【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?

雨雲レーダー

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終わりの始まり

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 窓から差し込む夕陽が、床に淡い光を落としていた。
 
 その柔らかな光の中で、リナリアはベッドに横たわっていた。王宮からヴェルディ侯爵家に部屋をうつしたのだ。
 白いシーツに包まれ、呼吸は浅く、頬も少し紅潮している。

 クラリスは静かに椅子に腰かけ、そっとリナリアの手を握っていた。
 レオンも傍らに立ち、窓の外を見つめている。

「……終わったんですね」

 リナリアがかすかな声で呟いた。
 その視線は、どこか遠くを見つめて揺れていた。

「ええ、終わったわ」

 クラリスは穏やかに答え、リナリアの手をぎゅっと握りしめた。

「王家の罪は公にされた。あなたの戦いは、もう終わったのよ」

「……本当に、そう思っていいんでしょうか」

 リナリアは微笑んだが、その笑顔はどこか弱々しかった。
 けれど、その瞳には確かな安堵が宿っていた。

「よく頑張った」

 レオンが静かに言葉を重ねる。
 リナリアはレオンを見上げ、少しだけ瞳を細めた。

「レオン様もありがとうございます。お姉様とレオン様のおかげで、ここまで来られました」

 その声に、レオンはわずかに眉を寄せる。

「それは……クラリスと君の力だ」

「いいえ、違います」

 リナリアは首を振り、ほんの少しだけ手を伸ばす。
 その手が、レオンの指先に触れた。

「二人が私に優しい目を向けてくれたから。……私は、自分がここにいてもいいんだと、思えたんです」

 レオンはその手をしっかりと握り返した。
 その瞬間、リナリアの瞳がほんの少し潤んだ。

「もし……もう少し時間があったら」

 リナリアはゆっくりと言葉を紡ぐ。

「あなたと、もっといろんな話をしてみたかった」

 その呟きは、淡い風に乗って静かに響いた。

「どんな話がしたかった?」

 レオンは、静かに問い返した。

「好きな花のこと。……あなたの好きな色のこと。そんな……何でもないようなことを」

 リナリアはかすかに笑った。
 その笑顔は、これまで見せたどの表情よりも、少女らしかった。

「……まだ、聞かせてくれるだろう」

 レオンはそう答え、リナリアの手を離さなかった。

「ええ、もう少しだけ……」

 リナリアは瞼を閉じ、クラリスがそっとその髪を撫でた。

「お姉様」

 リナリアが小さくクラリスを呼ぶ。

「なあに?」

「私……幸せだったと思います」

 その言葉に、クラリスはほんの少し唇を噛み、笑顔を作った。

「……そう思えるなら、それで十分よ」

 夕陽が沈みかけ、部屋は淡い茜色に染まっていく。
 その静かな時間の中で、リナリアはゆっくりと深呼吸をしていた。
 その呼吸は、少しずつ穏やかになり、静けさに溶けていくようだった。

「レオン様」

「……ああ」

「最後まで、ありがとうございました」

 リナリアの声はかすれていた。
 レオンはその手をしっかりと握り返し、そっと頷いた。

「お姉様、大好きよ」

「私も……大好きよ」

 クラリスはその姿を見守りながら、リナリアの髪に触れ続けた。
 そのぬくもりが消えないように、そっと願いながら。
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