勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、致命を負う

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「スイッチ!」
「助かるわ、ガリウスちゃん!」
「うむ――限界であった」

 前衛交代を告げる俺の掛け声に、盾役(タンク)としてシェラフィータを足止めしてくれていたヴィヴィとブルネッロが急速離脱しその場を離れる。
 数えきれない裂傷を負い疲弊しきった二人。
 全身が血に塗れる猛攻を受け止め続けた痛々しいその姿に感謝の念を抱きつつも――今は敢えて労いの言葉は無視する。
 何故なら俺達がやるべき事は唯一つ――
 諸悪の根源である魔王と化したシェラフィータの討伐のみ!
 シアの放つ光が奴の纏う位階障壁を侵食し弱体化するのを目視。
 並走し共に駆けるシアに思念を飛ばす。

「――合わせるぞ、シア!」
「了解だよ、おっさん!
 右手で魔術【ブレイズ】左手で闘技【ダブルストライク】。
 魔法剣(マテリアルソード)――【バーニングスマッシュ】!」
「魔現刃(マギウスブレード)――【烈火】!」

 初手から出し惜しみ無しの全力投球。
 ヴィヴィらが退いた間を縫う様に全速力で駆け抜けた俺達は左右に分かれ挟撃。
 紅蓮の炎を纏った斬撃がシェラフィータの身体を両袈裟懸けに斬り裂く!
 鎧姿故に堅そうに見えるシェラフィータだが……それは投影された偽装。
 奴の本質というか正体は意志を持って形状を変える魔水そのものらしい。
 先程の戦いで幾度かヴィヴィの真空刃やブルネッロの一撃が奴にヒットしていたものの、すぐに損傷個所が穴埋めする様に塞がったのを俺は見逃さなかった。
 高位の位階所持者特有の復元能力とは違う不自然な回復。
 つまりスライムなどに見られる液状生命体である可能性がある。
 確証を得る為には【神龍眼】を使えばいいのだろうが……この激戦の最中で未来記述を【読み取る】隙は無く、仮に読み取ったとしても脳髄を軋ます頭痛で戦線を離脱する訳にいかない。
 まして今は【瞳の中の王国】を全力起動中でどうにか互角な状況。
 ならば経験則からくる推察に全てを賭けるしかない。
 液状生命体は総じて高度の物理攻撃耐性と特有の回復能力を持つ。
 通常攻撃では傷つきにくく魔術攻撃等によるダメージも増殖で回復してしまう。
 だからこその炎属性攻撃だ。
 水属性系のものに対して肢体を構成する液体そのものを燃やす炎属性は天敵。
 そこに斬撃属性を重ねて付与した攻撃ならば、再生阻害のデバフを及ぼしながら弱点である核を狙える筈なのだが……

「愚行。
 火は水で消えるのが摂理。
 この程度の炎で我に抗うとは笑止千万」

 嘲るように吐き捨てたシェラフィータの言葉通り、俺とシアの攻撃は確かに奴を斬り裂いた。
 水で構成されたその躰の半ばまで刃を喰い込ませる事に成功した。
 だが――そこで止まってしまった。
 瞬間的にとはいえ、戦術級魔術に匹敵する刃に宿った爆炎を共に掻き消されて。
 シェラフィータの躰の幾分かは消失させたが……爆炎を構成する魔力そのものが奴を構成する魔水によって吸収されてしまったのだ。
 人知を超えた【ドレイン】能力の発露。
 そして攻撃の為とはいえ奴に接敵した代償は大きかった。

「世界に仇為す勇者の名を冠する者。
 世界を汚す劣等存在に希望を振り撒く目障りな者。
 この我の前より、疾く早く――逝ね」

 シア目掛けて放たれる超高圧水流のシャワー。
 今迄で一際激しいそれは光の精霊の加護を受けているはずのシアを正確に捕捉し、その全身に余すことなく降り注ぐ。
 真っ向から喰らえば即死は免れない。
 絶対の死。
 しかし――そうはならなかった。
 
「きゃうっ!」

 水流を喰らった瞬間――先程のマドカの様に弾丸みたいな猛スピードで観客席へと跳ね飛ばされるシア。
 全身打撲は免れないだろうが、しなやかな肢体は無事だ。
 その理由は明瞭である。
 シアの胸元で微かな魔力光を上げ崩壊していく宝珠。
 どんな致命的な攻撃も一度だけ身代わりしてくれるそれがシアの命を救った。
 宝珠の持ち主とは無論、俺である。
 高速思念伝達で宝珠について説明し、合流時にシェラフィータの死角となる背中越しにこっそりシアへと渡していたのだ。
 このトーナメントで一度も使う機会に恵まれなかった幸運。
 それがシアの窮地を打開する策となった。
 けれど――命を救う宝珠を渡していたという事は、奴からシアと同じく均等に攻撃された俺に回避する術が無くなった事を意味する。

「おっさん!」
「ガリウスちゃん!」
「ガリウス!」

 シア、ヴィヴィ、ブルネッロの悲痛な叫び。
 シェラフィータから繰り出された蜘蛛脚の猛攻を捌き切れず――
 俺は頭部を除く全身を満遍なく刺し貫かれ、誇示する様に宙へと掲げられていた。
 神に捧げられた供物よりかは愚者に対する見せしめ――
 あたかも百舌の速贄のごとく、無残で惨たらしく残虐に。






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