職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ

文字の大きさ
62 / 96
【第14章】帰還の選択

エピソード.62

しおりを挟む
 翌朝、魔王軍本部の大法廷は、昨日とは違う緊張感に包まれていた。

 高瀬たち四名が、再び鎖に繋がれて立っている。相沢の目は腫れ、佐藤と山田は憔悴しきった表情だ。高瀬だけが、どこか遠くを見つめていた。

 観客席には転移者たちが集まっている。田中が固唾を呑んで見守り、中村が拳を握りしめている。橋本たちも不安そうな顔で拓海を見つめていた。

 ゼノスが壇上に立つ。

「蒼井拓海、貴官が判決を下す」

 拓海が壇上に上がる。高瀬と目が合った。

 高瀬の目には、狂気は消えていた。ただ、深い疲労と諦めが浮かんでいる。

 拓海が口を開く。

「高瀬剛」

 その声は静かだったが、法廷全体に響いた。

「お前は壊れていた」

 高瀬の肩が僅かに震える。

「追い詰められて、正常な判断ができなくなっていた。木村の死が、お前の心を蝕んだ」

 拓海が一歩前に出る。

「だから、お前には二つの選択肢を与える」

 会場がざわめく。ゼノスが目を細め、幹部たちが身を乗り出す。

 拓海が続ける。

「一つ目。収監されて、ここで更生する道」

 高瀬が顔を上げる。

「二つ目……」

 拓海が深呼吸する。

「ダンジョンを攻略して、元の世界に帰る道だ」

 静寂。

 一瞬、誰もが言葉を失った。

 そして、爆発的なざわめきが広がる。

「帰る?」「そんなことが?」「ありえない」

 観客席の転移者たちが立ち上がる。橋本が目を見開き、田中が驚愕の表情を浮かべる。

 ゼノスが手を挙げて静寂を求める。

「蒼井、説明したまえ」

 拓海が頷く。

「高瀬は、ここにいても苦しむだけです。仲間を失った記憶、拓海を襲った罪悪感、全てが彼を追い詰め続ける」

 高瀬が拓海を見つめる。その目に、僅かな光が宿る。

「だから、元の世界に帰してください。そこで、やり直させてください」

 会場が再びざわめく。

 セレスティアが冷ややかに言う。

「甘いわね。敵に逃走の機会を与えるなど」

 拓海が答える。

「逃走ではありません。正規のダンジョン攻略による帰還です。魔王軍の規則に則った、正当な方法です」

 バルトスが腕を組む。

「最終ダンジョン『竜王の巣』の攻略か。確かに、それをクリアすれば帰還条件を満たす」

 拓海が頷く。

「はい。建前も完璧です。高瀬たちがダンジョンを攻略すれば、誰も文句は言えません」

 ゼノスが考え込む。しばらくの沈黙の後、彼が口を開いた。

「高瀬剛。お前はどうする?」

 高瀬が震える声で尋ねる。

「拓海……なぜ、そこまでしてくれる?」

 拓海が答える。

「お前を許したわけじゃない」

 高瀬の表情が曇る。

「でも……お前がこの世界で壊れていくのを、見たくない」

 高瀬の目から涙が溢れた。

「拓海……」

 拓海が背を向ける。

「答えは明日までに決めろ。収監か、帰還か。お前が選べ」

 ゼノスが告げる。

「では、判決は明日まで保留とする。高瀬剛、よく考えるがいい」

 高瀬たちが護衛に連れられて退廷する。

 拓海が壇上を降りると、美咲とリリアが待っていた。

 美咲が不安そうに尋ねる。

「本当に、いいの?」

 拓海が答える。

「分からない。でも、これしかないと思った」

 リリアが拓海の肩に手を置く。

「あなたらしい決断ね」

 拓海が窓の外を見る。

 遠くに見える空が、どこか寂しげだった。

-----

 その夜、拓海は一人でオフィスに残っていた。

 机の上には、『竜王の巣』の攻略資料が広げられている。詳細なマップ、モンスターの配置、罠の位置、推奨ルート。全て、拓海が過去数ヶ月かけて分析したものだ。

 美咲が温かいお茶を持って入ってくる。

「拓海くん、休まないと」

 拓海が資料から目を離さずに答える。

「もう少しだけ。高瀬たちが安全に攻略できるように、最終確認してる」

 美咲が隣に座る。

「高瀬くん、帰ることを選ぶかな」

 拓海が頷く。

「おそらく。あいつは、ここにいる理由を失った」

 美咲が尋ねる。

「拓海くんは……後悔してない?」

 拓海が手を止める。

「後悔?」

「その権限、私たちが使えたかもしれない。いつか、故郷に帰りたいとき」

 拓海が微笑む。

「大丈夫。俺は、ここに居場所を見つけたから」

 美咲が安心したように頷く。

「そっか」

 リリアが扉から顔を出す。

「お二人さん、そろそろ休んだらどう?明日も忙しいわよ」

 拓海が資料を閉じる。

「そうだな。じゃあ、今日はこれで」

 三人が部屋を出ようとしたとき、窓の外で星が一つ流れた。

 拓海がそれを見つめる。

 高瀬。お前は、どんな答えを出すんだろうな。

 そして、その答えが、俺たちの未来にどう影響するんだろう。

 答えは、まだ見えない。

 ただ、明日が来ることだけは確かだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

処理中です...