勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、憧憬を抱く

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「こちらでございます」

 賢皇リヴィウス陛下から爵位を賜り――
 更に新装備貸与に沸き立つ皆の狂乱の宴、熱狂から一夜が経過した早朝。
 俺の姿は、先導する宮廷魔術師団【シルバーバレット】の次席ことアマルガム翁の案内を受け、王城地下奥深くにあった。
 ここは地下数百メートルにある【封印の間】へ続く回廊らしい。
 外部からの転移を跳ね除ける特殊な結界に護られたここに至るには多種多様な障害を乗り越えた上で決まった解錠魔導パスを提示しなくてはならない。
 そこを間違えれば、はたしてどうなるか?
 道中その犠牲となったであろう人間、悪魔、魔神などの石像や床に影だけを残して焼き消されてしまった痕跡などを見るに――まあロクな目には遭わないようだ。
 だが、このように偏執的なくらい厳重な警備も無理はあるまい。
 お伽噺が本当ならばこの王城ランスロードの地下深くに眠っているからである。
 世界を支えし龍、ナーザドラゴンズに匹敵し得る同格以上の龍が。
 いにしえの神話によればこの琺輪世界には5匹の龍がいるという。
 即ち――

 東方を支えし海龍、テウルギア・ゴエティア。
 西方を支えし嵐龍、イリスフィリア・ゲーティア。
 南方を支えし焔龍、ガルドラボーク・レメゲトン。
 北方を支えし凍龍、アルマデル・グリモワール。
 そして最後……
 創造主から中央大陸を守護する役目を命じられながらも我欲に溺れ、悪逆の限りを尽くした暗黒龍ヴォイニッチ・ネクロノミコン。

 莫大な力を持っていた神族亡き後の世界を暗黒龍ヴォイニッチは蹂躙した。
 嘶く咆哮は聞くモノの魂を砕き――
 本来龍に必要もない食事では数多の命が残虐に貪り喰われた。
 無論、人族とて黙って運命を受け入れていた訳ではない。
 数々の腕自慢が暗黒龍に戦いを挑んだが――結果は語るまでもないだろう。
 強靭な暗黒龍の鱗に傷をつける事すら叶わず全滅した。
 そして報復のブレスに含まれた瘴気によって数多の都市が廃墟と化した。
 そんな絶望の化身ともいえる暗黒龍を封印したのが四大龍の加護を受けた蒼き槍聖クラウディアである。
 シアがやらかした【君主の聖衣】を纏った彼女は、七日七晩の激闘の末――
 遂に聖槍ロンゴミニアドを暗黒龍ヴォイニッチの逆鱗へ突き刺す事に成功した。 
 しかし――さすがは原初の生命ショゴスと並び、しぶとい龍である。
 こんな事でくたばるかものか――と暴れに暴れまくった。
 暗黒龍を完全に斃すのが無理であると断念したクラウディアは、遥か奈落の底へと幽閉し封印を施す事にした。
 そして自身は封印の監視者としてその地に都市を築いた。
 例え自分の世代で暗黒龍が復活せずとも――
 いつの日か自身の子孫や都市に集った者が暗黒龍の再封印を行えるように、と。
 これがレムリソン大陸最古の王国【ランスロード】建国の謂れである。
 よくある英雄譚っぽいが……恐ろしいことに神代から続くサーフォレム魔導学院に残された蔵書にある記述から、まごう事なき事実と判明された。
 昔の英雄は本当に規格外が過ぎる。

「さあ、着きましたぞ」

 石造りに見せ掛けた厳重な複合魔導鋼の通路を抜けた先――
 素人目にも凄まじいレベルの魔導防御が為された扉が現れる。
 反射的に【神龍眼】で術式構成を読み取ろうとした俺だったが、脳髄を貫く様な冷たさと痛みの警告を受け、咄嗟に全ての感知をシャットダウンする。
 探りを入れただけでこれか。
 おそらく本気を出せば突破できない事もない。
 が、その為に自身が廃人になっては意味がない。
 凡そ汎用性に長けた【神龍眼】でも見通せない事がある。
 それは同格の秘術・奇跡などだ。
 これほどの封印を構成した存在への恐れと憧憬が胸裏に浮かぶ。

「くだんの【黒帝の竜骸】は、寝所への中間点であるこの【封印の間】に飾られております。表に出せない他の禁忌の品々と共に」
「それほどのレベルか、【黒帝の竜骸】は」
「ええ。本来であればどのような方であろうとも、決して貸与するような代物ではございません。下手に触れれば瘴気が身体を蝕むだけでなく魂すら陵辱されてしまう。
 今迄に幾人もの勇者が挑戦しましたが、成功した者はホンの一握りの英雄のみ。
 故に国宝であり獄宝……有名であろうと外へ出る事のない禁断の至宝なのです。
 ただリヴィウス陛下から伺うに貴方様は――」
「ああ――親父同様、修めているよ。
 生来勇者の里こと【ヴェルダンディ】一族固有の御業を」
「であれば最低限、問題ございますまい。
 かの暗黒龍の邪悪な意志に対抗すべきは強き意志の力のみ。
 さあ、扉の鍵は解き放ちました――私の案内はこれまでになります。
 どうかご武運と槍聖の加護がございますよう、お祈り致します」
「ここまでの案内、本当にありがとう。
 あとは俺の問題だ……頑張ってみるさ」

 不安そうに俺を見守るアマルガム翁に感謝を告げると俺は賢皇の残した最上にして最悪の恩寵を賜る為に【封印の間】へと足を踏み入れる。
 噂に名高き【黒帝の竜骸】……
 暗黒龍ヴォイニッチ・ネクロノミコンの力の断片をその身に纏う為に。





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