勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、決意を貫く

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 人の身体とはいったい何によって成り立っているのだろうか?
 勿論、医学的な意味や哲学的な意味合いそれぞれで主旨は変わってくる。
 司る領域が違えば意見が違うのは当然の事だろう。
 だからこれはあくまで魔術的な観点からの意見だ。
 リアの講義よれば、人とはおよそ三つの要素において成り立つらしい。
 霊的設計図であるアストラル。
 生命構成素であるマテリアル。
 そして個々に課せられた絶対配役とでもいうべき魂の核であるエウテリル。
 この三つが相互に干渉し合い人という存在を成立させているそうだ。
 例えを挙げれば、よくやる気が出た時(恋愛でも熱意でもよい)にいつも以上のモチベーションやパフォーマンスを発揮出来た経験はないだろうか?
 あれは文字通り、魂【エウテリル】に身体【マテリアル】が引っ張られたような形になるのだろう。
 霊的設計図【アストラル】はその人の生き方を定め――
 生命構成素【マテリアル】はその人の在り方を司り――
 絶対起源魂【エウテリル】はその人の行く先を担う――
 人を構成する上で重要な要素であるこれらはどれらが欠けても不具合を起こし、最悪その個人という意義をロストさせてしまう。
 ではこれらを踏まえ――魔族による同化とは何か?
 リア及びサーフォレム魔導学院の研究結果によれば魔族とは強大なアストラル体によって形成された存在らしい。
 遥かいにしえの時代、後に終末戦争と呼ばれる戦いにおいて、元々は真族という単一の種族だった彼らは同族同士で潰し合い――己のマテリアルを喪った。
 その後神担武具と呼ばれる物質にその身を宿したのが神々であり、
 生物を依代としその身を媒介に端的に顕在化したのが魔族である。
 つまり魔族は生物の枠を超えた精神生命体だ。
 公爵級【ケルビィム】
 侯爵級【オファニム】
 伯爵級【ヴァーチャ】
 子爵級【プリンシパリティ】
 男爵級【エクスシア】
 そして……観測された事は無いが確実にいると推定される、
 王侯級【セラフィム】
 そのままでも災厄クラスを圧倒的に凌駕する、強大無比なる天災のような存在。
 だが――奴等の真の恐ろしさは、依代と呼ばれる自らが乗り移る憑依対象を得て現界した際にこそ十二分に発揮される。
 ベースとなる素体にもよるが自身の力を数倍、もしくは十数倍にも高める。
 同じ爵位でも強さが変動するのはこういった理由からだ。
 魔獣クラスの伯爵級【ヴァーチャ】よりこのレムリソン大陸でも最上位に近い、魔晶湖の怪魔を依り代にした王都闘技場で戦った子爵【プリンシパリティ】魔族、死せる水のシェラフィータの方が明らかに脅威だった。
 魔族との同化はある意味融合レベルに近い御業でありそれを分離するのは至難。
 味も種類も違うミックスジュースを個々に戻し分けてみろ、という意味に近い。
 しかし――それ故に付け入る隙が入る。
 魔族はアストラルを用いてマテリアルを変質する。
 されどその対象となる魂……
 絶対起源魂【エウテリル】さえ無事なら救う事が出来るのだ。
 そう――俺とミコンの間に結ばれた絆【浄火】ならば。
 何故ならばそれは救われぬモノをも救う、清浄なる焔。
 妬み嫉み辛み恨みなど災禍をもたらす呪詛へと連なるありとあらゆる負の想念によって病めるものや傷つきしものを癒し不条理を正す――浄化の焔なのだから。
 何より僥倖だったのはミズキがその裂帛な意志による魂の力で魔族との完全同化を拒んでくれていたことだ。
 ならば話は簡単だ。
 ミズキの身体を蝕み書き換えていた生命構成素のみを【神龍眼】によって認識して全てを燃やし尽くすのみ。
 勿論、通常ならばそんな事は叶わないだろう。
 だが試行錯誤の末に生み出した【瞳の中の王国】こそが、この場面で生きた。
 ガリウス、貴方は何を以て未来を観ているの?
 ミコンの助言によって気付かされた新たな境地――
 そう、瞳を通して森羅万象を己の制御下に置く事が【神龍眼】の真骨頂。
 ならば己の視界にある万物を全て瞳と化す事も認識する事も自在。
 こうして俺はミズキを構成する37兆2000億の細胞内で同化を担っていた、魔族の細胞1億数千個……その不浄の細胞『だけ』を全て燃やし尽くした。
 でもこれだけでは、ただミズキの身体を救っただけ。
 魔族に付け込まれたその心まで救ったわけじゃない。
 だから俺は彼女に告げた。
 己の本心と想いを――彼女を救う為だけじゃない、規制や論理に捉われない偽りなき自身の情熱と欲望を知って受け入れて貰う為に。

「ミズキ……」
「ガリウス、私は――」
「お前が好きだ。他の誰にも渡したくない」
「き、貴様という奴は――私だってずっと望んでいた!」
「ならば決定だな。ずっと傍にいてくれ」

 秀麗なラインを描く頬を流れる涙を拭いながらその額に優しく口付ける。
 現状が把握できず、茹ったように赤面するミズキ。
 幸福に満ちたその美麗な貌に俺自身も満たされていく。
 ああ、この選択が間違いかどうかなんて知った事か。
 イゾウ先生の話じゃないが――グダグダと後悔するのは、もうやめだ。
 結婚するとかしないとか論理がどうとか。
 本当に護りたいなら、まずはその手で掴み取ってから考える。
 情熱的に身を絡ませてくるミズキに心からの安堵を抱きながら――
 俺は自身の描く幸せを貫いてみせると固く決意をするのだった。




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