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新米の面倒を見る事になったおっさん冒険者34歳…… 実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていく⑥
しおりを挟む「今回、お前達が挑むのはオーソドックスな討伐依頼だ。
この街から数時間行った所にある開拓村近くにゴブリンが住み着いたらしい。
今はまだ農作物程度の被害で済んではいるが――これが家畜に、やがては人へとエスカレートしていくのは火を見るよりも明らかだ。
よって奴等の根城を探索し、速やかに殲滅するのが目標となる」
宿屋の一室にボク達を集めたおっさんは、珍しく冗談も交えない真剣な顔でそう告げた。皆、不安そうに互いを見つめ合うけど……それも仕方ないと思う。
おっさんことガリウスさんは本当に大人な人だ。
強くて、頼りがいがあって……ちょっぴりカッコいい。
ボクにとって目指すべき憧れの人。
そんなおっさんはいつも余裕に満ちた表情で依頼を熟してきた。
未熟なボク達のフォローをしてくれるだけじゃなく、知り合った依頼人や町の人々に対する対応や気遣いも凄いと思った。
こうしてミーティングするのも初めてじゃないし(何なら依頼の度に毎回)。
時にユーモアを交えて話すその内容を、ボク達はホントに楽しみにしていて……どこかおっさんに甘える様に、まぜっかえしていたのに。
今日のおっさんの顔は初めて会った時みたいに真剣だった。
ダンジョンで偽者のおっさんに殺されそうになった時……まるで命に関わる事に携わった時みたいな鬼気を孕んでいる気がする。
怯えたように静まり返った空気の中、恐る恐るフィーナさんが手を挙げる。
「あの――ガリウス様?」
「なんだ、フィー」
「一つ、お聞きしたい事があるのですけど……」
「ああ、別に構わないぞ」
「先程、お前達が挑むと伺いました。
ガリウス様は同行されないのでしょうか?」
「ん? ああ、勿論同行はする」
「ホッ。安心致しましたわ。ならば――」
「ただ――俺は何も手出しはしない」
「えっ? それはどういう――」
「なら、あたしからも質問。
それは……討伐に関してガリウスは能動的に何もしないという意味?」
「その通りだ、リア。今回の依頼、何が必要で何をすべきか――
それをお前達が自分で考えて実行しろ。同行する俺はあくまで監督役だ」
非情ともいえるその言葉にボク達は一瞬にして冷や水を浴びた様に身を竦める。
おっさんはいつも、今回の依頼に対する注意点や配慮しなくてはならない事柄を事細やかに説明してくれて、ボク達はただそれに身を任せていればよかった。
疲れるしキツイ仕事もあったけど、やり甲斐はあった。
余暇時間でおっさんに身体を鍛えて貰っていたし、鬼稽古を通して剣術の腕前もそこそこ上がったと思う。
だからこそ早く冒険者らしい仕事がしたいと――おっさんにお前らは一人前だと認めてもらいたくて焦りを感じていたのに……
ここにきて、それがいかに甘えた考えかを思い知った。
ううん、思い知らされた
ボク達は恵まれた環境にあぐらを掻いていただけなんだ。
下請け労働の様なFランク依頼と違い、Eランクは討伐依頼が普通に含まれる。
討伐……それは命のやり取りだ。
忌まわしき妖魔達が相手とはいえ、生き物の命を刈り取る行為。
田舎暮らしで獣狩りの経験はあるとはいえ……
ボクに果たしてそれが務まるのだろうか?
ここ二ヵ月を共に過ごし、すっかり仲良くなったフィーナさんとミザリアさんも多分ボクと一緒の考えだと思う。
いつになく真剣な面差しと……動揺に揺れた貌をしているから。
昇級に対して先程まで爆上がりしていたテンションはどこかへ行ってしまった。
今は漠然とした不安が重く圧し掛かってくる。
まるでお通夜みたいにどんよりした雰囲気。
さすがに見兼ねたのだろう、おっさんが頭を掻きながら苦笑する。
「少し突き放した言い方になったのは謝る。
ただ……これはお前達にとっても必要な事だ。
いつまでも俺におんぶにだっこじゃ、冒険者としても人としても成長しない。
シアにも以前告げたがな……自分で考え、何を信じ、どう判断するべきか――
常に自らの命を天秤に掛け続ける冒険者にとって、それが最低限の責任だ」
おっさんの言葉にボク達は再度顔を見合わせる。
先程までとは違い、今度は確固たる意志の光を瞳に宿して。
「――シアさん、必要物資の買い出しをお願いできますか?
代金はパーティの共用財布から捻出してください」
「うん、分かった。二人は?」
「わたくしは依頼書を基に、詳細な地理を調べます」
「ん。ならばあたしは開拓村付近の危険生物について調べてみる」
「結構。それでは皆様、一時間後に再度宿に集合。
各自最終点検後に開拓村へ出発、と。
……それでよろしいですか、ガリウス様?」
「俺の承諾は必要ない。思う様に動いてみろ」
年長者の、あるいは教会で働いていた経験故か――
生き生きとした表情で仕切り出すフィーナさん。
でも、その判断は間違ってはいないようだ。
おっさんは変わらず苦笑を浮かべているけど、印象的な紫水晶みたいな双眸にはいつもの優しさが灯っていた。
自主的に動き始めたボク達の動きは誤りじゃなかった。
それが嬉しい反面……自分が主導権を握れなかったのが少し悔しい。
ならばこれからの働きでおっさんを見返してやるぞ……
その時のボクは――そう思っていた。
愚かにも、身の程知らずに。
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