラントの言う通り、これからはパーティの頭目として……何よりシア達に対しては配偶者として対等に接していかなくては。
 しっかし、こいつらときたら……まったく臆する事がないのな。
 魔族の復活と聞いて一人ビビってた俺が馬鹿みたいである。

「あっ! 何を笑ってるのさ、おっさん!?」
「いや、お前達があまりにポジティブなもんでな。
 普通魔族が復活したとか聞いたら、もっとこう……
 心憂いる表情や悲観的な言動というか何というか」
「何を馬鹿な事を。
 これは全てガリウスから学んだ事」
「俺から?」
「ええ。
 苦しい時こそ笑え。運命を嘲笑え。
 絶望に打ちひしがれ俯くより、痩せ我慢でも歯を喰いしばって顔を上げろ。
 わたくしどもにそう教えてくれたのは貴方ですわ」
「そっか……そうだったな」
「お三方と違い、拙者は詳しい事情は知りませぬ。
 しかしガリウス殿が精霊都市の代表としてトーナメントに参加すること、何よりも強者の証であるS級に命じられる事に喜びが隠せません」
「ああ、お前はそういう奴(戦闘狂)だったな、うん」
「腐れ縁とはいえ、貴様とは長い付き合いだが……
 地道に努力してきた親しい者が遂に認められるんだ。
 これほど嬉しい事はあるまい? 先を越されたのは悔しいがな」
「ありがとう、ミズキ。
 お前の実力ならすぐ追い付かれるさ。何なら推薦するぞ?」
「我が主殿の力が正当に評価された証ですからな。
 さあ、となればまずは前祝い。
 我輩が脱ぎますので酒池肉林といきましょう!」
「何で色々残念な奴なんだ、お前は!」

 語りながら脱ぎ、もろ肌を見せるショーちゃんにやんややんや騒ぎ始める一同。
 せっかくの熱い語らいが一転、すっかり宴会の二次会モードである。
 まあこれがウチのパーティらしいといえばらしいな。
 明るく陽気な雰囲気に苦笑しながらも俺は水晶版を取り出し、返事を待っているであろうレイナへトーナメント参加の旨を伝えるのだった。
 







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