勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
293 / 398

おっさん、悪役になる

しおりを挟む

「まったく……知らぬ存ぜぬは俺ばかりかよ」
「ははは。すまないな、ガリウス。
 前々からハイドラント様経由でお前さんのそういう話は聞いていたんだが……
 レイナ様がサプライズの方が絶対驚くといってな、内密にしてたんだ」

 論功行賞授与後の祝賀会場。
 贅を尽くした山海珍味が並ぶメインテーブルから離れた一角に陣取り、美酒を傾けながら不貞腐れる俺に対しスコットは宥める様に苦笑する。
 まったくこいつも人が悪い。
 開拓村に関する今後の統治者について俺が推されていたのを黙っているとは。
 共に開拓村を発展させ続け苦楽を共にしたという思いがあっただけに――何だか少し裏切られた気分だ。
 なので少し仕返しをしよう。

「ふむ。まあよかろう。
 部下の不始末には寛大に対処せねばな。
 今後は私に対しての言葉遣いは重々気をつけてくれ給え、スコット領主代理殿」
「はは、これは大変失礼致しました。
 して――ガリウス男爵閣下。
 今後の村の施策はいかがなさいましょう?」
「うむ。
 長年税を納めて貰う為、村民には健康で長生きをして貰わねばならぬ。
 労役として晴耕雨読。
 特別納税として新年祭りへの強制参加というのはどうだ?
 祭りに関わる費用は私が出そう」
「それはそれは。素晴らしい悪行でございますな。
 さすがは男爵様」
「な~に、そちには及ばぬ」

 庶民にも人気な活劇【暴れん坊君主】に出てくる悪役らのような意味深な会話を交わした俺達は――互いに顔を見合わせると堪え切れず吹き出す。

「ははは。男爵になっても変わらないな、お前さんは」
「そりゃ~実感がないしな。
 大体名称ばかりで実が無い上、権力に酔う馬鹿は俺が一番嫌いなタイプだ」
「まあ、そうだろうな。
 何度か開拓村の視察に来た貴族の馬鹿息子らを懲らしめてたしな。
 それ故に名ばかりとはいえ、村の事を一番に考えてくれるお前さんが開拓村を統治してくれるというのは私達にとってこの上ない幸福に繋がるのさ」
「そういうものかね。
 ほとんど村長兼領主代理であるスコットに領地運営を任せる様になると思うが」
「そこは私の腕の見せ所だ。
 お前さんは自分の本業(冒険者)に精を出して貰えばいい。
 むしろそれこそが村民の総意だ」
「そうか? 正直助かるよ、スコット代官」
「代官か……悪くない響きだ」

 先程の漫才の続きなのだろう。
 ニヤリ、といかにも悪役ぶった邪な笑みを浮かべるスコット。
 この男も存外ノリがいい。
 今回の論功行賞では俺を含む多くの者が爵位を賜った。
 無論それは実体のない名誉爵である騎士爵が多い。
 おそらくこれは金銭では縛られない勇者隊の面々に対し、名誉を以て縛るという各国の思惑が働いているのだろう。
 S級冒険者というのは確かに破格の力を持つが……権力によって飼い馴らすことが出来ない存在である。
 災厄に対する最高のカウンターであるが、国家からしたら面倒な事、この上ないという……中々扱い辛い立場なのだ、俺達は。
 活躍すれば活躍するほど民衆から支持を得られる存在など、為政者側が好ましく思う訳がないしな。
 それならばいっそ身内(体制側)に組み込んでしまえ、というのは有効な手だ。
 名ばかりの爵位とはいえ貴族階級特権で受ける恩恵は計り知れないし、有事の際には個人を超えた枠組みで対処に当たれる。
 面倒な貴族同士の付き合いが無ければ理想の褒賞の一つであろう。
 だがここに爵位ばかりか領地を賜るとなると……話は違ってくる。
 自分だけ面倒を見ればいい冒険者とは違い、領地を統べる領主という者は領地に関する運営・施策・方針を固め、下は牛の世話から上は天災等に対する対処まで、ありとあらゆる難事に対応していかなければならないからだ。
 得られる報酬は破格だが掛かる労力に比例していない。
 勿論、中にはそういった箱庭作りを至上の楽しみとする者もいるだろうし――決して否定する気はない。
 けど――俺には無理だ。
 スコットの様に細かい配慮が出来ないし、開拓村の皆には慕われていると思うが――その分非情な決断が出来ないかもしれない。
 領地運営にはドライで公平な視点が求められる。
 自分が損をしてでも他者の利益を図るなど論外である。
 その点、人生経験豊かで人の心の機微や世間の事情によく通じているスコットは、文字通り酸いも甘いも弁えた対応を行えるだろう。
 それがこの男の強みであり俺が敵わないな、と思うところである。
 だからこそ爵位関連の引継ぎがあった際に領主代理――代官に選んだ。
 始めは驚き辞退していたスコットだが――俺の熱意と説得に応じ、不承不承とは言わずに引き受けてくれたのが嬉しい。
 しかし――爵位や領地まで褒賞として出るとは思わなかった。
 俺が事前に【神龍眼】で視ていた未来のヴィジョンは国宝である【黒帝の竜骸】を手にする所まであり、その周辺の余波までは読み取れなかった。
 ここら辺がノスティマの持つ【神魔眼】との違いだな。
 常時発動も可能なほど負担が減った分、どうしても精度が落ちる。
 いつかこれが致命的な事態を引き起こさなければいいのだが……
 などと、いかにもフラグ臭い事を思いながら、続々と来る人々へと挨拶をこなし酒杯を傾けていると――

「おお、なんと素晴らしきことか!」
「アレが勇者殿の新しい武具に御召し物……」
「宝物庫から出たその出で立ちと輝き――まさに宝具の名に相応しい!」

 皆の称賛を一身に浴びながら――新装備に身を固めたシアが現れ、戦意向上の為か壇上でのお披露目を始めようとしていた。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...