勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
339 / 398

「黙って付いてきて」

しおりを挟む

「なあ……セラナさん?
 それともネフェルティティさんの方がいいのか?」
「セラ、でいいわ。
 親しくない人は私をそう呼ぶもの」
「ああ、そうかい(言に親しくするな、ってことか?)。
 ならばセラ――ガードとして、一つ確認したい事があるんだけど」
「あら、何かしら?」
「俺の役割は君の身辺警護という事は十分理解した。
 ただ――君は一体何の目的があって大陸を巡るんだ?
 ガード役の俺が同伴するとはいえ、君みたいな女性が辺境を流離うっていうのは流石に危険過ぎるんじゃないか?」
「その説明も兼ねて移動してるのよ。
 黙って付いてきてくれる?」

 俺の質問に振り返ることなく、けんもほろろに応じて歩を進めるセラ。
 遅れないように俺は適度な距離を保ちつつもその後を追う。
 華奢な背中と絹の様に煌めく白髪がそれ以上余計な事を喋るなと語っていた。
 うん……間違いなく嫌われたなこれは。
 出会いからの事を考えれば仕方がない事だが。
 どうも俺は昔から女難が絶えない。
 無条件に好かれることも多いが……無条件に嫌われることも然り、だ。
 彼女はどうやら後者に属するらしい。
 しかし速やかな依頼達成の為、最低限の信頼関係は醸成しないとな。
 途方に暮れながら歩いていると、俺の肩辺りを浮遊していたリンデが、突如顔を顰めながら呟く。

「むむ。随分と、つっけんどんな態度。
 アレはツンデレにデレがないヤツなの。
 きっとマスターへの好感度は最低なの」
「――なあ、リンデ」
「なになになの、マスター?」
「聞いていいか?
 なんだよ、その好感度って」
「異性との親密さを表す数値なの。
 これが高い程、恋愛に発展する可能性があるの。
 残念ながら現在セラとの仲は最悪なの」
「別に彼女が俺をどう思ってようが構わないんだがな……
 依頼を遂行するのに、ある程度の関係が結ばれればそれでいい。
 彼女は俺の事が気に食わないし現状頼りにしていない。
 だからって、セラを嫌な人間だと考えるのは間違っている。
 信頼は捻り出すものじゃない、信用の積み重ねによって生み出されるものだ」
「をを。
 何だか、無駄にカッコいい台詞なの」
「師匠の受け売りだけどな。
 冒険者ギルドからのみならず、様々な依頼を受ける上で色々な人に関わってきた師匠だからこそ至った境地だろうけど、さ」
「そう語るマスターの視線はセラの揺れるお尻から片時も外れなかったの。
 ハードボイルド風に決めても、何だかんだ年頃男子の性欲は恐ろしいものなの」
「おい、やめろ!
 怪しいナレーションで勝手に第三者からの俺の印象を捏造しようとするな!」
「ねえ、目的地に着いたのだけど……
 貴方達――頼むからもう少し静かにしてくれない?」
「す、すまない」
「ごめんなさいなの!」

 呆れたようにこちらを振り返るセラに平身低頭、謝罪する俺とリンデ。
 妙に息の合ったその対応がツボに入ったのか、セラがおかしそうに噴き出す。

「もう……何なの、貴方達。
 大事な一族のお勤めという事で実はかなり緊張してたのだけど……
 フフ、何だか拍子抜けちゃったわ」
「緊張し過ぎてもロクに動けないもんだ。
 あまり肩肘を張らずに少し弛緩した方がいいと思うぞ。
 師匠――ファノメネルも緩急が大事だ、と常に言っていたし」
「そうなの? なら……信じてみようかな」
「ああ、間違いないよ。
 それにもう一つ俺にとって利点があったしな」
「うん? 何かしら?」
「セラは笑った方が絶対可愛い」
「ばっ馬鹿じゃないの!
 そんなこと言って、そんなこと……(ごにょごにょ)
 ――ほら、早く付いてきて。私の役目を説明するから」

 深く考えず述べた俺の言葉に何故か赤面し踵を返すセラ。
 何だよ、正直は美徳というから率直な感想を告げただけなのに。
 目線も合わせてくれないし、やっぱり嫌われているようだ。
 先程よりも歩みが速くなっているので溜息を堪えながら慌ててその後に続く。

「かあああああああああああああああああああああああ~~~~!
 コレはなに、何てギャルゲなの?
 まるで上品な砂糖菓子に蜂蜜をぶちまけるかごとき暴挙!
 デレがマシマシで丼から溢れ、胸焼けするくらい甘々なの!
 今のは間違いなく好感度ポイントを、くりてぃかるゲット……
 ウチのマスターは今時古臭い無自覚やれやれ系のジゴロで、絶対女の敵なの!」

 意味不明な事を叫びつつ……
 俺の背後で何故か視えない壁を殴り続ける馬鹿(色ボケ)をその場に残して。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...