勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、救いを抱く

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「オレ達の勝利と!」
「偉大なる賢王様の計らいに!」
「乾杯!」

 景気のいい打撃音と共に、もう幾度目か分からない乾杯の音頭が響き渡る。
 既視感を覚えるほど繰り返される光景に対し、もはや苦笑を浮かべるしかない。
 だが――その馬鹿騒ぎも全ては生き残った故に、だ。
 飾られた明るさの陰に隠れた、昏い死者への弔いの意を忘れてはいない。
 魔族魔神連合による王都闘技場襲撃から半日。
 賢王の粋な取り計らいにより、生き残った功労者達に対する慰労会が開かれた。
 それが俺達の今いるここ、王宮別邸【水晶館】である。
 何せ各都市首脳とのサミットや軍関連の叙勲にも使用される為、キャパが広い。
 確かに戦いに参加した者達全てを収納できる場所はここしかないだろう。
 けど、貴賤に関係なく王族関連機関を解放する度量は凄いとしか言い様がない。
 この様な判断は王の失墜を狙う貴族共に対する格好の攻撃材料になるからだ。
 それでも――王は強行した。
 この王都を守り抜いた者達の心意気に対する自らの誠意として。
 だからこそ、彼は賢王リヴィウスと称えられるのだろう。
 兵士も冒険者も区別なく集められ極上の酒と馳走を振舞われている。
 見たことも口にしたこともない山海の食材と酒に、テンションが上がるのも仕方あるまい。
 今日の宴は無礼講という王の言葉もあり、あちらこちらで羽目を外した様な歓声が広大な敷地に響き渡っている。
 予備役にいた兵士達はまだ行儀がいいが、身体が資本の冒険者は飲んで騒いでが本能の生き物である。
 普段は上品な方々を接待している水晶館職員では対応が難しそうだ。
 特に今回の戦いで活躍したS級組へは俺ぐらいしか声を掛け辛いだろうしな。
 無礼講とはいえ限度がある事を理解してもらいたい。
 余興とはいえ中庭にドでかい召喚獣を出現させたり酒を冷やす為に用意された氷に剣で彫刻し始めるのは論外だと知らしめなくては。
 俺は方々を回りながら口を挟み、フォローを入れて行く。
 そんな俺に対し、これ幸いと寄って来ては様々な祝福と罵倒の言葉を掛けながら杯を重ねていく面々。
 一番手を切ったのは陽気で伊達な【船長】ことジェクト・トルーパーである。

「よう、ガリウス。
 調子はもういいのか?」
「お蔭さんでな。
 仲間の祝祷術と美味い酒があれば大概は回復する」
「言うね~さすがは英雄」
「お前が言うな、お前が。
 だが――先の戦いでは本当に助かったよ、ジェクト。
 魔王化した魔族が相手とはいえ……
 お前のクラス能力が無かったらマジで全滅し掛けたかもしれないしな」
「よせやい。
【船長】というクラス特性について解説してくれたのはアンタだぜ?
 結果として皆の助けになっただけだ」
「それでもアンチ水属性とでもいうべき力は褒められるべきだろう?
 あの恐ろしい魔水も【船長命令】で防げたし」
「それだってアンタの活躍が無かったら止めを刺せなかった。
 さすがは凶悪な妖刀使いってことか」
「その事は忘れろ、真面目に」

 意地の悪い貌で揶揄するジェクトに苦い顔で釘を刺した俺は魔王シェラフィータとの顛末を思い返す。
 あの激闘後――勝利に沸く闘技場。
 歓声を上げて近寄ってきた仲間達だったが、俺の周囲でピタリと止まる。
 シアもリアもフィーもミズキもカエデも一様に下を向き目線を合わせない。
 ――何故? どうして?
 皆と勝利を分かち合い喜ぼうとした俺だが……そこでふと気付く。
 【昇華】の刻を迎え消えてしまったイゾウ先生。
 その答えがこれだ。
 俺の手にある【紅姫】以外、先生の存在は無かったことになり人々の記憶からも消え失せ――全てが再構成されてしまう。
 つまり魔王を討伐したのが俺という認識になってしまった。
 精霊武装など人外の業を扱い魔王を斃せし者。
 それは即ち――新しい脅威の誕生、という風に捉えられないだろうか?
 師匠であるファノメネルは常々言っていた。
 大いなる力には重責が伴うと。
 何気ない力の行使とはいえ、人知を超えたソレは人々の畏れを招きかねない。
 だからこそ時に道化を演じてでも人に溶け込む術を忘れてはならない。
 さもなければ迫害される存在と成り果てるとも。
 この戦いで切り札を切り続けた俺は――もはやその域に達してしまったのか。
 掛け替えのない皆ですらそうなのか?
 やりきれない寂しさと――どこか虚しさを覚えながら何とか言葉を取り繕う。
 
「……すまない。
 気を遣わせてしまったな。
 人外の力を振るった俺はもはや人の域を超えてしまった存在に――」
「やっ――あの、おっさん!
 そういう深刻な問題じゃなくてね?」
「ん。答えはシンプル。
 非常に学術的な問題でガリウスを直視できない」
「? どういう意味だ?」

 のらりくらりと弁解の言葉を紡ぐ二人に問いかけようとした俺。
 すると豪快な笑いと共に俺に丸められたマントが飛んでくる。
 片手で受け止めた俺は視線を向ける。
 笑い声の主はジェクトだった。

「おう、ガリウス。
 恰好つけて悲壮ぶるのもいいが――
 まずはその股間で蠢く凶悪な武器を隠してからの方がいいんじゃねえか?
 嬢ちゃん達が恥ずかしがって凝視できないみたいだぜ?」

 ジェクトの指摘に遅まきながら気付く。
 精霊武装を発動させ、炎の上位精霊であるフドウエンマと一体化した俺。
 愛刀はスキルで収納したものの、さすがに革鎧や衣服を仕舞う余裕はなかった。
 つまり劫火で焼き尽くされてしまった。
 すると、どうなるか?
 解除後に残されたのは全裸のおっさんである。

「うおっ!
 こいつはすまん!」

 慌ててマントを広げ、全身を包み直す。
 ふう~どうにか隠れたか。
 衆生の面前で全裸を晒していた俺。
 他意はないとはいえ、結果としてはただの変態である。
 確かに直視は出来ないわな。

「やっと気付いてくれた?
 おっさんが思うような、そういうんじゃないんだからね?」
「ん。ガリウスは考え過ぎ。
 あたし達は何があっても支えると約束した。
 その想いに齟齬は無い。もっと信頼して?」
「わん♪」
「あ、ああ。
 本当にすまない――二人とも。それにルゥ。
 誰かに信じてほしいなら……まず俺が信じなければ駄目だな」
「そういう事♪
 素直が一番だよ、おっさん。
 でもまあ……こういうのもいるから今のは話半分でいいよ」
「ん。賛同」
「くぅ~ん」
「え?」
「――ガリウス様の全裸!
 ――ガリウス様の肢体!
 均衡のとれた美しい筋肉がよろめき蠢き……さらに戦いで猛々しく荒ぶったアレがアレしてくんずほぐれつ……ハアハア(*´Д`)」
「さすがフィーナ師匠!
 ガリウス殿の全裸だけでその妄想力……拙者、そこに痺れる憧れまする!」
「あんなに……あんなになるのか?
 あれが本当に……ゴクリ」
「うむ。我が主殿のはまさに勇壮雄大よ。
 あれで寵愛を賜るのも一興」

 恥ずかしがって顔を赤らめ下を向いていたシアとリアと違い、何故か興奮に息を荒げている残りの面々。
 同じ顔を赤らめているというのに酷い落差である。
 俺は無駄に真剣に思い悩んだ自分の馬鹿さに加減に対し頭痛を覚えつつも――
 全然変わらないこいつらの能天気さに救いを感じ、心から感謝するのだった。



 
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