勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、肝に銘じる

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「これが俺の――いや世界の選択だ、ソーヤ・クレハ」

 毛布越しとはいえ裸体を晒すミズキを抱く事に若干照れながらも静かに告げる。
 心の底より溢れる充足感と身体に満ちていく多幸感。
 ああ、自身の選んだ道は間違いなんかじゃない。
 選択できる余地――余裕があるというのは本来素晴らしい事なのだ。
 ただ……そこに世情というか倫理が絡むから人の世は難しい。
 でも下らない倫理観に縛られていたら俺はきっといつまでも後悔していた。
 その日その時その場所、あの日あの時あの場所で決断した数多の選択肢。
 幼少期に救えたかもしれない少女の面影が脳裏を過る。
 それはトラウマであり俺を駆り立てる衝動であり根源となっている。
 思い返す度に痛みを伴う苦痛となって。
 ならば俺はもう間違えない。
 ミズキを選ばなかったことによる悔恨は絶対にない。
 しかし――それはあくまで俺の意見だ。
 あいつらがどう言うか、ちゃんと聞かなくては公平(フェア)じゃない。

「待たせたな、お前達」

 術的効果を断ち斬る概念武装と化した樫名刀を振るう。
 破魔の斬風が一直線に伸び障壁を捉える。
 魔術も祝祷術もその本質は世界の変容を顕在化させること。
 ならば斬れない道理はない。
 時間を掛け【神龍眼】で解析する事に成功した結果なのだろう。
 遂にそれはソーヤの展開した強大無比なる障壁を打ち壊すことに成功する。
 ガラスの様に崩壊した障壁を後に急ぎ駆け寄ってくる仲間達。
 何も言わずに俺達の横に並び立ち臨戦態勢に入る。
 リアが魔杖レヴァリアの力で術式を解放。
 込められた【精神感応】テレパスの力で高速での意思伝達が可能となる。
 ならば今、か。
 これは本来戦いが終わるまで言わなくてもいいかもしれない。
 けど己の我儘に対するケジメはしっかりつけなくてはならないだろう。
 ソーヤとの距離があるとはいえ、敵前という事もあり俺は目線を切らず顎を引き謝罪――声に出さず申し開きを行う。
 幸福から一転、ミズキも同様なのだろう。俯き加減で俺に並ぶ。

「すまない、お前達。実は――」
「ボクは怒ってるからね、おっさん!」
「シアに同じく」
「わんわん!」
「ええ、わたくしも同様ですわ」
「ふむ。遺憾ながら拙者も」

 怒気を孕んだ皆の念話に胸が詰まる。
 でもこれは俺が選んだ選択肢――俺が始めた物語だ。
 いくら詰られようと弁解し赦しを乞わなくてはならない。

「お前達が憤慨するのは分かる。
 ただどうしてもミズキを救いたかった――いや、彼女の気持ちに応じる自分の」
「あのね、おっさん!
 何だか勘違いしてない!?」
「……えっ?」
「そうそう」
「きゃう~ん(コクコク)」
「ホントにテンプレ系無自覚系主人公ロール。これだからガリウス様は」
「まったく世話が焼ける御仁でござるな」

 懸命に謝罪しミズキの想いを受け入れた経緯を説明しようとした俺だったが……
 友好的でありながら心底呆れた様な皆の心声に思わず挙動不審になる。
 えっ? もしかして俺……何かやらかしてるのか?
 当惑する俺に何故か一同、溜息を漏らす。
 しかし何かを吹っ切る様にその後明るい笑顔でミズキを取り囲んでいく。

「おめでとう、ミズキさん!
 ちゃんと言えて良かったね♪」
「ん。めでたい。その勇気に乾杯」
「わんわん♪」
「頑張りましたわね。わたくし感動しました」
「眼福でござった」

 どうにも見当が尽かない俺を余所に、好意的に擦り寄って来た皆はミズキを取り囲むや口々に祝福していくのだった。
 この対応は完全に予想外だったのだろう。
 思わず呆けたように口をパクパクさせるミズキ。
 根が純な為か再び茹蛸みたいに顔を上気し赤面してしまう。
 この仲間の反応が分からず俺は思わず素で尋ねる。

「怒っているんじゃなかったのか?」
「勿論、ボク達は怒ってるよ。
 でもそれはミズキさんの気持ちに応じたおっさんやミズキさんにじゃない。
 何でも一人で抱え込んで決断しようとしたおっさんに対してだよ!」
「えっ?」
「指摘。
 ガリウスは以前、家族になるなら何でも話し合える仲になるべきと告げた。
 しかしガリウスはいつも辛い決断は自身のみが背負っている。
 これはフェアじゃない。対等な立場ではない」
「病めるときも健やかなるときも人生にはありますでしょう?
 なのにガリウス様は自身の痛みを共有してはくれませんもの。
 それがわたくし達にとって一番悲しいですし――赦せませんわ」
「もっと己を曝け出すべきですな、ガリウス殿は」
「いや、確かにそれはすまない。全面的に謝らせてもらう。
 けど……皆はいいのか?」
「何が?」
「その……ミズキの想いに報いたこと」
「ああ、そんなこと。
 だってボク達、以前からとっくに気付いていたし」
「ん。同感」
「きゃう~ん」
「今更ですわね」
「ふむ」
「なっ!?」
「なん……だと。
 馬鹿な、私は完全に隠し通してきたはず――」
「いやいや。
 随分前からバレバレだったよ?」
「好意が露骨な行為で駄々洩れ」
「自覚しませんと、そこは」
「あからさまでござったからな~
 恋愛に疎い拙者でも気付くレベルでござるよ?」
「んなっ!?(馬鹿な!?)」

 心底残念そうな皆の総ツッコミにさっきとは違う意味で顔を赤らめるミズキ。

「それにさ、ミズキさんの想いを否定はできないよ。
 確かに婚約はボク達の方が先だったかもだけどさ――
 おっさんと知り合ったのはミズキさんが一番古いんだよ?」
「違う世界線――選択次第ではミズキが選ばれていた可能性が高い。
 その場合、横恋慕はあたし達の方になっていった」
「今の関係は無数の選択の結果ですもの。
 10年以上前からガリウス様を慕っていた貴女の想いは本物ですわ。
 だからわたくし達で話し合ってミズキ様がガリウス様にちゃんと想いを告げる事があれば心から祝福し共に並び立ちたいと思ってましたの」
「お前達……俺の知らないところでそこまで」
「海底ダンジョンでの鬼気迫るガリウス殿を皆知っておりますからな。
 窮地のミズキ殿達を救う為とはいえあれほどの熱意を向けれる以上、ミズキ殿もまんざらではないのでしょう?」
「それは、まあ――」
「だからボク達は全面的におっさんの選択に賛同、支持する!
 頼りになるおねーさんが増えて嬉しいもの」
「ん。姉御にて兄貴肌。両得ウインウイン」
「あら、わたくしでは駄目ですの?」
「フィーは何というか……腐り過ぎてて……」
「手遅れ。行き遅れ前に共に嫁げそうで良かった」
「ひ、酷いですわ!
 何かフォローしてくださいな、ミズキ様!」
「あ、ああ~
 新参者の私が言うのも何だが……皆、仲良くな?」
「「「「は~い(わん!)」」」」

 心温まる、まさにハートフルなやりとりに思わずほっこりする。
 ほっ……どうにかミズキの存在は無事受け入れられそうだな。

「ただね、おっさん?」
「ん?」
「【次は】ないからね?
 これ以上増えたら――朴念仁のおっさんでも分かるよね?」
「……肝に銘じます」

 皆から向けられる穏やかな微笑み。
 この日俺は、女性にとっては時として怒気よりも笑顔の方が怖いという事を魂の奥底まで思い知らされたのだった。






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