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「黙って付いてきて」
しおりを挟む「なあ……セラナさん?
それともネフェルティティさんの方がいいのか?」
「セラ、でいいわ。
親しくない人は私をそう呼ぶもの」
「ああ、そうかい(言に親しくするな、ってことか?)。
ならばセラ――ガードとして、一つ確認したい事があるんだけど」
「あら、何かしら?」
「俺の役割は君の身辺警護という事は十分理解した。
ただ――君は一体何の目的があって大陸を巡るんだ?
ガード役の俺が同伴するとはいえ、君みたいな女性が辺境を流離うっていうのは流石に危険過ぎるんじゃないか?」
「その説明も兼ねて移動してるのよ。
黙って付いてきてくれる?」
俺の質問に振り返ることなく、けんもほろろに応じて歩を進めるセラ。
遅れないように俺は適度な距離を保ちつつもその後を追う。
華奢な背中と絹の様に煌めく白髪がそれ以上余計な事を喋るなと語っていた。
うん……間違いなく嫌われたなこれは。
出会いからの事を考えれば仕方がない事だが。
どうも俺は昔から女難が絶えない。
無条件に好かれることも多いが……無条件に嫌われることも然り、だ。
彼女はどうやら後者に属するらしい。
しかし速やかな依頼達成の為、最低限の信頼関係は醸成しないとな。
途方に暮れながら歩いていると、俺の肩辺りを浮遊していたリンデが、突如顔を顰めながら呟く。
「むむ。随分と、つっけんどんな態度。
アレはツンデレにデレがないヤツなの。
きっとマスターへの好感度は最低なの」
「――なあ、リンデ」
「なになになの、マスター?」
「聞いていいか?
なんだよ、その好感度って」
「異性との親密さを表す数値なの。
これが高い程、恋愛に発展する可能性があるの。
残念ながら現在セラとの仲は最悪なの」
「別に彼女が俺をどう思ってようが構わないんだがな……
依頼を遂行するのに、ある程度の関係が結ばれればそれでいい。
彼女は俺の事が気に食わないし現状頼りにしていない。
だからって、セラを嫌な人間だと考えるのは間違っている。
信頼は捻り出すものじゃない、信用の積み重ねによって生み出されるものだ」
「をを。
何だか、無駄にカッコいい台詞なの」
「師匠の受け売りだけどな。
冒険者ギルドからのみならず、様々な依頼を受ける上で色々な人に関わってきた師匠だからこそ至った境地だろうけど、さ」
「そう語るマスターの視線はセラの揺れるお尻から片時も外れなかったの。
ハードボイルド風に決めても、何だかんだ年頃男子の性欲は恐ろしいものなの」
「おい、やめろ!
怪しいナレーションで勝手に第三者からの俺の印象を捏造しようとするな!」
「ねえ、目的地に着いたのだけど……
貴方達――頼むからもう少し静かにしてくれない?」
「す、すまない」
「ごめんなさいなの!」
呆れたようにこちらを振り返るセラに平身低頭、謝罪する俺とリンデ。
妙に息の合ったその対応がツボに入ったのか、セラがおかしそうに噴き出す。
「もう……何なの、貴方達。
大事な一族のお勤めという事で実はかなり緊張してたのだけど……
フフ、何だか拍子抜けちゃったわ」
「緊張し過ぎてもロクに動けないもんだ。
あまり肩肘を張らずに少し弛緩した方がいいと思うぞ。
師匠――ファノメネルも緩急が大事だ、と常に言っていたし」
「そうなの? なら……信じてみようかな」
「ああ、間違いないよ。
それにもう一つ俺にとって利点があったしな」
「うん? 何かしら?」
「セラは笑った方が絶対可愛い」
「ばっ馬鹿じゃないの!
そんなこと言って、そんなこと……(ごにょごにょ)
――ほら、早く付いてきて。私の役目を説明するから」
深く考えず述べた俺の言葉に何故か赤面し踵を返すセラ。
何だよ、正直は美徳というから率直な感想を告げただけなのに。
目線も合わせてくれないし、やっぱり嫌われているようだ。
先程よりも歩みが速くなっているので溜息を堪えながら慌ててその後に続く。
「かあああああああああああああああああああああああ~~~~!
コレはなに、何てギャルゲなの?
まるで上品な砂糖菓子に蜂蜜をぶちまけるかごとき暴挙!
デレがマシマシで丼から溢れ、胸焼けするくらい甘々なの!
今のは間違いなく好感度ポイントを、くりてぃかるゲット……
ウチのマスターは今時古臭い無自覚やれやれ系のジゴロで、絶対女の敵なの!」
意味不明な事を叫びつつ……
俺の背後で何故か視えない壁を殴り続ける馬鹿(色ボケ)をその場に残して。
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